気象集誌. 第2輯
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70 巻, 3 号
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  • 高橋 劭, 遊馬 芳男
    1992 年 70 巻 3 号 p. 739-748
    発行日: 1992年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    3次元浅い雲モデルに詳細な雲物理過程を導入、降水機構の研究を行い、次のような新しい結果が得られた。
    1.Warm Rainの活発な海洋性雲でも、氷晶が成長すると降水は強く、長続きした。雨滴は霧形成過程を経た方が大きく成長した。
    2.雲と周囲の風との相互作用は、雲内での降水機構に著しく依存することが分かった。氷晶が成長すると降水粒子の成長は雲頂付近で起こるので、そこの高度での風の場が影響し、下層に強い収束帯を形成、風のシヤーがないときよりも強力な降雨が起こった。
  • 米谷 俊彦, 柏木 良明
    1992 年 70 巻 3 号 p. 749-756
    発行日: 1992年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    水稲群落内外において、顕熱、水蒸気、炭酸ガスのスカラー量の乱流輸送過程と乱流特性を研究するための観測を行った。二組の超音波風速温度計と赤外線炭酸ガス水蒸気変動計からなる群落生物環境反応測定装置を用いて、水田の群落内外におけるスカラー量や運動量の乱流フラックス、およびそれらに関する乱流統計量の測定を行った。各々の乱流フラックスの方向と大きさは、群落内部のソースやシンクの強さに依存して変化した。群落内外の炭酸ガスと水蒸気の乱流統計量の比較は、それらの量の大きさや号が日中と夜間では異なり、湛水状態にも依存することを示した。湛水開始直後水が土壌を覆いつつある期間に、水稲群落内外において、極めて高濃度のCO2の変動が観測された。これらの変動は湛水によって土壌から押し出されたCO2によって生成されたものである。
  • 加藤 内蔵進
    1992 年 70 巻 3 号 p. 757-768
    発行日: 1992年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    梅雨前線帯への水輸送システムである亜熱帯高気圧の特徴について、1988年7月前半の特別高層気象観測の行なわれた時に九州付近が高気圧に覆われた事例を取り上げて解析した。高気圧域の水蒸気場等の異なる2つの期間を比較する(期間(1):7月6~10日、期間(1):7月11~15日)。
    亜熱帯高気圧のリッジを越えて北へ向かう水蒸気輸送の大変弱かった期間(1)では、特に900mb面より上方で(境界層の上方)大変乾燥していた。高気圧域での広範囲にわたる強い下層南風による北向き水蒸気輸送の大きい期間(II)では、高気圧域における可降水量も期間(1)に比べかなり大きかった。この時、境界層の上方でも比湿や相対湿度が大きい点が注目される。
    期間(1)の高気圧域では下層雲量も大変小さかったのに対し、期間(II)では浅い積雲対流の強化に伴って下層雲量が20~60%へと増大した。また期間(II)では、下層自由大気中での比湿や相対湿度の増加と下層雲量の増加の対応は日変化スケールでもみられた(海上)。大規模場の沈降に伴う乾気の下降が期待されるにもかかわらず、この期間では風下へ向かって水平方向に比湿が増大していた。今後、水蒸気収支の定量解析で更に確かめる必要があるが、梅雨前線の南側の亜熱帯高気圧域における、特に境界層上方でもみられる多量の水蒸気の維持に対して、浅い対流の役割の重要性が示唆される。
  • 宮崎 保彦
    1992 年 70 巻 3 号 p. 769-774
    発行日: 1992年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    熱帯の海面水温、対流活動、日本の天候の問の関係を月平均の海面水温、外向き長波長放射(OLR)、日本の気温を用いて統計的に調査した。Miyazaki(1989)では、冬季には日本の気温とフィリピン付近の対流活動との間には負の相関関係があることが明らかにされた。この研究では、フィリピン付近の対流活動と西部熱帯太平洋(中部および東部赤道太平洋)の海面水温との間には正(負)の相関関係があることがわかった。これらの事柄は、冬季に熱帯の海面水温が熱帯の対流活動の変動を通して中高緯度の大気循環に影響を与える可能性を示している。
    個々の年の日本の気温と西部熱帯太平洋の海水温の対応関係を気象庁の観測船凌風丸の観測による1370E線の海水温データを用いて調べた。西部熱帯太平洋の海水温が低い年の大部分の例では日本の気温は高い。これに対して西部熱帯太平洋の海水温が高い場合は日本の気温が低い例が多いものの、高い例もある(1972、89年)。1972および1989年1月には500mb高度でEUパターン(ヨーロッパ+)とPNAパターン(太平洋+)が現れた。1989年1月にはインド洋で対流活動が強かった。
  • 斉藤 和雄
    1992 年 70 巻 3 号 p. 775-782
    発行日: 1992年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    運河の中の流れに直交する山脈を越える浅水流体についてのHoughtonandKasahara(1968)の理論的モデルを拡張し、山脈域で流路幅が変化する場合のハイドロリックジャンプを伴う流れの解を求めた。
    山脈の風下側に移動するジャンプを伴う非定常な流れのレジームでは、流路幅の減少と山脈の高さの増大はいずれもジャンプの移動速度を増大させる。この結果は、山を越す流れと谷間を吹き抜ける流れは同じ様に変形される事を示したArakawa(1969)の定常流についての指摘を裏付ける。一方、山脈の後面にジャンプが停滞する準定常な流れのレジームでは、ジャンプは流路幅が減少する場合にはより風下側に発生し、流路幅の減少と山脈の高さの増大はジャンプの停滞位置に関してはむしろ反対の効果を持つ場合がある事が分かった。この領域における流路幅の変化に対するジャンプの位置の振舞は、鞍部を伴う山脈を越える大気に生ずる内部ハイドロリックジャンプの振舞と類似が見られる。
    ジャンプの手前の流速は流路幅の減少とともに増大し、この結果は強いおろし風が鞍部を伴う山脈の鞍部風下側に発生する傾向がある事に対応している。
  • 邊田 有理江
    1992 年 70 巻 3 号 p. 783-788
    発行日: 1992年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    著者は以前に熱帯低気圧のまわりの風の場の解析を行ったが、それらは、2次元MASCONモデルを用いた対流圏下層(850hPa)と内挿風による対流圏上層(200hPa)の風の場をもとにしており、上下層は必ずしもconsistentではなかった。そこで、その計算法を拡張し、対流圏全層で連続の式を満たすような風の場を得るための3次元MASCONモデルを用いた風場計算法を開発した。 MASCONモデルでは、ゾンデと衛星より得られた観測風を連続の式を拘束条件に変分法により補正する。こうして得られた格子点風場は観測点のある所では最小二乗的に観測値に従い、観測点のない所でも連続の式という物理法則をみたしている。これによれば、熱帯域の全対流圏の3次元風場(μ,ν,ω)が簡単に計算される。この手法を用い、以前に2次元で解析した熱帯擾乱を再解析した。以前の解析で得られた擾乱の特徴は、3次元解析でも確かめられた。
  • 千葉 長, 柴田 清孝
    1992 年 70 巻 3 号 p. 789-794
    発行日: 1992年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    大気大循環モデルで再現された中層大気の温度と風の場に波数0の1日周期の変動がみられた。この変動は鉛直波長が約25kmで、南北の構造は波数0の1日周期の大気潮汐の基本モードとよく似ている。非断熱加熱の帯状平均のうち基本モードを同じ南北構造の成分を取り出してみると、地表付近で顕著な1日周期変動をしており、その大部分は地表面からの乱流熱輸送による加熱であった。
    このようなことからモデルに現れた中層大気の帯状平均場の1日周期の変動は、下部対流圏で熱的に誘起され、上方に伝搬し、密度効果により中層大気で顕在化した波数0の1日周期の大気潮汐の基本モードである。
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