水蒸気、雲水、雨水、雲氷、雪、あられの混合比、及び雲氷、雪の数濃度に加えて、あられの数濃度も予報するバルク法による雲物理過程のパラメタリゼーション法が示され、冬期日本海上で観測された、雲頂温度-20°Cの対流性降雪雲の3次元シミュレーションに適応された。
従来のFletcherの昇華核生成•凝結凍結核生成、 Biggの雲粒凍結、及びHallet-MossoPの着氷時における2次氷晶生成を考慮したシミュレーションでは、氷粒子の数密度の最大値は5×10
4m
-3であり、観測値の最大値(2×10
5m
-3)の1/4であった。レーダー反射強度は観測値より10dBZ大きかった。他の点は、おおむね、定性的にはよい一致がみられた。再現された雲の各発達段階における降水形成過程の特徴が明らかにされ、それは、播磨屋•佐藤(1989)や水野•その他(1990)の観測結果と整合的であった。
各種の氷晶生成頂を大きくした感度実験が、より現実的な雲を再現するために、又氷晶の数密度の増加が降雪形成におよぼす効果を調べるために行われた。氷晶の数を10
5m
-3-10
6m
-3程度の増加させると、雲の数密度がふえ、空中の雪の混合比と数密度が増え、レーダー反射強度が減る。さらに氷晶の数を増加させると(10
7m
-3)、降水が抑制され、雲粒とあられはなくなり、たくさんの雲が空中に蓄積される。これらの実験により、この雲に対して過剰種まきによる降水抑制の可能性があることが示された。
氷粒子の数密度を予報する方式の利点が議論された。シミュレーションでは、雲やあられの逆指数粒径分布関数のパラメーター、NosとNogは一定ではなく、降水強度の関数というよりはむしろ対流雲の発達段階の関数であることが示された。これはNosとNogをあらかじめ与える方式では得ることのできない結果である。より忠実な雪雲のシミュレーションには、氷晶生成頂に関するよりしっかりした知識が必要不可欠であり、これは今後の重要な研究課題である。
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