1962年から.1976年までの月平均オゾン全量の変動が,第一部(長谷部,1980)で述べられた方法によって得られた経度一緯度から成る格子点値を用いて解析された。これらの値から,全球平均値,半球平均値,帯状平均値,北半球中緯度における子午線平均値が誤差の見積りとともに計算された。数値的フィルターの適用により,非定常一年周期振動(NSA),準二年周期振動(QBO),そして長周期変動(LTV)が考察された。
結果は以下のように要約される:
(i)NSA;北半球中緯度における大きな振幅は東経40度と160度付近に位置し,これは時間平均されたオゾン全量分布が大きな勾配をもつ,極大の東側にあたる。北半球では,1970年から1971年頃に明確な位相の逆転が見い出された。これは一年周期振動の振幅が約10%減少したことに相当する。(ii)QBO;有意な振動が,北半球でより大きな振幅をもって検出された。北半球中緯度における振動中心は,東経140度と西経20度付近に見られ,これはオゾン全量の時間平均値における極大の位置とその西側にあたる。低緯度•高緯度間で周期が相違するために,QBOの位相の極向き伝播が常に見られるとは限らない。QBOの位相が極向き伝播を示す時には,中緯度におけるオゾン全量の極大は,熱帯の50ミリバールにおける準二年周期の西風極大よりも約π/2遅れて見られる。しかし,この関係はオゾンの位相が赤道向きに伝播するときには見られない。
(iii)LTV;四年周期振動が,高緯度,特に北半球のそこで顕著に存在することが見い出された。四年周期振動の中心位置はNSAのそれに似ているが,東経40度付近で特に顕著であることが特徴である。この振動の極大と極小は,両半球で偶数年の冬の終りまたは春の初めに見られ,南半球における位相は北半球に比べて3π/4だけ進んでいる。長期変動傾向に関する以前の研究(例,AngellとKorshover,1976)は,この解析において定性的に確認された。しかし,このような長期変動傾向が自己回帰過程によって本質的に説明されるか否かは,観測記録の存在期間が短いために依然として不確実である。
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