気象集誌. 第2輯
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58 巻, 2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • Iランダム誤差と系統的誤差とを含むデータに対する 最適内挿法の応用
    長谷部 文雄
    1980 年 58 巻 2 号 p. 95-103
    発行日: 1980年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    ドブソン分光計とM-83フィルター•オゾン計とによるオゾン全量の測定における観測誤差の統計的性質が,構造関数を用いて調べられた。構造関数の季節変化を説明するためには,ランダム誤差だけではなく,オゾン全量や他の観測点での誤差と相関をもつ系統的誤差を考慮することが必要である。
    最適内挿法が,系統的誤差の存在する場合について拡張された。この方法によって,オゾン全量の変動の格子点における値が,誤差の見積りとともに得られる。空間平均値は,格子点の値の平均によって計算される。空間平均値における誤差の見積りは,内挿網が重なるときには,互いに独立でない統計的標本の分散として計算される。これらの手続きによって,ドブソン分光計とM-83フィルター•オゾン計とによる観測値に対する客観的な取り扱いが,格子点と空間平均値とにおける誤差の見積りとともに可能になる。このようにして得られた内挿誤差は,オゾン全量の変動を全球的に議論するのに十分な位小さいことがわかった。
  • IIオゾン全量の非定常一年周期振動, 準二年周期振動と長周期変動
    長谷部 文雄
    1980 年 58 巻 2 号 p. 104-117
    発行日: 1980年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    1962年から.1976年までの月平均オゾン全量の変動が,第一部(長谷部,1980)で述べられた方法によって得られた経度一緯度から成る格子点値を用いて解析された。これらの値から,全球平均値,半球平均値,帯状平均値,北半球中緯度における子午線平均値が誤差の見積りとともに計算された。数値的フィルターの適用により,非定常一年周期振動(NSA),準二年周期振動(QBO),そして長周期変動(LTV)が考察された。
    結果は以下のように要約される:
    (i)NSA;北半球中緯度における大きな振幅は東経40度と160度付近に位置し,これは時間平均されたオゾン全量分布が大きな勾配をもつ,極大の東側にあたる。北半球では,1970年から1971年頃に明確な位相の逆転が見い出された。これは一年周期振動の振幅が約10%減少したことに相当する。(ii)QBO;有意な振動が,北半球でより大きな振幅をもって検出された。北半球中緯度における振動中心は,東経140度と西経20度付近に見られ,これはオゾン全量の時間平均値における極大の位置とその西側にあたる。低緯度•高緯度間で周期が相違するために,QBOの位相の極向き伝播が常に見られるとは限らない。QBOの位相が極向き伝播を示す時には,中緯度におけるオゾン全量の極大は,熱帯の50ミリバールにおける準二年周期の西風極大よりも約π/2遅れて見られる。しかし,この関係はオゾンの位相が赤道向きに伝播するときには見られない。
    (iii)LTV;四年周期振動が,高緯度,特に北半球のそこで顕著に存在することが見い出された。四年周期振動の中心位置はNSAのそれに似ているが,東経40度付近で特に顕著であることが特徴である。この振動の極大と極小は,両半球で偶数年の冬の終りまたは春の初めに見られ,南半球における位相は北半球に比べて3π/4だけ進んでいる。長期変動傾向に関する以前の研究(例,AngellとKorshover,1976)は,この解析において定性的に確認された。しかし,このような長期変動傾向が自己回帰過程によって本質的に説明されるか否かは,観測記録の存在期間が短いために依然として不確実である。
  • E. H. Kitchen, M. E. McIntyre
    1980 年 58 巻 2 号 p. 118-126
    発行日: 1980年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    固有周波数ωの慣性重力波がコリオリ因fの回転成層流体内でシアー流中を伝わるとき,ω=f面は吸収面(Jones,1967;Miyahara,1976)となるのか,反射面(赤道波の場合のように)となるのかを,リチャードソン数が大きい場合について,ray tracing法を用いて調べた。その結果, Jones(1967)が論じたf=一定の場合をのぞいて,rayはω=f面で反射(もっと適切には屈折)されることがわかった。しかし,βが極端に小さいようなβ-平面では,波束がω=f面から離れるのにきわめて長い時間を要する。それで,βが十分小さいときには,実際上(原理的にではなくとも)吸収が起るといえる,なぜなら何らかの散逸はいつも作用するから。たとえば,中緯度帯の山岳波のパラメタを用いて調べると,その場合適当に無次元化されたβはきわめて小さく,ω=f面近くで波束をつぶすのに,分子粘性だけで十分すぎるほどである。
    かくして,有限の散逸と小さなβを仮定したMiyahara(1976)の数値計算に見られる吸収は,必ずしも驚くにあたらないし,またMatsuno(1966),Lindzen(1970)その他のたちによる赤道で波がtrapされるという結論と矛盾するわけではない。というのは,赤道波の場合βはずっと大きいから。
  • 板部 敏和, 藤原 玄夫, 広野 求和, 五十嵐 隆
    1980 年 58 巻 2 号 p. 127-136
    発行日: 1980年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    ライダーによって観測されたフェゴ噴火後の成層圏エアロゾルの散乱断面積の減衷率は,よく知られたGudiksenらの二次元モデルによる計算値よりも小さかった。この差はエアロゾルの凝縮成長により説明可能である。火山噴出物の大規模輸送を議論するために,非圧縮で物の出入りのない閉じた空気塊モデルを取り扱い,輸送と空気塊内でのエアロゾルの化学物理過程を分離した。
    噴火による空気塊内のエアロゾル分布関数の変化を調べるためのエアロゾルモデルが使われている。このモデルは,イオウの循環を表わす,三つの方程式からなり,第一式はSO2からH2SO4への変換を,第二式はH2SO4の個数変化を表わす。また,第三式はエアロゾルの凝結と凝縮による粒径分布の変化を示す。粒径0.01μmから0.4μmのエアロゾルについて,Haze Hとlog normal分布を初期条件にして,この方程式を数値的に解いた。 Haze Hの場合は,SO2の個数とH2SO4への変換率を適当に選んだとき観測による減衰率を説明できるが,log normalの場合はこのモデルでは説明できない。
  • 権田 武彦, 山崎 利夫
    1980 年 58 巻 2 号 p. 137-142
    発行日: 1980年
    公開日: 2014/03/14
    ジャーナル フリー
    レプリカ液中での氷晶の溶解過程の研究が行われた。氷晶の溶解形は,レプリカ液の濃度に依存して変化する。例えば,低濃度のレプリカ液中では,6角板は,‹1120›方向によりとがった角を持つ12角板を通って溶解する。しかし,高濃度のレプリカ液中では,6角板は,‹1010›方向によりとがった角を持つ12角板を通り,その後,ほぼ正角板になって溶解する。これは,低濃度より高濃度のレプリカ液中の方が,結晶の異方性が現われ易いからである。更に溶解形は,溶解しつつある氷晶の大きさにも依存している。
  • 笹野 泰弘, 清水 浩, 松井 一郎, 竹内 延夫, 奥田 典夫, 杉本 伸夫
    1980 年 58 巻 2 号 p. 143-148
    発行日: 1980年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    コンピューター制御されたディジタルデータ収録機能を持つミー散乱レーザーレーダーを用いて,典型的な夏の都市域における大気境界層の日変化を観測した。観測された粒子状物質濃度のTHIパターン表示は,時間変化を明瞭に示し,これから大気境界層構造が推定できる。今回の観測結果は,Russel et al. (1974)の提案した大気境界層日変化における3つのregimeの他に,混合層が最大高度に達した後の午後のふるまいを,第4のregimeとする必要性を示唆している。
  • 藤部 文昭, 浅井 冨雄
    1980 年 58 巻 2 号 p. 149-152
    発行日: 1980年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    無風に近い状態の下で,東京の都心に収束する低気圧性の風系が存在する。平均的な風速は,約0.2ms-1である。都市内外の地上気温差が増すにつれて風速が大きくなる傾向が認められる。一方,晴れた日の日中には地上気温差が小さいにもかかわらず風速が大きいことが見出され,大気の成層状態や海陸風などの局地風もこの風系に影響することが推察される。
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