気象集誌. 第2輯
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62 巻, 1 号
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  • 山中 大学, 田中 浩
    1984 年 62 巻 1 号 p. 1-17
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    中層大気中に存在する薄い乱流層の成因の一つという観点から, 対流圏起源の慣性内部重力波の臨界高度砕波を理論的に吟味してみた。Coriolis力による慣性効果は長周期または長波長の内部重力波については無視できないものである。基本場の鉛直シアーと Coriolis因子を一定とした慣用の非粘性線形方程式系から慣性内部重力波を表わす厳密解が導かれ, さらに Olver(1974)が拡張した Liouville-Green 法を用いて臨界高度近傍での正しい局所分散関係式を得た。この関係式から慣性内部重力波の重要な特徴として, Jones臨界高度の「弁効果」, および, 上下の臨界高度の内側の一対の「転移高度」の存在, の二つが見出された。類似の特徴は, 無限小シアーと水平方向の異方性とを仮定する系について過去に指摘されているが (Grimshaw, 1975, 1980), それらの仮定は弁効果と転移高度の存否に関する限り本質的なものではないと言元る。弁効果と転移高度との複合作用の結果として慣性内部重力波は Jones臨界高度近傍で波面の走向に依存した吸収また反射を受ける。すなわち吸収率および吸収に伴う砕波乱流層の厚さは波面の走向が東西に向うほど増大し, 一方波面が南北に沿うような波は実質的に反射される。基本場の Richardson 数が大きいと転移高度はそれぞれ臨界高度に近接するため, 両臨界高度の内側の乱流層は外側のそれよりもずっと薄くなる。以上のすべての特性は Jones 臨界高度近傍のある領域内でのみ起こり, その外部ではよく知られた非慣性内部重力波と本質的に同じ特性が得られる。この領域はCoriolis 因数に比例した厚さを持ち, 非慣性内部重力波では完全に消失してしまう。
    現実の成層圏乱流層との比較さらに中間圏以高まで達する重力波の定量的情報としての活用を考え, 慣性内部重力波とその砕波乱流層の厚さとの関係を表わす式を具体的に導いた。メソスケール領域の水平波長を仮定する場合, 慣性内部重力波のつくる乱流層は非慣性波のそれに比べて薄くなる。
  • 松田 佳久
    1984 年 62 巻 1 号 p. 18-25
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    水平の剛体壁が存在しない場合の傾圧流の安定性を検討してみた。つまり, 傾圧層の上端, 下端に剛体壁を置く代わりに, 両側に無限に広がる順圧層を考え(図1), 順圧層における擾乱が exp 型の場合は外側に減衰する解を, 波型の場合は外側に輻射する解(輻射条件)を選択することにより, 安定性を計算した。但し, 地衡風近似は使わず, 計算は広い範囲のロスビー数について行なったが, リチャードソン数に関しては, 0.5(弱い安定成層)と50(強い安定成層)の場合に限った。比較の為に, 傾圧層の両端に剛体壁を置いた場合の安定性も同時に計算した。
    計算の結果に依ると, 境界条件の変更に依って, 得られた擾乱の成長率や位相速度の値は或る程度変わったが, 擾乱の定性的性質, 特に, そのロスビー数依存性の定性的傾向は大きくは変わらなかった。(図3~6参照)
    ロスビー数を増して行った時, 二つの臨界点(つまりU(Z)-cγ =f/k又は-f/kとなる高度)のうち一つは当然傾圧層に現われるが, もう一つの臨界点も現われるか否か検討してみた。その結果, 上に述べたいずれの境界条件の場合でも, steering level (U(Z)-cγ =0となる高度)がロスビー数が増大しても常に傾圧層の端近くに存在し, 二つの臨界点が同時に傾圧層に現われることはないことが判った。
  • 高谷 美正
    1984 年 62 巻 1 号 p. 26-35
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    順圧シアー流の擾乱に対する線形初期値問題を記述するグリーン関数を, 東西方向にはフーリエ変換し, 時間に関してラプラス変換したものの, 複素周波数平面における解析的性質と, 漸近的振舞を求めた。特異点は, 従来から知られている, 離散固有値に対応する極, 方程式の特異点に起因する極の他に, 一般流の, 傾域内での最大値と最小値によって定まる二つの分岐点の間に引かれる有限な長さの切断が存在することが明らかにされる。これは, いわゆる連続モードに対応する特異性である。更に, このグリーン関数は, 複素周波数平面上, どの方向へでも, 複素周波数の絶対値に逆比例して, ゼロに漸近することが示される。
  • 神沢 博
    1984 年 62 巻 1 号 p. 36-51
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    変形されたオイラー平均流方程式-それはエリアッセン•パルムフラックスの発散, すなわち, 中高緯度の大規模運動の場合は準地衡風うず位輸送, を陽に含む-に基づいて変形されたエネルギー変換式を導いた。波と平均流相互作用の更なる理解のために。変形された平均エネルギー式はその良く知られた変形されたオイラー平均流式からすぐに導ける。その変形平均流エネルギー式と辻褄の合うような変形されたじょう乱エネルギー式を得るために, じょう乱式を変形した。その結果, 変形されたエネルギー式を平均流とじょう乱の両方に対して構成することができた。変形エネルギー論においては, 平均場とじょう乱の有効位置エネルギーの間にはエネルギーのやりとりがない。
    得られたエネルギー式を3ツの理論モデルに適用した。すなわち, イーディの傾圧不安定, 臨界レヴェルに入射する上方伝播定常プラネタリー波, 上方伝播するプラネタリー波束の問題に。イーディ問題においては, 傾圧不安定にとって本質的である上下の壁の存在の重要性を変形エネルギー論は陽に表現する。臨界レヴェル, 波束の両方の問題に対しては, 通常のエネルギー論より変形エネルギー論の方がエネルギーのやりとりの様子がより簡単になる。エネルギー収支に正味の影響を結局はもたらさない項を変形エネルギー式はそもそも含んでいないからである。
    エネルギー論それ自身の制約はあるが, この新しい方式は, 波と平均流の相互作用の起こっている状況の理解に役立つ。
  • 高橋 正明
    1984 年 62 巻 1 号 p. 52-68
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    2次元モデルを使って,赤道中層大気における東西風の半年周期振動について考察した。モデルにくみ入れた成層圏界面における半年振動のメカニズムは(i)夏半球の東風の子午面流による非線型移流,および(ii)赤道ケルビン波の西風運動量の鉛直輸送である。
    次の2つのモデルを考察した。
    (1)中間圏にレーリー摩擦を導入したモデル。
    (2)中間圏界面における半年振動をシミュレートするために,レーリー摩擦のかわりに重力波の加速を導入したモデル。
    2つのモデルとも,赤道成層圏界面に半年振動を得たけれども,(1)のモデルでは春•秋分の西風は上方伝播である。(2)のモデルでは,成層圏界面だけでなく中間圏界面にも7m/s程度の半年振動を得た。
    しかしながら,赤道30~40kmの高さには一定の西風が吹いており,又緯度1°での半年振動の振幅は小さい。より現実的な半年振動をシミュレートするためにはプラネタリー波の東風加速が必要であることを,この結果は示唆している。
  • 村上 多喜雄, 岩嶋 樹也, 中沢 哲夫
    1984 年 62 巻 1 号 p. 69-87
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    南半球モンスーン域(3.75°-11.25°S,90°E-180°)で平均した850mb偏西流の変化から1978-79年のモソスーン開始時期を決定した。下層のハドレー循環の強化に伴って,850mbの偏西流は12月22-30日の期間に急速に強まった。この期間の前後における大規模な熱,水蒸気,および渦度の収支についてしらべた。モンスーン開始とともにオーストラリア北東部と西部南太平洋(~18°S,170°E)附近では急速な加熱と水蒸気収束が起こった。これら二つの地域はもっとも対流現象の盛んな所である。
    モンスーンの開始時期はモソスーン域内の各地域でかなりの違いがある。また開始時期の定義に用いた気象要素により大きな違いがみられる。例えばオーストラリア北東部において,447mbの大規模加熱は12月23日に始まったが,592mbでの水蒸気収束は12月30日に起こった。
  • 第2部 北半球の夏にみられる季節変化と季節内変動
    村上 勝人
    1984 年 62 巻 1 号 p. 88-108
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    深い積雲群の振舞にみられる季節変化および季節内変動を,当論文の第1部において提唱された活動度示数を用いて調べた。1979年5月から8月の各月において作成された月平均の活動度分布には,従来雲量分布や長波放射量から推測されているにすぎなかった積雲活動の季節的な特徴がよくあらわれている。分布の緯度方向への変動においては,東南アジア地域における積雲活動の活発な領域の北進,梅雨をもたらす積雲活動域の形成,および西太平洋上における熱帯収束帯にともなう帯状の積雲活動域の北への変位などが明瞭にあらわれている。
    この積雲活動度の緯度一時間変化図においては周期30日から40日程度の大きな季節内変動の存在が明らかになった。インドシナ半島およびベンガル湾方面においてはこの変動は南インド洋赤道付近からくり返し進行してくる様相を示す。時間変動に関するバンドパス•フィルターを用いてさらに詳細な解析を行なったところ,変動のなかにはチベット高原方面から南進してくる成分もあることが分かった。さらに,同様の状況が西太平洋上においても生じていることも明らかになった。850mb面における風の変動に関するコンポジット解析の結果によれば,この30-40日周期変動はインドにおけるモンスーンの活発/休止のサイクルに伴なって変動している。インド上空でモンスーン西風が最も強化された時,活発な積雲活動域はインド北東部からフィリッピン諸島をつらねる領域にあらわれる。これと対照的に,インド洋赤道付近やチベット高原では積雲活動は抑制されている。さらに当解析の結果によれば,この時期には西太平洋上の熱帯収束帯に伴なう積雲活動も活発化していることが明らかになった。
  • 第2部 バイモーダル粒径分布の形成
    椎野 純一
    1984 年 62 巻 1 号 p. 109-134
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    積雲の降水形成過程を理解するために,第1部に示した力学過程と微物理学的過程との非線形相互作用を考慮した,暖かい海洋性積雲の軸対称モデルを用いて,雨滴の成長に関する数値シミュレーションを行った.第2部では,特に降水発生の重要な先駆現象の一つと考えられる,雲粒一小雨滴間のバイモーダル粒径分布形成のための微物理学的パラメータの臨界条件が調べられる.その目的に沿って,小規模積雲と背の高い発達した積雲について,雨滴の成長過程が詳しく調べられた.
    その結果,バイモーダル粒径分布形成の一般的な臨界条件の存在することが強く示唆された.その条件とは,半径60μ程度の水滴がある程度の濃度で形成されることであるが,それは水滴の平均半径と分散によって一義的に表わされる.
    力学的に活発なよく発達した積雲では,水蒸気の凝結率が高いために,雲粒は雲の"発達期"に既にこの臨界条件を満たす.その結果水滴は顕著な併合効果によって急激に成長し,降水物理過程と力学過程との非線形相互作用によって作られる強い下降流に伴って,突然,大粒の雨滴からなる強い降水をもたらす.しかしこの強い降水は継続時間が短く,かつ局地性を示す.一方,力学的に不活発な小規模積雲では,水蒸気の凝結率が小さいため雲粒の成長速度は遅く,臨界値到達直後のバイモーダル粒径分布は,"最盛期"の雲頂付近にようやく現われる.しかし雲の衰弱過程での水滴の平均半径が小さい(数濃度は逆に大きい)ために,雨滴のかなりの部分が蒸発する.その結果,地上の降水強度は弱く,雨滴の粒も小さく,また雲の降水能率(総降水量/総凝結水量)も発達した積雲に比べはるかに小さい.このように両者の降水形成過程には顕著な相異が認められる.
    積雲モデルについては慎重な考察が加えられている.
  • 山下 晃, 大野 隆行
    1984 年 62 巻 1 号 p. 135-139
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    過冷却雲が長時間安定に存在する自然循環型クラウドチェンバーを試作した。このクラウドチェンバー中で気相成長する氷の結晶は,大型の結晶であるが,その成長速度は小さい。また,結晶習性(ハビット)の温度依存性はすでに判明している結果と同じだが,結晶表面の模様などは天然の雪結晶のものより単純である。
  • 山下 晃, 浅野 浅春
    1984 年 62 巻 1 号 p. 140-145
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    自然循環型クラウドチェンバー内の-4~-1.5°Cの過冷却雲の中で気相成長する氷の結晶について調べた。-4~-1.5°Cの範囲で成長する結晶は全て多層構造をもった板状のものであるが,-4.0~-2.5°Cでは扇形,-3.0~-2.0°Cではシダ状,-2.0~-1.5°Cではスキャラップ状(又はうろこ状)を呈する。また,これらのa軸方向への成長の速さは融点に近づくにつれて大きくなる。多層構造がもっとも顕著なスキャラップ状のものではプリズム面が観察されず,多数に分岐した先端の成長の向きが必ずしもa軸に平行ではないという特徴がある。したがって,-2.0°C以上で成長する結晶ではプリズム面の層成長が起こらないものと思われる。
  • 太田 幸雄, 田中 正之
    1984 年 62 巻 1 号 p. 146-157
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    霧及び層雲の生成過程の数値実験において,放射過程を力学モデルに組み込むために,P3近似法を用いた放射による温度変化率の計算法を開発した。可視領域においては太陽放射のオゾンによる吸収,大気分子による散乱及び水滴による散乱と吸収を考慮した。また近赤外領域においては,水蒸気の近赤外吸収帯による太陽放射の吸収及び水滴による太陽放射の散乱と吸収を考慮した。赤外領域においては,水滴による赤外放射の散乱,吸収,射出の他に,水蒸気の6.3μm帯と回転帯,二酸化炭素の15μm帯及び水蒸気二量体の連続吸収帯による赤外放射の吸収及び射出も考慮した。
    この P3近似法によって得られた放射束の発散量と,厳密解法であるディスクリートオーディネート法によって得られたものとの比較を行ったところ,この近似解法は,霧及び層雲の生成消滅過程における放射効果を見積るには充分な精度を持っていることが解った。
  • 広田 道夫, 村松 久史, 牧野 行雄, 佐々木 徹, 外山 芳男
    1984 年 62 巻 1 号 p. 158-164
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    日本上空における対流圏および成層圏空気試料の採集を1978年から開始し,CF2Cl2, CFCl3 および N2Oの分析を GC-ECD 法によって行った。
    1978年10月から翌年3月にかけて,対流圏の平均体積混合比は CF2Cl2が 282PPt, CFCl3 が162ppt, N2Oが310ppbであった。また CF2Cl2 と CFCI3 の 1979年から1983年までの増加率は共に約20%であった。
    下部成層圏における CF2Cl2, CFCl3 および N2Oの体積混合比は高度が増すとともに減少しており,その傾向は光化学理論から計算された高度分布にほぼ一致した。
  • 武田 喬男, 池山 雅美
    1984 年 62 巻 1 号 p. 165-171
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
  • 青木 孝, 吉野 正敏
    1984 年 62 巻 1 号 p. 172-176
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    台風の年間発生数と北太平洋の月平均海面水温との相関関係を調べた。台風の発生を数えた年に近い月の海面水温だからといって相関関係は必ずしも高くなることはなく,最も大きな相関は,2年前の10月の海面水温との間にみられた。特に赤道太平洋東部の海面水温との正の相関が顕著であった。また,北太平洋北西部の海面水温とは負の相関関係にあるが,赤道太平洋東部の正相関に比べると,この負の相関は,相関域が狭く,相関係数の絶対値も小さかった。
  • 山中 大学, 田中 浩
    1984 年 62 巻 1 号 p. 177-182
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
  • 森 信成
    1984 年 62 巻 1 号 p. 183-189
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    一般に気象要素間には有意な内部相関の存在する例が多い。このような気象要素を予測因子とする重回帰式を導く方法について検討した。方法は,I:EOF不使用,II:気象要素にEOFの操作を施した後に予測対象と有意な相関をもつEOF成分のみを予測因子とする,III:用いる気象要素すべてを正規化した後にIIと同じ手順をとる,の3つである。また,精度の基準として自由度調整ずみの重相関係数を用い,重回帰式の項数をきめた。予測対象は南関東の日降水量,予測因子は気象庁数値モデル予想値から有意な要素を選び,降水の192時間予想について3つの方法の結果を比較した。検証の方法にはスキル•スコアーを用い,方法IIIがもっともよい結果を得た。
  • 権田 武彦, 山崎 利夫
    1984 年 62 巻 1 号 p. 190-192
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
  • 佐藤 隆夫
    1984 年 62 巻 1 号 p. 193-198
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    傾斜面の垂線の方向の赤緯,時角,場所の緯度,太陽の赤緯の如何なる組合せについても快晴一日直達日射量及び可照時間を与える式は四つの基本式のどれかに限られる。いずれの式に属するかを示す組合せ方法及び表を開発した。また,北緯35度について,傾斜面の種々の場合(高度と方位角で示す)について可照時間の年変化を図示した。
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