AMTEX'74の強い寒気吹出期間(2月23日~27日)の寒気の構造と熱収支状況を詳細に解析する。
寒気は1~2kmの厚さの層を形成して南下し,その上部には著しい逆転層がある。subinversionlayerの内部では,海面に接する最下層(0~250m)を除いては,相当温位θe,風速Vともに一様な垂直分布を示し,この層が“mixedlayer”であることを示している。最下層の大きなθe,により混合層は対流不安定層でもある。
混合層の厚さ,つまり逆転層下面の高さは,時間的•空間的な変動を示す。23~24日は,混合層の厚さの増加期間つまり,“developingstage”であり,25~27日は,準定常的な状況がみられる“quasi-stationarystage”である。quasi-stationarystageについて云えば,逆転面の高さは,AMTEX海域の北西域で低く,東域で高いが,局地的な起伏も解析される。
quasi-stationarystageでは,逆転面上空は乾燥しているが,developingstageでは逆転面上空も浸潤であるが,逆転面上空の水蒸気場は主として上層の水平移流によって支配されており,気団変質に関連していない。
気団変質はsubinversionIayerでおきており,飽和層の厚さ,降水量は南にむかって増大する。
熱収支解析によって,混合層全層にわたり,Y•∇T,V•∇q,δT/δt,およびδq/δtが大きく,かつ逆転層下面で不連続的に急減することが示された。このような分布は,垂直方向の高い分解能を持つデーターと,適切な観測網の稠密さによってのみ得られるものである。特にquasi-stationarystageについて詳しい解析を行った。
developingstageでは,下層(mixedlayerを含む)の安定度が減少し,中層(inversionlayerを含む)では,安定度が増大する。quasi-stationarystageでは両層の安定度はほぼ一定に保たれる。この安定度の変化を,differentialadvection,垂直運動による安定度の変化,differentialdiabaticheatingのバランスの見地から議論する。
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