気象集誌. 第2輯
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63 巻, 1 号
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  • 第I部:擾乱の全球的特徴
    新田 勍, 中込 縁, 鈴木 靖, 長谷川 直之, 門倉 昭
    1985 年 63 巻 1 号 p. 1-19
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    FGGEレベル-IIIbの風データを用いて,北半球夏の熱帯下部対流圏擾乱の全球的な特徴を解析した。±15°内の赤道領域では,短周期擾乱(10日周期以下)の振幅は,北半球側の方が南半球側より大きい。北半球側では,3~4日周期と約6日周期の変動が卓越し,また,東西波数では10~12のものが顕著に現われる。一方,南半球赤道領域では,顕著な卓越周期は存在しない。
    熱帯各地のスペクトル分布の特徴は,各地域ごとに大きく異なっており,熱帯下部対流圏擾乱は各地域ごとに特有な性質を持っていることがわかる。
    赤道~25°Nの中部アフリカから中部大西洋にかけて,アフリカ波動に対応する3~4周期変動が卓越する。アフリカ波動の振幅は,アフリカ西海岸付近で最大となり,その後,東大西洋を伝わりながら減少して行く。一方,西大西洋,カリブ海では,約6日周期の変動が卓越する。
    熱帯太平洋域では,西部太平洋から東シナ海にかけて周期6日~10日の大きな振幅が存在する。この領域は台風の経路に対応しており,この大きな変動は台風と密接に関係しているものと思われる。また,赤道領域から北上するにつれて,卓越周期が6日から10日へと変化していることが興味深い。
    中央アメリカ沖の熱帯東部太平洋には,約6日周期の変動が卓越し,これはこの地域のハリケーン活動と関係しているものと思われる。中部太平洋は全般に擾乱の振幅は小さいが,5°N~10°Nの熱帯収束帯には,3~4日周期の弱いスペクトル•ピークが存在する。
    インドシナ半島からインド北部にかけて,6~7日周期の変動が存在し,ベンガル湾北部で振幅が最大となっている。この擾乱はモンスーン•トラフ上を伝わり,ベンガル湾北部で発達するモンスーン擾乱と思われる。
    インド洋から東南アジア,西部太平洋にかけて,長周期変動(周期13.3日以上)が卓越する。この長周期変動は,最近注目されているアジアモンスーン活動の30~50日周期変動によるものであろう。周期は約13.3日と短いが,同様な長周期変動が,北アメリカ大陸一大西洋モンスーン域にも存在する。
    以上の風の変動と対流活動の変動との対応を調べるために,地球からの長波放射量(OLR)のスペクトル解析を行った。OLRの変動の大きい領域は,風の変動の大きい領域とよく対応しており,対流活動は熱帯下部対流圏擾乱と強く関係し合っていることを示している。
  • 加藤 内蔵進
    1985 年 63 巻 1 号 p. 20-36
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    中国大陸における初夏の梅雨前線帯の変動を1979年の観測資料を用いて調べた。梅雨前線帯は大きな比湿傾度を伴う準定常的な雲帯として特徴づけられる。中国大陸上では,梅雨前線帯がまだ華南に停滞している5月後半に,華北方面での急激な昇温があり前線帯での水平温度傾度が消失してしまう。
    梅雨前線帯での温度傾度の消失前(5月上中旬)と消失後(6月中下句)について,その構造や降水特性を比較した。5月には水平温度傾度の集中した前線面が高さとともに北に傾き,成層も安定である。前線帯での雨量は決して少なくないが,散在する背の高い積雲の他に層状の雲も広く前線帯を覆う。一方,6月には成層が不安定で,梅雨前線帯は背の高い対流雲のみで構成される。前線帯での温度傾度の消失は,前線帯での下層の平均気温の上昇の形で2つの期間における成層の安定度の違いに大きな影響を与えている。
    華北では,5月後半に地面温度が年間の最高値近くになる。地面から大気への顕熱フラックスも大きくdryconvection による2000~3000mの厚さを持つ混合層が発達する。地面からの顕熱補給による非断熱加熱は移動性擾乱による華北への寒気移流を打消し,華北の高温状態の維持に大きく寄与する。また,5月後半の急変期には,総観規模低気圧が華北以北を通過後数日間で気温が急上昇するが,これに対しても地面からの顕熱による寄与が大きいようである。このように,華北での地面からの顕熱による下層大気の加熱は,中国大陸上の梅雨前線帯の構造の変化に対して重要な役割を果たしているものと結論され,7月でも水平温度傾度の小さくない日本列島付近の梅雨前線帯の構造との違いを生じさせることになる。
  • 松本 誠一, 岡村 博文
    1985 年 63 巻 1 号 p. 37-51
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    台風8124が房総沖を通過した頃,その北西象限に中規模擾乱に伴う気圧の dip 現象が現れた。その最低気圧は,台風本体の中心示度(965mb)にほぼ近い967.4mbを示すものであった。擾乱は台風よりやや速く進み,5時間以上にわたって確認されている。地上観測と気象研究所のドップラーレーダー観測などにより,この擾乱について調べた結果,風の変化や雨雲の分布等が,よく知られている内部重力波の様相を示していた。また,この擾乱は台風のレインバンドの微細構造と密接な関係があり, dip 現象は東西波長90kmで南北に連なる積雲活動列と結びついている。
  • 藤部 文昭
    1985 年 63 巻 1 号 p. 52-59
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    大気境界層の風の日変化を引き起こす主な現象としては,海陸風(山谷風を含む)と乱流の日変化とが考えられる。両者の寄与を場の気圧傾度の大きさ毎に見積もるために,関東地方の風の日変化を統計的に調べ,以下の結果を得た。
    気圧傾度の大きさが地衡風速に換算して 5ms-1 未満である場合には,風の日変化は主に海陸風によってもたらされる。気圧傾度が増すにつれて海陸風は衰え,海上では風の日変化の振幅が小さくなり,陸上では海陸風に代わって乱流の日変化が風の日変化に寄与するようになる。気圧傾度が 10ms-1 以上の場合には,乱流の日変化が陸上の風の日変化の主因になる。
  • 蒲生 稔
    1985 年 63 巻 1 号 p. 60-74
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    館野での高層観測による温度鉛直分布,日最大および日最低気温から,地表面顕熱輸送量,最大混合層高度などの季節変化を求めた。混合層の熱収支,混合層内の乱流分布の季節変化についても解析した。上部安定層の温位勾配は冬季には0.003°C/m,夏季には0.005°C/m,春秋の移動性高気圧下では0.004°C/mである。日出時から日最高気温出現時までの積算地表面顕熱輸送量は早春に170lyと大きく,冬季は50lyである。日最大混合層高度は3月に1500mと最高で,12月た700mで最低どなる。早春に地表面顕熱輸送量が大ぎいのは,低温,乾燥,少ない蒸散活動などによるものと考えられる。ボーエン比は7月に0.4と最低となり,5月と11月は1である。以上の諸量は観測結果をよく説明しており,混合層構造を求める上記の簡単な方法が有効であることが確かめられた。
  • 那須 田宏
    1985 年 63 巻 1 号 p. 75-87
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    大規模対流性雲システムに伴うアンビルにおける高高度半透明雲の赤外灰色体射出率及びその可視アルベドとの関係がGMS-1の放射観測により評価された。一般に絹雲等の半透明雲の灰色体射出率はその評価に必要な雲頂温度を衛星観測では直接評価できないために人工衛星の放射観測だけからは評価できない。しかしながら,アンビルの温度が近似的にシステムのコアの温度と等しいという条件の下では,半透明雲の灰色体射出率は容易に計算される。このような条件を満足する17のシステムが熱帯領域においてGMS-1(1979,9.22観測)の画像データより抽出された。これより,多数の半透明雲の灰色体射出率が人工衛星の放射観測のみから評価された。得られた雲の灰色体射出率と可視アルベドとの関係は柱状永晶性雲と球状水性雲に関する理論値に対して,両者の中間の特性を示した。加えて,半透明雲の灰色体射出率はその光学的厚さの増加に対してアルベドよりずっと急速に増加することが見られた。
  • 井上 豊志郎
    1985 年 63 巻 1 号 p. 88-99
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    衛星で観測された11μmと12μmの二つのチャンネルの輝度温度差を用いて作成された画像から半透明の絹雲域が,晴天域より大きい温度差を持つ領域として明瞭に判別された。
    絹雲の,この波長帯における有効射出率を散乱を無視した簡単な雲モデルを用いて計算した。積乱雲に伴うアンビルでは,中心付近に輝度温度差の無い黒体域が見られる。黒体域を持つ絹雲について,半透明域の温度を黒体域の温度と同じと仮定し,また絹雲底への放射量は近傍の晴天放射量と同じと仮定し各チャンネルでの有効射出率を計算した。
    二つのチャンネルの有効射出率の間に,理論から期待される関数型を持つ簡単な関係式が,8例の絹雲での860の観測値から,回帰的に決定された。
    この関係式を用いた,11μmおよび12umの2チャンネル衛星データによる絹雲の温度および有効射出率の算定法を開発した。この手法を黒体域を持つ絹雲5例で検証し,11μmでの有効射出率が0.4以上の絹雲に対しては良い結果を示すことが分かった。
  • 横山 辰夫, 田中 浩, 赤枝 健治, 大谷 健, 吉澤 宣之, 山中 大学, 三田 昭吉, 石坂 隆, 小野 晃
    1985 年 63 巻 1 号 p. 100-111
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    融解層を伴った層状性降水の微物理過程を調べるために,富士山に高度の異なる三つの観測点を設け,ろ紙法により,降水粒子の粒径分布を測定した。
    各観測点における粒径分布の時間変化から,層状性降水の微物理過程に関して,次のような結論が得られた。
    i)融解層の上部では,融解直径0.1cm以下の小さな雪片が,体積的•数的に卓越していた。
    ii)融解層の中央部では,雪片の融解とともに,併合による成長が起こっていると考えられ,0.2cm以上の大きな粒子が多く見られた。
    iii)融解層の下部および直下では融解が完了していた。大きな粒子は,分裂のために減少していたと考えられ,中間の大きさの雨滴(0.1~0.2cm)が卓越していた。
    iv)融解層より下の領域では,雨滴の粒径分布には,高度方向に大きな変化は見られなかった。
  • 太田 幸雄, 大喜多 敏一, 日下 文博
    1985 年 63 巻 1 号 p. 112-118
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    大気中の硫酸粒子の測定法について Penzhorn と Filby (1976)によって行われた方法を改良した新しい測定法を考案した。この新測定法では,ジアゾメタンを発生させて直接硫酸をメチル化する装置を用いている。硫酸の検出限界は3ngである。テストチャンバー内に発生させた硫酸粒子について,本方法とクロラニル酸バリウム法及び滴定法とで測定を行ったところ,良く一致した。野外測定において硫酸を硫酸アンモニウムに変換してしまうために問題となるアンモニアガスは,アンモニア除去管を用いることにより除去した。
    1981年の8月の東京における大気中の硫酸粒子の濃度は0.3~4.7μgm-3であった。札幌においては,硫酸粒子濃度は,1981年の5月~7月は0.2~1.3μgm-3,1981年11月~1982年1月は0.1~1.4μgm-3であった。直径2.1μm以下の硫酸粒子の重量累積頻度は90%であった。硫酸(H2SO4)と硫酸塩(SO2-4)の比は,粒径が減少するに従い増加した。
  • 第一部:電荷を持たない雪結晶のミクロンおよびサブミクロン粒子に対する捕捉率
    村上 正隆, 菊地 勝弘, 孫野 長治
    1985 年 63 巻 1 号 p. 119-129
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    電荷を持たない雪結晶の,直径0.1ミクロンから6ミクロンまでのエーロゾル粒子に対する捕捉率が実験的に調べられた。エーロゾル捕捉実験は外部電場や泳動力の無視できる条件のもとで行なわれた。エーロゾルの粒径が6ミクロンから0.2ミクロンへと小さくなるにつれて捕捉率も減少した。しかし,0.2ミクロン付近で最小値に達し,さらに粒径が0.2ミクロンから0.1ミクロンへと小さくなると,逆に捕捉率は増加した。0.2ミクロンから6ミクロンまでのエーロゾル粒子に関しては,インターセプションが主な捕捉メカニズムと考えられた。雲粒付き雪結晶と雲粒付きでない雪結晶の捕捉率の差が小さいことにも明らかになった。今回の実験から得られた捕捉率は以前 Murakami et al. (1981,1983)により求められた観測値と良い一致を示した。
  • 第二部: 静止した雪結晶に対する直径0.1ミクロンの粒子の付着率
    村上 正隆, 菊地 勝弘, 孫野 長治
    1985 年 63 巻 1 号 p. 130-135
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    静止した無荷電雪結晶に対する直径0.1ミクロンの粒子の付着率がエーロゾルチェンバーを用いて実験的に調べられた。実験は,外部電場と泳動力が無視できる条件の下で行なわれた。測定された付着率は,ブラウン拡散の理論から計算された値よりかなり大きかった。この差は,実験における付加的要因(鏡像力•乱流拡散等)による付着率の増加に起因すると思われる。ベンチレーション係数を用いて,静止した雪結晶に対するエーロゾル粒子の付着率から落下する雪結晶の捕捉率が推定された。直接測定した捕捉率と付着率より推定された捕捉率の比較から,対流ブラウン拡散が0.1ミクロン粒子の主な捕捉メカニズムであり,付加的要因(鏡像力•乱流拡散)によっても捕捉率が高められることが示された。
  • 松尾 敬世
    1985 年 63 巻 1 号 p. 136-143
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
  • 小林 愛樹智, 林田 佐智子, 岡田 菊夫, 岩坂 泰信
    1985 年 63 巻 1 号 p. 144-149
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
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