気象集誌. 第2輯
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43 巻, 6 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 岡村 存
    1965 年 43 巻 6 号 p. 293-301
    発行日: 1965年
    公開日: 2008/05/27
    ジャーナル フリー
    Wiin-Nielsenによって導入された超長波の人為的制御の概念を拡帳し,ここでは大気の全層にわたって考察を行なった。その結果,超長波の西進をおさえるための必須の条件は,static stabilityがp-2に比例する場合には,大気の最上端でφ=0の条件となることがわかった。
    次に,この上端の仮定を用いて最も簡単な大気モデルを作った。これは下部成層圏に1層,対流圏に2層をもつような3層モデルである。このモデルに含まれる対流圏内部の運動は,Wiin-Nielsenが得たものとほとんど同じ結果を与え,当然,超長波の著しい西進は起こらない。また,従來多少あいまいであったμ項は,このモデルでは明確な形で定義することができた。
    最後に,上端の仮定の物理的意味について考察を行ない,このような条件は成層圏の内部に期待できることが推論される。
  • 武田 喬男
    1965 年 43 巻 6 号 p. 302-309
    発行日: 1965年
    公開日: 2008/05/27
    ジャーナル フリー
    雨滴の重さにより,対流雲内で生成された下降気流の発達過程およびその働きが,力学•熱力学方程式の数値積分により調べられた。その1例では,大気は初め静止しているが,他の1例では,垂直シアーをもった水平流が初めに存在している。
    静止している大気内で下降気流が生成された場合は,上昇流は単に補償流および重力振動としてのみ起ったが,垂直シアーをもった水平流内で下降気流が生成された時は,雲の前面に強い上昇流が現われた。この上昇流は下層の強い収斂が原因となっている。その収斂は,下降気流からの発散流と強風の吹いている上層から下降気流が運んで來た水平運動量によりつくられた。全領域内におけるポテンシャル•エネルギーから運動エネルギーへの変換度は,垂直シアーを与えられた例の方が少なかったが,垂直シアーをもつ風は,対流系における不安定エネルギーの解消を組織化することが分かった。
  • 小元 敬男
    1965 年 43 巻 6 号 p. 310-330
    発行日: 1965年
    公開日: 2008/05/27
    ジャーナル フリー
    米国ロッキー山脈以東においてスコールラインが寒冷前線の前方に発達する事はよく知られている.このような降雨分布は現在の殆どの気象学教科書に採用されている低気圧内の天気分布のモデルとかなり異なるので,スコールラインが前線の前方に発達する機構に関する種々の研究がなされている.
    しかし冬期においても帯状降雨域が発達した低気圧の温域に屡々現われる事はあまり知られていない.この論文には冬期の二つの典型的な例についての詳細な解析の結果を示した.特に注目される点としては冬期の例では問題にする降雨域が強い対流性の部分は少なく弱い対流性とか又は非対流性の部分がかなり大きい事である.
    従って降雨帯が前線の前方に発達する理由をスコールラインの特性と結びつけると云う今までの考え方に大きな疑問が持たれる.又解析例にも示したように降雨帯と寒冷前線との間隔が300kmもある場合もあり,これ等2者の相互作用の重要性にも疑問が持たれる.詳細な解析の結果この種の雨域が発達する時には700mb-500 mbの間に弱いトラフが現われる事が見付けられ,この種の擾乱が前線の前方の降雨帯の発達に関係があると見る事が妥当と思われる.その他降雨帯に関連した垂直流の分布及び大気の安定度の問題などについても論じた.
  • 孫野 長治, 菊地 勝弘
    1965 年 43 巻 6 号 p. 331-342
    発行日: 1965年
    公開日: 2008/05/27
    ジャーナル フリー
    手稲山において,降雪を融解させてその電荷を測定し,それを融解させない降雪の電荷と比較した。その結果,落下中の雪の結晶は,融解により10-4 e.s.u.のorderの正電荷を獲得した。また,最初多く負の電荷を持っていた雪の結晶は,融解により正電荷を得ることが確かめられた。その際,結晶の外形が複雑なほど正電荷を得る割合が高かった。さらに,融解中の雪の結晶の表面から直径数十μ程度の気泡が次々に現われ,破裂するのが観測された。これ等の観測結果から,雪の結晶は融解により正電荷を得るのは,融解中の結晶から生成された気泡が破裂して負の電荷を持ち去るためと考えられる。
  • 氷に含まれる気泡量と電荷量の関係
    菊地 勝弘
    1965 年 43 巻 6 号 p. 343-350
    発行日: 1965年
    公開日: 2008/05/27
    ジャーナル フリー
    これまでの実験および観測結果から,雪の結晶や氷の試料が融解する時に,正電荷を得ることが知られている。その際,雪の結晶や氷の試料の中に含まれている気泡が何らかの形で電荷発生機構に関係していると考えられたので,特に氷に含まれている気泡量と電荷量との関係を定量的に調べた。
    その結果,融解過程において,氷が獲得した正電荷量は,その試料に含まれている気泡量にほぼ比例していることが明らかになった。またこの実験で,電荷発生機構に寄与していると考えられる気泡の直径は数μから150μ程度のものであって,mean volume diameterは52μであった。一方直径1mm以上の気泡はほとんど寄与していなかった。これらのことから融解の際の電荷発生には比較的小さな気泡が数多く必要なことがわかった。
  • 氷に含まれる気泡の破裂によつて生ずる微水滴の電荷について
    菊地 勝弘
    1965 年 43 巻 6 号 p. 351-358
    発行日: 1965年
    公開日: 2008/05/27
    ジャーナル フリー
    これまでの研究(Magono and Kikuchi,1963, 1965; Kikuchi, 1965)に引続き,氷の試料の融解の際に発生する正電荷についての実験が行なわれた。
    その結果,融解中の氷の表面から,氷に含まれていた気泡の破裂によって生じた多くの微水滴が飛び散るのが観測された。それらの微水滴の多くは,-10-7~-10-5 esuの電荷を有するものであることがわかった。これらの微水滴が"jet droplets"機構によってできるものと仮定すれば,気泡量と電荷量との関係(Kikuchi, 1965)がよく説明される。
  • 小林 禎作
    1965 年 43 巻 6 号 p. 359-367
    発行日: 1965年
    公開日: 2008/05/27
    ジャーナル フリー
    熱電素子対で組立てた小さな拡散型低温箱を使って,氷晶の成長を観察した。-40°C~-90°Cの間で,氷晶は主軸方向の成長を示し,低い過飽和度では無垢の角柱,高い過飽和度ではサヤになる.-45~-50°Cの低い過飽和のもとでは“長い角柱”(c/a>10)や,いわゆる"猫のひげ"結晶の成長がみられた。-50~-90°Cでは角柱の尖端に(101.1)面が現われる。-900°C附近の大きな過飽和のもとでは,特異な樹枝状結晶の成長がみられた.
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