気象集誌. 第2輯
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67 巻, 5 号
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  • U.C. Mohanty, K.J. Ramesh, S.K. Dash
    1989 年 67 巻 5 号 p. 691-704
    発行日: 1989年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    ヨーロツパ中間予報センターが作成した1978年12月~1979年2月の FGGE レベル IIIb データを用いて、全球熱帯域の運動エネルギー収支解析を行った。 平均流と変動成分の詳細なエネルギー収支、特に、運動エネルギーの生成と消滅、および、平均流と変動成分の問の変換量を熱帯域で見積り、これまでの結果と比較した。
    熱帯域で生成された運動エネルギーのうち約60%が摩擦で消失し、残りの40%が両半球の中緯度域へ輸送される。運動エネルギー輸送には、冬半球の亜熱帯偏西風ジェットが重要な役割を果している。半球問の運動エネルギーの交換は非常に小さい。さらに、熱帯循環は主に平均流によって維持されており、一方、中緯度域では変動成分が重要な役割を果たしていることがわかった。
  • William Bourke, 多田 一正, Terry Hart
    1989 年 67 巻 5 号 p. 705-729
    発行日: 1989年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    気象庁(JMA)とオーストラリア気象局(BMRC)の全球スペクトルモデルの誤差特性を調べるために、10例の5日予報を行った。ヨーロツパ中期予報センターの解析値を共通のデータとして使用した。その結果、水循環の差が顕著である事が判明した。BMRC モデルの多量の降水と蒸発量は、水蒸気の初期化と積雲対流のパラメタリゼーシヨンに関係している。BMRCモデルの積雲対流による強い加熱は、対流圏上層の温度場に正の誤差を生じさせる。JMAモデルの水循環は、BMRCモデルほど強くなく気候値によく一致している。KUOスキームの異なった適用法が上記の差の主な原因となっている。両モデルの顕熱補給は過小評価されている。
    JMAモデルでは、北極対流圏上層の温度場に負の誤差を生じる。これは雲量の診断方法に起因している。雲量の気候値を使用している BMRC モデルでは、この問題は現れていない。
    風の誤差特性は両モデルともほぼ類似しているが、熱帯対流圏において BMRC モデルの東西風が JMA モデルに比べて強い。BMRC モデルは、JMA モデルと異なり、重力波抵抗を含まない。この影響は、冬半球の強い東西風として現れる。
  • 第2部:落下速度の変動について
    梶川 正弘
    1989 年 67 巻 5 号 p. 731-738
    発行日: 1989年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    初期雪片(2ないし6個の雪結晶で構成された雪片)について、落下速度の鉛直成分と水平成分の変動を立体写真法で観測した。
    鉛直成分の変動の標準偏差は2cm/sより小さく、平均落下速度(鉛直成分の平均値)の3ないし5%にすぎなかった。一方、水平成分の変動の標準偏差はかなり大きく(1ないし8cm/s)、平均水平速度(水平成分の平均値)の約50%にも達した。このような特性は、雪片を構成している主な雪結晶の形にほとんど依存しなかった。
    従って、雪片の形成過程においては、落下速度の水平成分の変動が鉛直成分の変動よりも重要な役割をしていると考えられる。
  • 第3部:大きな氷粒子の影響
    Eric A. Smith, Alberto Mugnai
    1989 年 67 巻 5 号 p. 739-755
    発行日: 1989年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    鉛直方向と角度について細かくとったマイクロ波の平行放射伝達モデルを用いて、EHF/SHFスペクトル領域にわたる数個の周波数での宇宙空間へ放射されるマイクロ波の伝達に対して、時間に依存して変わる雲の微物理構造の影響を調べるために、雲モデルのシミュレーションとともに、一連の数値実験を行なった。本研究の全般的な目的は、宇宙プラットホームから多チャンネル受動型マイクロ波を利用して降水を推定する技術に介在する物理を詳細に調べることにある。本論文は、先に発表した感度試験研究(Mugnaiand Smith,1988;Smith and Mugnai,1988)の続きである。
    発達するモデル雨雲における受動型マイクロ波の輝度温度に対する大きな氷粒子の効果を、EHF/SHFスペクトル域の10個の周波数で調べた。固い氷結モード及び低密度の氷結モードの両方に対して、それぞれ三つの雲モデルを考慮した。結果は、10.7GHz と 231GHz の問の周波域が、様々の雲モデルや氷結モードに異なって応答することを、はっきり示している。
    個々の雲層や降水層の輝度温度に果たす寄与を鉛直方向に分離するために我々が導入した、周波数に依存して鉛直に分布する一般化射出/散乱加重関数は、大気上端での輝度温度の強さに強く関与している特定の層を同定するのに、どのように利用できるかを示した。その一般化加重関数は、それ自身における散乱項の相対的強さを示す散乱関数め寄与率とも結びついている。このことは、輝度温度が個々の層における降水粒子によっていかに加減されるか、をよく理解する助けになる。
    この研究のもう一つの顕著な成果は、中間または高周波数(37GHz以上)に対する、混合相の存在の重要性を明らかにしたこと、及び85GHzでの氷結モードの影響を定量的に示したことである。更に、ある一定の全液体水分量に対しては、雲の鉛直スケールが、実際の観測と合う輝度温度を与える上での、主な支配的要因であることが示された。この結果は、北部アラバマでの1986年の COHMEX 実験における、航空機搭載の2チャンネルマイクロ波放射計による激しい雷雲の観測の実例解析に基づいている。
  • 坪木 和久, 藤吉 康志, 若濱 五郎
    1989 年 67 巻 5 号 p. 757-770
    発行日: 1989年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    冬期、石狩平野の海岸部では、陸風がしばしば観測される。また海岸沖には陸上の冷気流と海上の暖気流の問に陸風前線が形成される。その陸風の構造と降雪雲に与える影響について、主に一台のドツプラーレーダーを用いて調べた。風速の鉛直プロファイルは、陸風層(厚さ300m)•シアー層および一般風層の三層に分けられた。陸風層上面の傾きは前線の近くでは急で、遠方ではほとんど水平であった。また陸風と北西季節風の境界面に沿ってケルビン•ヘルムホルツ不安定波が観測された。
    陸風は降雪雲の変質過程に強い影響を与える。陸風前線付近で降雪雲のエコーの急速な強化がしばしば観測された。これは前線における強い下層収束によるものと考えられる。一方、そのエコーは前線の後方で急速に衰弱し消滅した。これは北西季節風の気塊中の水蒸気の消耗と、陸風との混合で下層大気が安定化することにより対流が抑制されたためである。前線付近におけるエコーの強化と消滅が繰り返して起こるため、個々のセルは一般風の速さで移動しているにもかかわらず、強いエコーが前線の所で停滞しているように見える。この結果、前線付近では局地的豪雪となる。エコー強度の時間平均分布によると、前線が位置していた海岸部に降水が集中していることがわかる。またアメダスデータの解析によっても、陸風が存在するときは海岸部に降水が集中することが示された。
  • 矢野 順一, 西 憲敬
    1989 年 67 巻 5 号 p. 771-789
    発行日: 1989年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    熱帯大気の時間変動の階層構造の各レベルの特徴的時間スケールはどの程度、客観的に同定することができるか? これを知るための一つの試みとして、フラクタル幾何学を用いた解析を5年間のNOAA•OLRデータについて、行なった。
    熱帯域の時間変動のパワー•スペクトルは、きわめて、大雑把に見て、ほぼ振動数の負のベキ乗になっている:スペクトルがこの形に従う程度に応じて、時間変動は自己相似的(特徴的時間スケールを持たない)である、と言える。フラクタル解析によって、この自己相似性の程度を定量化することができた。用いた手法は、時間平均の長さを変えるとともに時間変動の変動の大きさがどのような割合で変わっていくかを見るものである。時間変動の自己相似性の高さは、経度によって、大きく変化する。季節内変動、年変動、ENSO活動のいずれかひとつが特に顕著な領域では、一般に自己相似性が低く(1-20日程度のスケールで自己相似的)、それらの境界領域では高く(1-100日程度のスケールで自己相似的)なっている。特に、季節内変動が活発な領域での自己相性的な時間スケールの上限は、中沢(1988)の事例研究によって同定されたスーパー•クラスターのスケールとほぼ一致している。
    また、熱帯域全体で、積雲活動がある時間以上持続する確率は、持続時間とともに指数的に減衰する。この減衰の特徴的時間(3-5日)は、積雲クラスターのスケールを表している、と解釈できそうである。
  • 山崎 信雄, 村上 勝人
    1989 年 67 巻 5 号 p. 791-807
    発行日: 1989年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    短周期熱帯擾乱の活動にみられる季節内変動を振幅変調の観点から調べた。熱帯における振幅変調は約30日の周期性を持つことが明らかになった。振幅変調の活発期は、しばしば群発的な熱帯低気圧の発生ないしは発達を伴うことも見いだされた。振幅変調の時空間解析は、この変動が二つの特徴的なモードから成っていることを示した。一つは東進する東西波数1のモードである。他の一つは西進し、東西波数4から6の特徴的な経度スケールを示す。両者のモードとも、擾乱の活動度の活発な状況を形成するうえで同等に重要である。
    季節内振幅変調に伴う大規模な大気循環の変化についても、西太平洋熱帯域での変調を基準にして調べた。合成図による解析により、熱帯擾乱の活動度の活発期には下部対流圏の西風および上部対流圏の東風共に強化されていることが分かった。大気循環の偏差の水平分布によれば、この時期に赤道インド洋から南シナ海を通り西太平洋へ至る下層の西風の貫入が起こっている。この貫入はインドネシア地域での赤道越え南風に強化をも伴っている。上層においては、中部太平洋トラフの強化もこの時期に観測された。
  • 米谷 俊彦, 大滝 英治
    1989 年 67 巻 5 号 p. 809-815
    発行日: 1989年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    水稲群落直上で観測された資料を用いて、不安定状態における炭酸ガスと水蒸気の乱流輸送過程を調べた。(w,wc)と(w,wq)の結合確率密度分布の解析によって、中立状態に於ては下降気流が炭酸ガスや水蒸気の鉛直輸送に著しく有効であることが確かめられた。また、非常に不安定な状態では、下降気流よりも上昇気流の方が炭酸ガスや水蒸気の鉛直輸送に寄与している。炭酸ガスと水蒸気の輸送の安定度に対する依在性は顕熱輸送の安定度依存性に類似している。
  • 北村 康夫, 廣田 勇
    1989 年 67 巻 5 号 p. 817-831
    発行日: 1989年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    近年、中層大気の運動量収支を説明するうえで、下層大気中に起源をもつと考えられる伝播性の内部重力波が注目されている。本研究では、日本各地でのレーウィンゾンデ観測によって得られた1986年のデータをもとに、下部成層圏の風と温度場に見られる小規模な擾乱について詳細な統計的解析を行なった。
    まず、擾乱は冬と春に多く見られ、その強度変動は東西風の強さの季節変化と一致している。またその最大活動域は亜熱帯ジェットから連なり、その北端上部にあたる北緯40°高度15~20km付近を中心に分布している。
    次に個々の擾乱に注目すると、その鉛直スケールは2~5kmのものが卓越し、南北方向には数百kmの範囲に及んでいる。鉛直方向にハンドパスフィルターをかけてやるとそれらの特徴的な波動構造が顕著となり、東西風擾乱に対する温度擾乱の遅れ、南北風擾乱に対する東西風擾乱の遅れはともに-180°~-90°のものが卓越していることがわかる。これを慣性重力波の位相関係にあてはめて解釈すると、北西下向きの波数ベクトルを持っていることになり、いま注目している波動がエネルギーを北西上向きに輸送していることを示す。この波数ベクトルの偏向性は、平均流の臨界層によって特定の波のみが選択される結果と考えられる。
    以上のことから、この擾乱の発生と特徴的構造は亜熱帯ジェットの強さと向きとに密接に関係していると推論される。
  • 花輪 公雄, 吉川 泰司, 渡邊 朝生
    1989 年 67 巻 5 号 p. 833-845
    発行日: 1989年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    前報(Part I, Hanawa et al.,1989)に続き、北太平洋上の風の海面応力ベクトル場を、ENSOイベントに着目して合成図解析手法により調べた。1961年から1984年までの24年間の冬季を Hanawa et al.(1988)が行ったように、ENSO。1年、 ENSO年、 ENSO+1年、他の年の冬季の4つのカテゴリに分類した。
    4つのカテゴリの冬季の中で、ENSO年冬季のアノマリベクトル場は、相対的によく組織化されており、西部北太平洋中緯度や低緯度域では、Part Iで示された"暖かい冬"の場とよく似ているものであった。すなわち、東アジア冬季モンスーン(季節風)は弱まり、赤道域のアノマリベクトル場は、強化された風の収束域(対流の中心)が、中部から東部太平洋に広がっていることを示していた。東アジアモンスーンの弱まりは、Hanawa et al.(1988)が示したENSO年冬季における日本近海の顕著な正のSSTアノマリの出現を説明するものである。しかしながら、中緯度偏西風は北ヘシフトしているが、Part Iの"暖かい冬"や他の3つの冬季と比較して強まっていることがわかった。
    海面気圧場に対する合成図解析は、アリューシャン低気圧の発達と東方への移動を示していた。また、北太平洋上では中緯度に正のアノマリ、高緯度に負のアノマリが出現し、これは中緯度の偏西風の強化と対応している。
    ENSO年冬季を除く他の3つのカテゴリの冬季では、アノマリベクトル場の安定度は低く、Part Iで導入した"相似度"のスコアの時系列は、各カテゴリに対して合成されたアノマリ場は典型的なものではないことを示していた。すなわち、大規模スケールの特徴的なパターンをこの解析では抽出することができなかった。このことから、ENSOイベントは、確かにENSO年冬季の中•高緯度の循環場に大きな影響を与え.ているが、少なくとも中•高緯度の冬季の海面風応力場の特徴を抽出する際の良いサンプリング条件ではないといえる。
  • 浅野 正二, 塩原 匡貴
    1989 年 67 巻 5 号 p. 847-861
    発行日: 1989年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    下層大気の放射収支に及ぼす対流圏エーロゾルの効果を調べるために、放射フラックスとエーロゾルの高度分布の航空機観測を行った。同時に、地上において太陽直達光の分光測定も合わせて実施した。冬季の晴天日•南中時(太陽天頂角約60°)のもとで行われた陸地(筑波)上空の観測4例と、海上(鹿島灘)の観測2例について解析した。
    対流圏エーロゾルの高度分布は、水蒸気の高度分布とよく対応しており、典型的な粒径分布は bimodalであった。対流圏エーロゾルは、太陽放射を効果的に散乱•吸収し、太陽放射フラックスの高度分布に大きな影響を与えている。下部対流圏全体としては、エーロゾルの吸収効果は水蒸気によるものと同程度であったが、最下層の濃いヘイズ層内では水蒸気効果の約3倍程になり、日射加熱率が50°/day に達することもあった。一方、赤外放射フラックスの高度分布は気体成分と気温の分布によりほぼ決定されており、対流圏エーロゾルの効果は、殆ど検出できなかった。下部対流圏の赤外放射冷却率は、1°/day 程度であったが、地表面温度が地上気温より高い場合には、地表面付近の冷却は弱められた。
    対流圏エーロゾルの存在は、下部対流圏一地表系の上端での太陽放射収支にはほとんど効果を及ぼしていなかったが、系の内部での太陽放射エネルギーの分布には大きな影響を及ぼしていた。エーロゾルのない大気に比べて、地表面での太陽放射エネルギーは、下部対流圏においてエーロゾルが吸収する量と同程度(日平均値で約10W/m2)が減少している。太陽放射の加熱効果と赤外放射の冷却効果の結果、下部対流圏の下層は正味加熱、上層は正味冷却を受けており、このことが地表面の日射加熱とあいまって、筑波地域での発達した混合層の形成に寄与していると考えられる。
  • 宮崎 保彦
    1989 年 67 巻 5 号 p. 863-875
    発行日: 1989年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    冬季の熱帯の対流活動、日本の天候および北半球の循環場の関係を日本の気温、長波赤外放射(OLR)、500mb高度および海面気圧の月平均データを用いて統計的な調査を行った。その結果、日本の気温とフィリピン付近の対流活動との問には負の相関関係があることがわかった。すなわち、フィリピン付近で対流活動が強い(弱い)ときには、日本の気温は平年よりも低い(高い)。
    フィリピン付近の対流活動は北半球、特に東アジアの500mb高度と相関関係がある。フィリピン付近で対流活動が強い(弱い)ときには、500mb高度は日本付近で低く(高く)、シベリアで高い(低い)。海面気圧はフィリピン付近で対流活動が強い(弱い)ときには日本東方の太平洋上で低く(高く.)、シベリアで高い(低い)。これらの結果はフィリピン付近で対流活動が強い(弱い)ときには、東アジアの冬の季節風が強まり(弱まり)、日本の気温は低く(高く)なることを示している。
    合成図解析を行った結果、ユーラシア及びパシフィック/ノースアメリカパターンはフィリピン付近で対流活動が弱いときよりも強いときの方が明瞭に現れることがわかった。
  • 小川 浩, 田中 正之, 中島 映至
    1989 年 67 巻 5 号 p. 877-888
    発行日: 1989年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    分子大気および混濁大気における天空光強度を計算する場合、偏光効果を無視した計算では最大10%程度の誤差が生じる。この誤差を補正するための本研究では、偏光効果から発生する天空光強度を逐次散乱法に基づいて定式化し、いくつかのパラメタリゼーションによって簡便な補正式にまとめた。光学的に厚くない均一大気の場合、我々の得た補正式は偏光の影響による誤差を0.6%程度まで減らすことができた。
  • 1983年1月のケース•スタディ
    山崎 孝治, 岡田 菊夫, 岩坂 泰信
    1989 年 67 巻 5 号 p. 889-906
    発行日: 1989年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    1983年1月25日に南極上部対流圏の7.2km 高度で航空機で採集された個々のエアロゾル粒子の元素分析と性状観察を電子顕微鏡及びそれに附属するエネルギー分散型 X 線分析装置を用いて行った。半径0.1-1.6μm の粒子の中で、鉱物を含む粒子が多数(74%)を占めており、エルチチョン火山の噴火(1982年4月)による粒子の地球規模の輸送を示している。変質した海塩または岩塩と思われる粒子は6%あった。硫酸塩•硫酸のみからなる粒子が15%、炭素からなると考えられる粒子が5%見いだされた。
    これらのエアロゾル粒子の輸送経路を調べるために、1日2回の米国 NMC データに基づいた3次元流跡線解析を行った。流跡線解析の結果は20日前には大多数の空気塊は広く南半球の中高緯度対流圏にちらばっていたことを示しているが、小数の空気塊(およそ2%)は南極域200mb より上の成層圏にあった。1983年1月の鉱物を含む粒子(エルチチョン起源粒子)の濃度は成層圏で非常に高かったと推定されることから、南極上部対流圏で採集されたエルチチョン起源粒子は、極域成層圏から下方へ輸送されたと考えられる。もし変質した海塩(または岩塩)粒子がエルチチョン起源でなく海洋起源であるとすると、流跡線解析の結果はこれらの粒子が亜熱帯の海上からきたにちがいないことを示している。
    また本研究は、亜熱帯ジェット付近と共に、南極域が夏期の成層圏から対流圏へのエアロゾル粒子の輸送の主要なルートであることを示している。南極上部対流圏にとっては極域成層圏からのルートが重要である。さらに、成層圏のエアロゾル粒子の濃度が低いときには、対流圏中緯度からの輸送が重要であることが予想される。これらの結果はエアロゾルだけでなく、オゾンや二酸化炭素など他の物質の輸送の問題にとっても有用である。
  • 瀬上 哲秀, 栗原 和夫, 中村 一, 上野 充, 高野 功, 巽 保夫
    1989 年 67 巻 5 号 p. 907-924
    発行日: 1989年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    日本域モデル(JSM)は、現業用に開発された局地スペクトル•モデルである。水平分解能は40kmで、鉛直に19層をもつ。メソαスケール現象と地形性擾乱の微細構造の予測を目的とする。
    JSMは、総観規模擾乱のメソスケール的構造や、ポーラー•ローに伴うメソ•スケールの雲システムを良く予想している。また、梅雨時期の大雨の予想にも十分利用することが出来る。
    降水予想の検証結果は、春については、予報時間の最初の数時間に対しても良いスコアを示していた。しかし、夏のスコアは春に比べて良くない。積雲対流のパラメタリゼーションの欠点によるものかも知れない。夏の場合、モデルの雨の立ち上がりの遅さも重大な問題である。
  • 小林 文明, 菊地 勝弘
    1989 年 67 巻 5 号 p. 925-936
    発行日: 1989年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    1986年9月23日の夜、北海道空知郡北村にスコールラインに伴う顕著な気象擾乱が発生した。2日間にわたる地上からの被害調査、聞き取り調査および種々の解析から、この擾乱はマイクロバーストであると結論づけられ、被害特性から数kmスケールでのこの突風の特徴が明らかにされた。特にレーダーエコーの解析から、マイクロバーストに顕著な"bow echo"が時間的にも位置的にも被害地に対応したところに見いだされた。
  • 高橋 正明
    1989 年 67 巻 5 号 p. 937-948
    発行日: 1989年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
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