日本集中治療医学会雑誌
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24 巻, 3 号
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編集委員会より
原著
  • 小笠原 隆
    2017 年 24 巻 3 号 p. 317-322
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/05/08
    ジャーナル フリー
    【目的】ICUでの早期経腸栄養を目的に作成した,人工呼吸管理を要する重症患者への経腸栄養クリニカルパス(以下,パス)の有効性,安全性を評価する。【方法】後方視的にパスが適用されたPath群48症例とパス導入以前の40症例(Control群)を比較した。【結果】人工呼吸開始後の経腸栄養開始はPath群22時間,Control群45時間(中央値,P=0.03)と有意に短縮された。下痢,嘔吐の発生率は増加していなかった。人工呼吸器装着期間や院内死亡率は両群で差を認めなかった。【結論】ICUでのパスは,消化管有害事象を増やすことなく,人工呼吸を要する重症症例への早期経腸栄養を実現できた。
症例報告
  • 石川 紗希, 中村 教人, 高岡 早紀, 山本 裕子, 植松 明美, 佐久間 貴裕, 忍田 純哉
    2017 年 24 巻 3 号 p. 323-326
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/05/08
    ジャーナル フリー
    症例は77歳,女性。呼吸困難を主訴に救急外来に搬送された。来院時,心拍数111 /min,血圧70/52 mmHg,経皮的動脈血酸素飽和度91%(room air)であった。心電図で右側胸部誘導のST低下を認め,経胸壁心エコーでは右室は著明に拡大し,造影CTで両側肺動脈に広範囲の血栓を認めたため,急性広範囲型肺血栓塞栓症と診断された。抗凝固療法に並行し,肺動脈血栓摘除術の方針とした。急激な循環虚脱に備え,経皮的心肺補助装置を準備の上,肺動脈血栓摘出術を施行した。術後の呼吸循環動態は安定しており,術翌日に人工呼吸器から離脱し,カテコラミン投与を終了した。術後4日目にはICUを退室した。急性広範囲型肺血栓塞栓症では,早期診断と適切な早期治療が大きく死亡率を改善させる。救命するには呼吸循環補助を含め,各部門と連携した集学的治療が必要であり,常に外科的治療を念頭に置き対応する必要がある。
  • 大岩 雅彦, 福島 臣啓, 角谷 隆史, 石川 友規, 石井 瑞恵, 佐藤 幸子, 奥 格, 時岡 宏明
    2017 年 24 巻 3 号 p. 327-331
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/05/08
    ジャーナル フリー
    【背景・目的】ICUにおいて気管チューブの自己抜管は一定の頻度で起こる。当院ICUにおける自己抜管症例の頻度,再挿管率,再挿管の危険因子,合併症,予後を検討した。【方法】平成25年4月から平成27年3月までの自己抜管症例を対象とし,非再挿管群と再挿管群の2群に分け,比較検討した。【結果】対象期間で人工呼吸管理症例は590症例であった。自己抜管は41症例(7%)で生じ,データ欠落症例を除く33症例を対象とした。再挿管症例は16症例(48%)であった。自己抜管症例の再挿管率は計画抜管症例の再挿管率より高かった。慢性心不全,ノルアドレナリン使用症例で再挿管率が高かった(P<0.05)。再挿管症例はICU滞在期間が延長し,自己抜管後の合併症頻度が高かった(P<0.05)。死亡例は再挿管群でのみ認めた。【結語】循環が不安定な症例は,自己抜管後に予後が悪化する可能性が高く,慎重な管理が必要である。
  • 井坂 華奈子, 竹内 宗之, 橘 一也, 京極 都, 文 一恵, 小山 英彦, 簱智 武志, 清水 義之
    2017 年 24 巻 3 号 p. 332-336
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/05/08
    ジャーナル フリー
    劇症型A群レンサ球菌感染症により敗血症性ショック,急性呼吸窮迫症候群(acute respiratory distress syndrome, ARDS)をきたした日齢20の新生児症例。低酸素血症が急速に進行し,経過中にプラトー圧28 cmH2O,PEEP 8 cmH2Oとなり,体外式膜型人工肺(extracorporeal membrane oxygenation, ECMO)が考慮された。この時点で,食道内圧を測定し,経肺圧を計算したところ,最高経肺圧は18 cmH2Oであった。Grassoらの報告1)に従い,最高経肺圧が25 cmH2O,1回換気量が6 ml/kgとなるように,プラトー圧38 cmH2O,PEEP 14 cmH2Oに設定したところ,低酸素血症は改善した。敗血症治療も奏功し,8日目に抜管,13日目にICUを退室した。急速に進行する重症ARDSに対して経肺圧に基づく換気設定を行い,ECMOを回避できた。
  • 杉浦 潤, 間藤 卓, 関根 進, 有馬 史人, 大井 秀則, 山口 充, 中田 一之, 杉山 聡
    2017 年 24 巻 3 号 p. 337-340
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/05/08
    ジャーナル フリー
    70歳,男性。下肢の慢性皮膚損傷の悪化による重症敗血症にて,近医より紹介となった。積極的な創部の処置と抗菌薬投与にて敗血症状態を脱し軽快した。後日,創部の培養から,Kerstersia gyiorumK. gyiorum)が検出された。近年,16S rRNA(16S ribosomal RNA)解析による細菌の分類,同定が進んでおり,K. gyiorumは2003年に分類された菌であるが未だ報告例は乏しい。報告が少ない理由として同定の困難さが挙げられる。今回の症例は,MALDI-TOF MS(matrix assisted laser desorption/ionization time of flight mass spectrometry)法により同定が行われた。検査機器の進歩に伴い,解析が医療施設で行えるようになったため,これまで同定が困難であった菌が,比較的容易に同定できるようになり,今後は,今回と同じく,これまで我々があまり聞き慣れない,過去に報告の少ない菌が同定されるケースが増えることが容易に予想される。症例の蓄積と,治療に関する知識の集積が望まれる。
  • 須賀 将文, 井上 彰, 高場 章宏, 有吉 孝一, 瀬尾 龍太郎, 吉澤 尚志, 加地 修一郎, 古川 裕
    2017 年 24 巻 3 号 p. 341-344
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/05/08
    ジャーナル フリー
    Kounis症候群は,肥満細胞の活性化によりアレルギー反応と急性冠症候群が同時に発生する疾患である。症例は66歳,男性。特記すべきアレルギー歴はない。椎骨動脈解離フォローアップの頭部血管CT施行後に意識障害・血圧低下・全身の膨疹が出現した。アドレナリン投与にて症状は改善したが,診療中に胸痛が出現し,心電図で前胸部誘導のST上昇を認めたため,Kounis症候群と診断した。冠動脈造影では3ヵ月前に留置されたステントの血栓性閉塞を認め,経皮的冠動脈形成術を施行した。造影剤によるKounis症候群では,検査・治療に原因物質の造影剤を使用せざるを得ない状況となる。本症例ではステロイド投与下に,アナフィラキシーの再燃を来すことなく,経皮的冠動脈形成術を施行できた。アナフィラキシーを診療する際にはKounis症候群を念頭に置く必要がある。また,造影剤によるKounis症候群でもアナフィラキシー対策下に冠動脈造影を行うべきである。
研究速報
  • 永渕 弘之, 熊坂 治, 麻生 俊英
    2017 年 24 巻 3 号 p. 345-347
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/05/08
    ジャーナル フリー
    Objectives: The study was conducted to compare the combined effect of dexmedetomidine (DEX) and oral or suppository Yokukansan (YKS) on sedation after cardiac surgery in pediatric patients. Methods: Eighteen postoperative patients were divided into three groups according to YKS combined with continued administration of DEX: non-YKS (NY) group, gastric tube (oral) YKS (GY) group, and intrarectal suppository YKS (RY) group. YKS was administered at a dose of 0.1 g/kg every four hours. The sedation level was evaluated using Richmond Agitation-Sedation Scale and Behavioural Observational Pain Scale, and ketamine was administered for patients with scores ≥2 in either scales. The total dose of ketamine administered per body weight was used to define the sedative effect. Results: The ketamine dose (median) was 1.5, 1.0, and 0 mg/kg/day in NY, GY, and RY groups, respectively. Compared with the NY group, the GY group used less ketamine but the difference was not significant (P=0.49) and the RY group used a significantly lower dose (P=0.03). Conclusions: The combination of DEX and suppository YKS was effective for sedation in children after cardiac surgery, while DEX combined with gastric tube (oral) YKS was not sufficient in efficacy.
短報
委員会報告
  • 日本集中治療医学会/日本臨床救急医学会Rapid Response System合同委員会, 日本集中治療医学会Rapid Response ...
    2017 年 24 巻 3 号 p. 355-360
    発行日: 2017/05/01
    公開日: 2017/05/08
    ジャーナル フリー
    わが国でも入院患者の有害事象を減らす方策としてRapid Response System(RRS)の有用性が認識されつつある。RRSに関する研究報告が増加する一方,用語の使用や解釈に混乱が見られる。しかし,RRSの普及を促進し,多施設症例登録に基づく臨床研究を実施するために,用語の統一は不可避である。国際的にも用語の統一が図られる方向にあることを受けて,当合同委員会ではRRSに関して頻用される用語の日本語訳と定義について検討を重ね,以下のように結論した。1. RRSの訳語を「院内迅速対応システム」とし,「患者に対する有害事象を軽減することを目指し,迅速な対応を要するようなバイタルサインの重大な増悪を含む急激な病態変化を覚知して対応するために策定された介入手段」と定義した。2. RRSのシステムを構成する4つの要素に関する用語として,afferent limb/component, efferent limb/component, patient safety/process improvement limb/component, governance/administrative structure limb/componentの日本語訳と定義を定めた。3. RRS起動を受けて対応するチームの構成を指す用語である,medical emergency team(MET), rapid response team (RRT),critical care outreach team(CCOT)については日本語訳を設けず,定義のみとした。4. RRS導入によるアウトカム評価指標として,unexpected cardiac arrest, unexpected death, unplanned ICU admissionなどの日本語訳と定義を定めた。
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