結核
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81 巻, 9 号
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  • 鹿住 祐子, 前田 伸司, 菅原 勇
    2006 年 81 巻 9 号 p. 551-558
    発行日: 2006/09/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    〔目的〕抗酸菌の同定にrpoB遺伝子シークエンスを利用できるか評価を行うために16SrRNAシークエンス(RIDOM)と比較し,さらにこの2つの方法を使い分けてDDH法にて菌種不明であった38臨床分離株を同定した。〔対象および方法〕ATCC標準菌株を中心とした抗酸菌(106株)とNocardia属,Rhodococcus属,Gordona属合わせて計112株を用いて,rPoB遺伝子シークエンスと16SrRNAシークエンスを行った。そしてDDH法不明菌38臨床分離株のシークエンス結果を2つの方法のデータベースで相同性を調べ,菌種を決定した。〔結果・考察〕研究対象となった112株のうち16SrRNAシークエンス(RIDOM)では69,6%,rpoB遺伝子シークエンスでは89。3%が同定可能であった。16SrRNAシークエンス(RIDOM)では同定できないM.kansasiiなど11菌種をrpoB遺伝子データベースでは分けることが可能であったが,2つのシークエンスを用いてもM.tubereulosisなど12菌種を分けることができなかった。DDH法不明菌種の38株はM.heckeshomense,M.branderiなど21菌種として同定され,両方の方法を組み合わせることによって97.4%が同定可能であった。
  • 森山 誠, 小川 賢二, 西森 敬, 打矢 恵, 伊藤 哲也, 八木 哲也, 中島 一光, 中川 拓, 垂水 修, 二改 俊章
    2006 年 81 巻 9 号 p. 559-566
    発行日: 2006/09/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    〔目的〕M.aviumに対するVNM型別解析法とISl245-RFLP型別解析法の菌株鑑別能力比較,および治療による菌株のVNTRデータ変化を検討した。〔対象および方法〕患者喀痰から分離培養されたM.avium24株をHGDIを用いて2種の方法における菌株鑑別能力比較を行った。また,1名のM.avium感染患者において,治療経過中に分離された菌株の変化をVNTR型別解析法により検討した。〔結果〕HGDIにより算定した菌株鑑別能力は,ISl245-RFLP型別解析法が0.866,VNTR型別解析法が0.975であり,VNTR型別解析法のほうが優れていた。治療経過を追って検討した症例では,分離した40コロニーを検討した結果,ポリクローナルなM.aviumが感染しており,治療時期によって検出されるクローンの割合が大きく変化していた。〔結論〕M.aviumの鑑別にVNMを用いることは菌株鑑別能力と簡便性において大変有用であると考えられた。また,治療による変化については今後症例を集積することによりM.avinm憾染症の治療法に有用な情報が得られると考えられた。
  • 1,141名の喀痰塗抹陽性肺結核患者の疫学的研究
    井上 武夫, 子安 春樹, 服部 悟
    2006 年 81 巻 9 号 p. 567-571
    発行日: 2006/09/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    〔目的〕結核感染における加齢の影響を知る。〔対象と方法〕愛知県で新登録された1,141名の喀痰塗抹陽性肺結核患者の登録票を再点検し,感染経路を同じくする複数の発病者からなるクラスターを選別し,その最初の登録者を感染源患者(SC),それ以後の登録者を二次患者とし,SCの占める割合を感染源率(ESR)とした。〔結果〕感染源患者は70名,ESRは6.1%であった。10代から40代までのESRは13%以上で,50代は6.9%,60歳以上は4%以下であった。60歳で二分したESRは,60歳未満11.6%,60歳以上3.3%であった(p<0.001)。性,肺病変,G号数,感染危険度指数別の9区分で比較したところ,60歳未満のESRは60歳以上よりすべての区分で高かった。また,G号数の増加により60歳未満ではG1~4号6.3%,G5~8号15.3%,G9~10号32.4%と有意に増加したが,60歳以上では3.1%,3.9%,3.4%とほぼ同じであった。同様に,感染危険度指数10未満と10以上のESRは,60歳未満では8.0%,19.2%と有意に増加したが,60歳以上では3.1%,3.9%とほぼ同じであった。〔考察〕結核の感染源は主に喀痰塗抹陽性の肺結核であり,感染源率は,さまざまな因子により分けられた患者集団の感染力の強弱を表す。〔結論〕結核感染力は60歳以上で著しく弱まる。
  • 伊藤 邦彦
    2006 年 81 巻 9 号 p. 573-576
    発行日: 2006/09/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    〔目的〕集菌塗抹の蛍光染色(以下,集菌塗抹)と直接塗抹のzieh1-Neelsen染色(以下,直接塗抹)の感度および塗抹グレードを比較したデータを示し,以前の報告での「喀痰2回の集菌塗抹の蛍光染色の感度および塗抹グレードは,従来の喀痰3回の直接塗抹Ziehl-Neelsen染色の感度と同等かそれ以上である」という主張を補強する。〔対象と方法〕2003年1月1日~2005年9月30日の間にわれわれの所属する病院で行われた抗酸菌検査の後ろ向き調査.〔結果〕同一の喀痰検体で直接塗抹と集菌塗抹の両方を行った899検体中少なくともどちらか一方で陽性であった170例のうち,集菌塗抹陽性検体は167例(98.2%),直接塗抹陽性検体は113例(66.5%)で,前者で有意に陽性率は高い(p<0.001)。集菌塗抹と直接塗抹の両者で陽性の110例中.集菌塗抹結果のほうが直接塗抹よりも塗抹陽性度が高いものは65例(59.1%),直接塗抹結果のほうが集菌塗抹よりも塗抹陽性度が高いものは3例(2.7%)で,集菌塗抹で有意に塗抹陽性度が高い(p<0.001)。〔結論〕塗抹陽性率および塗抹陽性度の点において集菌塗抹は直接塗抹の感度よりも高い。以前の報告を考慮した場合,2回の集菌塗抹の感度は3回の直接塗抹と同等かそれ以上である可能性が高い。
  • 関根 聡子, 石田 卓, 大島 謙吾, 大塚 義紀, 棟方 充
    2006 年 81 巻 9 号 p. 577-580
    発行日: 2006/09/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は59歳男性。抗凝固薬内服歴なし。平成16年4月1ml程度の喀血あり当科受診。血小板数,凝固系に異常なく,胸部単純X線写真,7mm厚胸部CTにて異常所見を認めなかった。気管支鏡検査にて右B1a、より出血が認められたが,同部位の気管支吸引物・気管支洗浄液の検査では有意所見を認めず,抗酸菌塗抹陰性・結核菌PCR陰性のため止血剤投与にて経過観察していた。しかしその後もたびたび中等量の喀血があり3週問後に当科入院。気管支動脈造影では右上葉枝が出血源であり,動静脈痕などの血管異常は否定された。その後0.5mm厚のthinsliceCTにて右B1aに浸潤影と気道に沿った周辺の肺野の濃度上昇が認められた。さらにその後の喀痰抗酸菌検査にて塗抹(1+),結核菌PCR陽性であることが判明し,肺結核症と診断した。診断確定後すぐに抗結核薬内服加療を開始。その後血痰は消失し,喀痰抗酸菌塗抹・培養ともに陰性化した。本症例は,胸部単純写真にて明らかな異常を認めない喀血症例においても,肺結核症を考慮する必要性を示唆する。
  • 急性感染と慢性感染が引き起こす病態とは?
    宮下 修行
    2006 年 81 巻 9 号 p. 581-588
    発行日: 2006/09/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    肺炎クラミジアは呼吸器感染症の一般的な原因菌で,肺炎や気管支炎,咽頭炎,扁桃炎,副鼻腔炎,喘息発作,COPDの増悪などを起こす。その最大の特徴は症状が軽微または無症候で,終生免疫が成立しないため感染を繰り返しやすい点にある。増殖中の菌体はさまざまなストレスによって増殖しない大型の異常菌体(AF,aberrantform)になって,宿主細胞質内に潜伏し持続感染が成立する。AFはインターフェロンγなどによって生じることが確認されているが,ストレスの種類によって差はない。持続感染では免疫原性の強いheat shock protein60(HSP60)の産生が継続しており,HSP60によって細胞質に存在する転写因子NF-κBが活性化され炎症性サイトカインや接着分子の発現誘導が起こる。またHSP60は遅発型過敏反応を起こすことが分かっており,感染部位における自己免疫反応も局所炎症に重要な役割を担っていると考えられている。すなわち生体内での持続感染は,HSP60による感作の持続亢進とAF保有細胞のサイトカイン合成が同時に起こり,これらが慢性炎症,組織障害を含む免疫学的障害の原因となる。
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