〔目的〕結核感染における加齢の影響を知る。〔対象と方法〕愛知県で新登録された1,141名の喀痰塗抹陽性肺結核患者の登録票を再点検し,感染経路を同じくする複数の発病者からなるクラスターを選別し,その最初の登録者を感染源患者(SC),それ以後の登録者を二次患者とし,SCの占める割合を感染源率(ESR)とした。〔結果〕感染源患者は70名,ESRは6.1%であった。10代から40代までのESRは13%以上で,50代は6.9%,60歳以上は4%以下であった。60歳で二分したESRは,60歳未満11.6%,60歳以上3.3%であった(p<0.001)。性,肺病変,G号数,感染危険度指数別の9区分で比較したところ,60歳未満のESRは60歳以上よりすべての区分で高かった。また,G号数の増加により60歳未満ではG1~4号6.3%,G5~8号15.3%,G9~10号32.4%と有意に増加したが,60歳以上では3.1%,3.9%,3.4%とほぼ同じであった。同様に,感染危険度指数10未満と10以上のESRは,60歳未満では8.0%,19.2%と有意に増加したが,60歳以上では3.1%,3.9%とほぼ同じであった。〔考察〕結核の感染源は主に喀痰塗抹陽性の肺結核であり,感染源率は,さまざまな因子により分けられた患者集団の感染力の強弱を表す。〔結論〕結核感染力は60歳以上で著しく弱まる。
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