結核
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90 巻, 10 号
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原著
  • 大角 晃弘, 吉松 昌司, 内村 和広, 加藤 誠也
    2015 年 90 巻 10 号 p. 657-663
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/09/16
    ジャーナル フリー

    〔目的〕わが国における2011年の潜在性結核感染症(latent tuberculosis infection: LTBI)登録者数は10,046人で,前年4,930人の約2倍になり,2012年には減少して8,771人であった。LTBI登録者数増加および減少の要因について推定することを目的とした。〔対象・方法〕2012年と2013年に,計2回の全国495カ所自治体保健所を対象とする,半構造式調査票を用いた横断的・記述的調査を実施し,2009年以降の接触者健診対象者数・interferon-gamma release assay(IGRA)検査実施状況・IGRA検査で偽陽性と考えられる事例等について情報収集した。〔結果〕IGRA検査実施者数・割合は,2009年から2012年まで増加傾向を認めたが,IGRA検査陽性者数・割合と同判定保留者数は,2011年に増加傾向を認め,2012年には減少していた。IGRA検査結果の信頼性に問題がある事例の発生を回答したのは,2012年調査で34保健所(8%)であった。〔考察〕2011年における接触者健診に関わるIGRA検査実施者数・同検査陽性者数は,より高齢者における増加傾向が大きく,LTBI検査対象者の年齢制限撤廃が影響したと考えられた。2011年のIGRA検査陽性者割合・判定保留者割合増加の理由として,医療従事者や高齢者等のより結核既感染率が高いと推定される集団に対して同検査を実施するようになったことや,IGRA検査法の変更により感度が上昇したこと等の可能性が考えられた。2012年におけるLTBI登録者数減少要因として,集団感染事例の減少等が推定された。〔結論〕2011年におけるLTBI登録者数増加要因として,IGRA検査実施者数増加・QFT検査法変更による陽性結果者や判定保留結果者増加等が推定された。2012年におけるLTBI登録者数減少要因として,集団感染事例の減少・感染性結核患者数の減少等が推定された。

  • ― 標準治療が困難時の対応について ―
    奥村 昌夫, 佐々木 結花, 吉山 崇, 松田 周一, 大澤 武司, 森本 耕三, 野内 英樹, 倉島 篤行, 尾形 英雄, 後藤 元
    2015 年 90 巻 10 号 p. 665-670
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/09/16
    ジャーナル フリー

    〔目的と方法〕結核専門病院である当院での年間の結核入院治療成績を後ろ向きに検討した。〔結果〕2011年度は296例が入院治療を行った。そのなかで多剤耐性結核症は18例であった。薬剤感受性検査はイソニアジド(INH),リファンピシン(RFP),エタンブトール(EB),ストレプトマイシン(SM)の主要4剤に感受性であったのが229例(77.4%)であった。入院期間内に86.5%にあたる256例がINH,RFP,EBまたはSMの3剤,あるいはピラジナミド(PZA)を加えた4剤による標準治療を開始し,66.8%にあたる171例が継続使用可能であった。4剤治療を行ったもののなかで80歳未満は76.0%が治療可能であったものの,80歳以上は49.3%のみが治療可能で有意差がみられた。4剤標準治療における培養陰性までの期間は40.6日であった。標準治療で肝機能障害がみられたのは4剤治療では8.5%であり,80歳以上,80歳未満の間で有意差はみられなかった。多剤耐性結核症はそれぞれの耐性状況に応じた治療を行い,18例中7例が外科的切除術を行った。〔考察〕結核治療は多剤併用にて治療期間が長く,副作用が出現するなど治療継続が困難な場合がある。患者それぞれの副作用,耐性状況に応じた治療の継続が必要である。

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