結核
Online ISSN : 1884-2410
Print ISSN : 0022-9776
ISSN-L : 0022-9776
82 巻, 9 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 星野 斉之, 大森 正子, 内村 和宏, 山内 祐子
    2007 年 82 巻 9 号 p. 685-695
    発行日: 2007/09/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    〔目的〕就業状況別の結核罹患率の状況を推定し,その背景を検討する。〔方法〕発生動向調査と労働力調査を用いて,1987年から2005年までの性,年齢,就業状況別の罹患率を推定した。また,各種の統計を用いて,罹患率の背景を検討した。〔結果と考察〕2005年の推計では,20歳代では学生が最も罹患率が高く,外国人の影響が示唆された。20~30歳代では常勤雇用者において女性が男性より高く,保健看護職の高い罹患率が要因と考えられた。30歳以降では,男女の無職と男性の臨時・雇いの罹患率が高く,低い経済的状況や建設業労働者の影響が示唆された。一方,女性の臨時・日日雇いの罹患率は家事と同等で低く,安定した経済的状況,建設業労働者が少ない,短い勤務時間が背景として考えられた。年次推移では,1990年代後半の減少鈍化は男女のほとんどの就業状況で見られており,再減少後2002年以降は,再び減少鈍化傾向(特に男女の無職と学生)が生じている。〔結論〕就業状況別に見て結核罹患率の高い群には,男女の無職,男性の臨時・日雇い,外国人,女性の保健看護職が挙げられる。また,男女の無職は減少速度も鈍化しており,今後対応策の検討が必要と思われる。
  • 下内 昭, 廣田 理, 甲田 伸一, 撫井 賀代
    2007 年 82 巻 9 号 p. 697-703
    発行日: 2007/09/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    〔目的〕看護師の結核発症状況を分析して,感染・発病の阻止方法を検討する。〔対象・方法〕1999~2003年大阪市に新規登録された結核患者について職業欄に看護師等医療関係者の記載のあった結核登録票を全数調査した。〔結果〕女性看護師・准看護師の罹患率は女性全体の3.0倍であった。患者発見方法別では多いほうから,有症状による医療機関受診(67名,55.8%),職場定期健診(43名,35.8%),個別健診(7名,5.8%),接触者健診(3名,2.5%)であった。病院における感染危険要因の割合は,全体では55.0%,20歳代は72.5%,30歳代は47.4%,40歳代37.5%,50歳代36.4%,60歳代0%と年齢が低いほど割合が高い傾向にあった。個別の感染危険要因は頻度の高い順から「病院に結核患者あり」(10.09%),「接触者健診受診歴あり」(9.2%),「18歳以降治療歴あり」(7.5%),「結核病院結核病棟勤務」(6.7%),「同僚に結核患者あり」(5.0%),「勤務開始後ツベルクリン反応増強」(2.5%),「健診時陳旧性結核と言われた」(1.7%),「化学予防中断」(1.7%)であった。特に患者数の多い20歳代では,「接触者健診受診歴あり」「病院に結核患者あり」だけで38.8%と高い割合を占めた。〔考察〕一般女性の3倍と高い看護師の罹患率を低くすることを目指して,院内感染対策を推進することが重要である。
  • 原田 義高, 川上 健司, 小山 和彦, 山領 豪, 木村 由美子
    2007 年 82 巻 9 号 p. 705-709
    発行日: 2007/09/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は66歳女性。2004年12月29Hから肺結核に対して,PZA,INH,RFP,EBの4荊で治療を開始した。治療開始後33日扇にAST301IU/L,ALTl41IU/Lと肝機能障害を認めたため抗結核薬を含む内服薬をすべて中止した。42日目に黄疸が出現し,AST1432IU/L,ALT908IU/Lと肝機能障害が増悪し,肝庇護剤を投与開始し,48日目にはステロイド剤を投与開始した。第55病日には肝性脳症が出現し,肝不全となり64日目に死亡した。抗結核薬による肝機能障害は比較的高頻度に認められるが,本症例のように致死的な経過をとることは稀であるので報告する。
  • 谷口 浩和, 市川 智巳, 泉 三郎
    2007 年 82 巻 9 号 p. 711-714
    発行日: 2007/09/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は,肺結核と結核性胸膜炎の既往のある84歳の男性で,右前胸部に疼痛を伴う腫瘤が出現し,当科を受診した。胸部CTにおいて右慢性膿胸を認め,その壁に腫瘤が認められた。腫瘤を生検した結果,その組織は,T細胞とB細胞双方のマーカーが陽性の非ホジキンリンパ腫であったため,膿胸関連リンパ腫と診断した。治療としては,腫瘤部への放射線照射のみを行い.腫瘍は縮小し疼痛は消失した。T細胞とB細胞双方のマーカーが陽性の膿胸関連リンパ腫は稀であるため報告した。
  • 石川 成範, 矢野 修一, 小林 賀奈子, 唐下 泰一, 徳田 佳之, 池田 敏和, 竹山 博泰
    2007 年 82 巻 9 号 p. 715-719
    発行日: 2007/09/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は,63歳の男性。検診にて胸部異常影を指摘され紹介。胸部CT上,左S6に充実性結節影と左肺門および縦隔リンパ節腫大を認めた。18FDG-PETでは同部位1に一致して高集積像を示した。炎症性肉芽腫をまず疑ったが肺癌も完全には否定できなかった。約1年後,陰影の増大にて再紹介され気管支鏡検査を再施行したが,再び確定診断に至らなかった。胸腔鏡下左下葉切除を行い,組織診にて乾酪性肉芽腫の診断を得た。同検体の培養でMycobacteriumtuberculosisが同定され,肺結核症と診断した。今回われわれは18FDG-PET検査にて肺癌との鑑別に苦慮したリンパ節腫大を伴う肺結核症を経験したので報告する。
  • 藤田 次郎, 日比谷 健司, 原永 修作, 比嘉 太, 健山 正男
    2007 年 82 巻 9 号 p. 721-727
    発行日: 2007/09/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    近年,呼吸器疾患の臨床現場において非結核性抗酸菌症(特にMAC症)の重要性が高まりつつある。本稿では,肺非結核性抗酸菌症に関して概説的に述べる。特に2007年2月にATS/IDSAのオフィシャル・ステイトメントが発表されたので,その内容の概略について紹介したい。肺MAC症の病型として,(1)primarily fibrocavitary disease,(2)nodular/bronchiectatic disease・および(3)hypersensitivitylike diseaseの3つの型がある。臨床的には(3) は稀であり,(1) および(2) が重要な病型である。(1) は主として上肺野を主体に空洞形成を示すもので,高齢者,喫煙者,あるいは塵肺など既存の肺疾患を有するものに多く認められる。(2) は主として,中年女性の中葉または舌区を主体に発症する。画像所見として,(1) の病型においては空洞形成が,(2) の病型においては小結節と気管支拡張が特徴的である。またエイズ患者を中心とした免疫抑制患者に発症する,播種性MAC症も認識しておく必要がある。MAC症の感染経路,および発症機序については今後の解明が待たれる。
feedback
Top