気象集誌. 第2輯
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59 巻, 5 号
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  • 山形 俊男, 松浦 知徳
    1981 年 59 巻 5 号 p. 615-619
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    高レイノルズ数の非回転流体の流れに対してよく知られているプラントルーバチェラーの定理を一般化し,中規模渦を含む場合と含まない場合の二通りの準地衡流の場の平均状態を考察した。
    層流の場合にエクマン粘性を考えると,閉じた等地衡流線内は回転系で見て静止する場合のあることを示す。中規模渦を含む場合には,渦の強さと散逸の弱い極限で,二つの全く異なる状態が存在することを示唆する。一つは層流の場合に帰着するものであり,他は渦の活動により渦位の平均場が閉じた地衡流線を持つ領域内で一様になる状態である。後者はRhines and Young(1981)の最近の結果と矛盾しない。
  • 林 良一
    1981 年 59 巻 5 号 p. 620-624
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    多変数最大エントロピー法により試験的に与えた正弦波動の時空間クロス•スペクトルを計算した。この方法は短い時系列から振動数分解能の良いパワ•スペクトルだけでなくコー•スペクトル,位相差,コヒーレンスも与える。応用例としてGFDLスペクトル大循環モデルの外部ロスビー波の時空間スペクトル解析を行った。
  • 第1部:月及び季節平均について
    住 明正, 村上 多喜雄
    1981 年 59 巻 5 号 p. 625-645
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    客観解析法(拡張された修正法)を,1979-79年冬の3ヵ月のWMONEX広領域の850mbと200mbのFGGE/WMONEX level IIa及びIIbの風のデータに適用した.78-79年の冬季循環の様々の性質が,月平均及び季節平均の風の場,流線関数(渦度),速度ポテンシャル(発散)により調べられた.
    850mbの季節平均の風の場には,南半球夏季モンスーン循環に伴う,顕著な赤道西風、帯が,赤道と10°S,インド洋(80°E)から中部南太平洋(170°E)にみられる。更に,赤道トラフの東端(10°S,170°E)には,南半球モンスーンに対する,顕著な下層収束•上層発散を持つ,主たる熱源がある.
    5°Sと15°Sの間のインドネシア海西部一南太平洋領域では,850mbの月平均の赤道の西風は,12月から1月へと強くなる.しかしながら,この強化は,北半球からの赤道横断流(シベリアからの寒気の吹き出し)によるものとは思われない.それに対し,日付変更線付近の赤道横断流には,顕著な変化が見られる.
    200mbでは,オーストラリア大陸上の,12月の強い西風が,1月には弱い高気圧性循環の形成と伴に,東風になる.面白いことに,この1月の高気圧性循環(20°S,130°E)は,発散の中心(5°S,170°E)の約40°西に在る.このように,78-79年南半球夏季モンスーンは,発散中心と高気圧性循環が30°~50°ずれているという1970-72年北半球夏季モンスーン(Murakami,1978a)の状況と,良く似ている.
  • 第2部:3長周期擾乱
    村上 多喜雄, 住 明正
    1981 年 59 巻 5 号 p. 646-671
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    °データは,12日~30日周期でフィルターした,1978-79年年冬季3ヵ月の850mb及び200mbの風,渦度,発散である。これらのフィルターしたデータの合成図を作成した。
    南及び東南アジアの200mbの循環は,上部対流圏の東進するトラフ及びリッジの通過に伴い,大きな変化をする。これらρ擾乱の発達,ゆっくりとした東進,そして消滅の機構は,Murakami(1981c)により調べられたものと同じであった。また,顕著な長周期(12日~30日)の擾乱を,日本から中部太平洋を通り,赤道太平洋まで追跡することが出来た。これらめ擾乱は,主として,季節平均場及び他の全ての周期の擾乱との順圧非線形効果により維持されている。オーストラリアの東側でも,長周期変動が顕著であった。この領域では,対流活動に伴う渦度の垂直輸送が重要のように思われる。
    850mbでは,北風の吹きだし(偏差)は,アフガニスタンーパキスタン,日本-フィリッピン及び中部北太平洋の三地域で卓越している。チベット高原の西縁では,東進するトラフの前面の下層の南西風が急斜面を流れ上がるため,下層の収束が強化され,トラフを堰B切る発散成分の西風が増加し,そして,局所的な北風が加速される。この地形による加速は,日本-フィリッピン地域の北風の加速にも関係がある。一方,中部太平洋の1700W付近の北風の加速は,30°N以北の擾乱の活動度に関連がある。
    赤道に沿って,850mbの東西風及び発散は,顕著な20日周期の変動をする。中部太平洋領域の西風偏差,収束(東風偏差,発散)は,インド洋上の東風偏差,発散(西風偏差,収束)と対応する。赤道付近の850mbの東西風の変化は,主として,東西方向の気圧傾度力によるものと思われる。
  • 新田 勍, 増田 耕一
    1981 年 59 巻 5 号 p. 672-682
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    夏季モンスーン実験期間中,ベンガル湾上で発達したモンスーン低気圧の三次元構造を,飛行機によるドロップゾンデ観測と,通常の高層観測データを用いて調べた。1979年7月3日~8日の期間,領域11°N~24°N,80°E~93°Eにおける地上から500mbの風気温,相対湿度のデータを客観解析の手法で水平1°,垂直25mbごとの格子点に内挿した。
    低気圧は7月6日,ベンガル湾上19°N,90°E付近に発生し,約2°/日の速度で西進し,7月8日にはインド大陸の西海岸に到達した。発達した低気圧は,約1.5×10-4 s-1の最大渦度を持ち,中心のやや東側に暖域が存在する。中心の西側には,水平収束と上昇域があり,ここには活発な積雲対流が存在している。低気圧の水平軸は南西から北東に傾き,運動量および顕熱を北に輸送しており,平均流から運動エネルギーを得ている。
    低気圧の発生前にベンガル湾上には5×10-5 s-1の比較的大きな正の相対渦度が存在しており,低気圧はこの領域のすぐ近傍で発生した。この大きな相対渦度は,弱いトラフの存在と,東西風の南北変化によってできている。
    発生前のベンガル湾上の東西風の南北-垂直分布を調べてみると,平均流は不安定の必要条件を満たしていることがわかった。さらに500mb以下の層で平均した東西風の安定性を調べてみると,順圧不安定による不安定波が存在し,波長3,500km付近に増幅率最大を持っている。この不安定波はいくつかの点で観測されたモンスーン低気圧と類似した特性を有している。
  • 第II部:短周期擾乱
    村上 多喜雄, ホー レスター
    1981 年 59 巻 5 号 p. 683-708
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    資料は第1部と同じく1978-79(FGGE)年の冬3ヵ月間における風, 気温および高度場である。3.5~7.0日周期帯でフィルターしたデータの合成図を作成した。
    300mbにおける合成図ではトラフやリッジが規則的に東進する。ロッキー山脈の影響により下層擾乱の移動は規則的ではない。高(低)気圧擾乱がカリフォルニア西岸に近づくと,下層の北(南)風はロッキーの南斜面を吹き下り(上り),下層発散(収歛)が強まる。したがって高(低)気圧擾乱はロッキーの南側を迂回する。
    850mbではロッキーの風下側で地形による小規模擾乱が発生する。これらの小規模高(低)気圧擾乱はロッキーの東側に沿って南下した後,西から東進してきた高(低)気圧擾乱の本体と合流する。この時テキサス附近ではカナダ(メキシコ湾)からの下層寒(暖)波が卓越する。このことは顕著な北向き顕熱輸送がおこっていることをしめす。
  • 二宮 洗三, 巽 保夫
    1981 年 59 巻 5 号 p. 709-722
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    6層77km格子プリミイテブモデルを使用して1979年7月12~15日に中国~日本を通過した長続きした亜熱帯Cbクラスターをともなう中間規模擾乱の24時間予報実験を行う。目的はこのモデルによる中間規模擾乱とそれにともなう降雨の予報可能性をさぐり,かつ擾乱の発達におよぼす積雲対流の熱力学的効果を調べることである。
    このため,次の5種類の実験を行う:Exp.1~4は下層の渦度でコントロールされた湿潤対流調節を含み,Exp.1はルーチン客観解析システムによるスムーズされた水蒸気初期場から予報し,Exp.2は衛星画像を参照して,Cbクラスター内の下部3層に湿った(90%)水蒸気ボーガスデーターを加え,Exp.3は下2層に加え,Exp.4は乾いた(50%)水蒸気ボーガスをクラスター内部の下3層に加える。Exp.5は湿潤対流調節を含まない(初期値はExp.2に同じ)。現用6LFLM(150hm格子モデル)との比較も行う。
    この実験を擾乱の"発生期","クラスター期","クラスター~低気圧期","低気圧期"について行う。格子間隔の縮小によるシュミレーションの精度の向上は"クラスター期"~"クラスター~低気圧期"において特に著しい。湿潤対流調節の有無,小蒸気ボーガスの有無による差も"クラスター期"~"クラスター~低気圧期"に著しく,この期間,凝結•積雲の効果の大きなことが推論される。一方,この実験モデルでは"発生期"の擾乱の発達や降水は,水蒸気ボーガス•データーを加えてもシュミレートできなかった。"発生期"の状況をシュミレートするためには,さらに格子を縮小し,パラメタリゼーションや初期値解析を改良する必要がある。
  • 菊池 幸雄, 荒川 正一, 木村 富士男, 白崎 航一, 長野 美文
    1981 年 59 巻 5 号 p. 723-738
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    山岳の効果をとり入れた海陸風の3次元数値モデルを開発した。支配方程式系はいわゆるブシネスク,静力学平衡系であり,鉛直座標としては地表面とモデル上面とに準拠したZ*系を用いた。モデル大気は鉛直方向に全長2,800mが12層に分割され,水平方向には幅7.5kmの30×30の格子から構成されている。
    海面温度は一定と仮定し,陸地の温度は定まった日較差をもって正弦的に変化するように与えた。これが外力となって海陸風及び山谷風が起る仕組みである。
    このモデルを関東地方に適用し,山なしモデルと山ありモデルについて検討した。山なしモデルでは主循環は海岸付近に限られるが,山ありモデルでは関東全域で風の日変化が行なわれる。後者は実測とよく一致する。計算結果では,山谷風の方が海陸風よりも先行して起る。これの妥当性については実測のつみ重ねに侯ちたい。
  • Ulrich Ebel, Helmut Kraus, Eberhard Schaller
    1981 年 59 巻 5 号 p. 739-752
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    気団変質特別観測時における,冬季モンスーン下の大気境界層の熱力学的構造を簡単な定常逆転層モデルを用いて調べた。このモデルには大規模場の下降流,乱流混合,水平移流,放射冷却の効果が入っており,雲底高度,逆転層高度のほか静的エネルギー,水蒸気の混合比,乱流輸送量の垂直分布が求められる。
    モデルで得られた結果は,観測値や他の計算結果とよく一致しており,モデルには気団変質時の主要な物理過程が含まれていることを明示てしいる。モデルの結果に及ぼす各パラメータの影響度を調べたところ,結果はあるパラメータに大きく依存することがわかった。
  • 大畑 哲夫, 樋口 敬二, 池上 宏一
    1981 年 59 巻 5 号 p. 753-762
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    東ネパール,クンブヒマール地方における大きな谷の中の風系を,海抜高度4,420mの地点でほぼ一年間にわたる風向,風速及び他の気象要素の観測に基づいて調べた。観測結果によると,この風系の特徴は次の通りである。昼間の谷風は年間を通して90%以上の頻度で起こる。これは,この風系が非常に安定して存在していることを意味する。乾期(1月~5月及び10月~12月)の風系は典型的な山谷風のパターンを示す。しかし雨期(モンスーン期;6月~9月)には,谷風が昼間から翌朝の4時頃まで,夜間を通して吹く。この原因は,.雲の形成による潜熱放出によって谷の中の大気が暖められるためと考えられる。昼間の谷風の平均風速は5~6月に最大で8.5m/secであり,10月に最小で5.0m/secであった。
    観測期間中,谷風が定常的でない場合が45日間みられた。それらは,3種類のタイプに分けられ,原因として考えられるのは,積雪の存在,中層雲•高層雲の存在,それと強い上層風の谷の中への侵入である。それらの中で,積雪の影響が非常に顕著にみられた。降雪後の日中の風速は,降雪前の値の30~90%に落ちた。積雪の谷風を弱める効果は気温に依存しており,0°C以上の場合に風速の減少が著しかった。
  • 村上 正隆, 平松 親, 孫野 長治
    1981 年 59 巻 5 号 p. 763-771
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    気中のエーロゾル濃度と雪結晶に付着したエーロゾル数を1978年3月に札幌市内と手稲山頂(1,024m)で同時に観測した。その結果,雪結晶1個当りに付着しているエーロゾル数は札幌の方が手稲山頂よりも約1ケタ多かった。このことは雪結晶が落下中に大気中のエーロゾルを捕捉することを示すものである。
    雪結晶によるエーロゾル捕捉率が札幌で得られた観測データを基に計算された。雲粒付き雪結晶による捕捉率は雲粒の付いていない雪結晶によるものより約1ケタ大きくなった。空気力学的効果とrain-out効果がこの大きな差に寄与しているものと思われる。
    0.4μmから10mμまでのエーロゾルに関しては雲粒の付いていない雪結晶による捕捉率は粒径とともに増加し,1×10-3から6×10-2に及ぶ。この値は他の研究者によって実験的に求められた値とほぼ一致した。又,0.1mμ以下のエーロゾルについては捕捉率はおおよそ1×10-2と見積られた。
  • 佐藤 昇, 菊地 勝弘, Stephen C. Barnard, Austin W. Hogan
    1981 年 59 巻 5 号 p. 772-780
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    975年1月と1978年11月の二度にわたって,南極点基地で氷晶の観測を行なった。解析の結果,最大降水強度は0.01~0.2mm•hr-'の範囲で,粒度分布は他の降水と同じく, ND=Noexp(-ΛD)の形で表わされることがわかった。また,レーダー反射強度因子(Z)と降水強度(R)の間には,Z=10R1.0の関係があった。その他,砲弾集合や角柱結晶の軸比(c/a)と結晶主軸の長さの関係は,従来報告されている結果にほぼ等しかった。
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