三極眞空管を用ひて永續振動を發生する場合に、陽極回路が誘導体を含む時は、その一周期間に一度或は二度衰滅振動が發生する。然し永續振動の周波數が低い時は後者の發生は不可能である。この現象は三極眞空管内の熱電子電導が整流作用を行ふ事に起因するのであつて、陽極と線條間の靜電的容量と陽極回路の誘導体とが振動回路の一部を形成する。而して衰滅振動の周波數は大体此等の定數に依て定まる。
かゝる現象の發生の理由及び其特性の解説の目的で、まづ簡單な回路の考察から始める。最初整流器を含む交流回路中に發生する衰滅振動を論じ、次に三極眞空管の陽極には直流電壓を與へ補極には低周波(50~)或は高周波(1萬~程度)の交番電壓を與へて、三極眞空管を増幅作用をなす場合に發生する振動電流に關して、周波數の關係、衰滅振動發生可能の條件等を考察し、最後に發振器としての三極眞空管が發生する衰滅振動が前の場合の一ツの特殊の變形であるとして論及してをる。
專ら實驗的研究を主とした。衰滅振動を發生する場合は其の一ツ一ツが蓄電器の振動的充電或は放電の瞬時現象であつて、精細な理論的説明は不可能であるが、簡單な數式的解法を試みてその特性の大綱を示すに止めた。低周波の實驗には主にオツシログラフを用ひたが、高周波の塲合にはBraun管オツシログラフを用ひ、衰滅振動電流はそのcyclic current diagramから周波數或は衰滅係數等の測定をなした。
此の報告は次の項目に分つ。
I. 緒言
II. 整流器に結ばれた振動回路中に發生する衰滅振動
III. 増幅器としての三極眞空管の陽極に結ばれた振動回路中に發生する衰滅振動
IV. 發振器としての三極眞空管に依る衰滅振動
V. 結論
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