電氣工學ボケツトブツク編纂に關し、先づ委員諸氏勞を感謝し、進むで其の内容中の二點に就き左記意見を記述せり。
一、 H型ケーブルの缺點として、該書に擧げられたる事項、即ちH型は普通型に較べると、導體と鉛被間の絶縁體の厚さが等しい時は、直徑が大となる、金屬化紙を纏捲するため特種の作業を要する、萬一金屬化紙の剥脱した部分があると其の害が著しい等は、現在實用せられつゝあるH型ケーブル及び、其の製造方法とは事實が遙かに相違して居るから、缺點として擧げることは正鵠を得てゐない。
二、 重信ケーブルの撚り合せ長さに關しlong pair twist, short quad twist及びshort pair twist, long quad twistの兩方式中後者を舊式なりと該書に記載しあるも、靜電容量不平衡には、ケーブル製造機械の良否原料撰擇の精粗、及びケーブル製造上の巧拙が、大なる影響を及ぼすことを説き此等の點が適法に滿足せらるれば勿論、假りに多小の不滿足の點があつたとしても其の程度が僅少であれば、或る範圍内に於けるpach lengthの長短は、靜電容量不平衡も少なからしむる上に於て、殆んど顧慮する必要がない、此の事は現在實用せられつゝある長距離用重信ケーブルの實例に徴して明かである。從而short pair twist, long quad twistの方法を舊式なりと稱せるは穏當を缺くものである。
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