商用短波電信に於ては,Frequency diversityを行ふ目的で變調電波を用ひる場合が少くないが,この場合送信機の出力をなるべく大きくし,又占有周波數帶を不必要に廣くしない爲に,數年前から振幅變調を改めて周波數變調が採用されて居る。併し原振器たる水晶發振器の周波數を變調する爲に,可變蓄電器の可動板を小型電動機で回轉せしめて居たので.これを改め,故障を生ずる虞を少くする意味で,可動部分をなくする方法を講じで見た。その方法は導電方向を一致せしめた二つの整流器(傍熱型陰極の眞空管)と變調電源とで局部回路を構成し,二つの整流器の接續點を固定蓄電器を經て水晶發振器を構成して居る眞空管のグリッドに,又變調電源の中性點を發振眞空管のフィラメントに接續するのである。さうすると,變調電壓の瞬時値に伴つて靜電容量の變化する蓄電器を水晶振動子に竝列に接續したのと等價な結果が得られ,有效に發振器の周波數を變調する事が出來る。實地試驗の結果は豫期通り滿足な成績を示したので,引續き實用に供して居る。尚この方法は周波數變調による電話の送信,電信を電信符號のMarkの時とSpaceの時とは周波數だけ異り,振幅は常に一定な電波で送ると云ふ,Frequency diversityを兼ねた高速度通信,位相變調,振幅變調に於ける平衡型變調,Ring modulator等にも應用し得る。
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