本編記載の研究は、陽極に電流を通じて、夫を高温度に保ち得る樣に装置した、(第一圖)及び(第二圖)に示す樣な内部構造を有し、10
-5粍(水銀)以上の眞空に排氣した、三極眞空管を用ひて行た。その陽極の物質としてニツケル及びタングステンを用ひた。ニツケルは電解的に得たニツケル箔、タングステンはタングステン線を用ひた。ニツケル陽極の温度は、光色高度計を用ひ、タングステン陽極の温度はI、Lungmuir氏の研究
(1)の結果を用ひて決定した。温度と二次放射電子流の關係は、ニツケルの時はV
g=509.9ボルト、V
p=261.0ボルトに一定に保ち、タングステンの時はV
g=500.1ボルト、V
p=79.8,90,98,110,120.2,130,142,8,148.8,163.4,ボルトに保ちて、前者は室温から大體950°C迄、後者は同樣室温から1800°K迄に變化して、其の間の關係を求めた。
此の關係を夫々第六圖及び第十圖に示した。即ちニツケルは温度400°C附近迄は二次放射電子流は除々に増加し、夫れ以上の温度からは減少する事を認めた。猶800°C附近に於て一寸再び二次放射電子流の増加して後再び減少する事を認めた。此等はニツケルの電氣抵抗の温度に對する變化の現象とほヾ平行である。次にタングステンの時は、タングステンの温度が、一次放射電子流を生ずる温度迄は一定である事を確めた。尚タングステン線に就いて850°K及び1350°Kの時に於ての(I
p-V
p)曲線を取つたがCritical Potentialは室温の時より遙に明瞭を欠いて、曲線は一般にSmoothに取れた。此の事實はタングステン分子のエネルギーを低温と高温に於て比較する事より説明出來る事である。
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