名古屋市において1993年1月から1994年8月まで、大気中の過酸化水素(H
2O
2)濃度を測定した。H
2O
2濃度には日変化や季節変化がみられた。日変化は、主に光化学反応によって駆動され、汚染大気中では、午後に濃度が極大となり、深夜に濃度が最も低くなった。日中における濃度は日射量と最も高い正の相関があり、夜間における濃度は、大気安定度の指標としての風速と良い正の相関関係にあった。都市域における大気中の過酸化水素(H
2O
2)濃度の測定渡辺幸一田中浩名古屋大学大気水圏科学研究所名古屋大学大気水圏科学研究所名古屋市において1993年1月から1994年8月まで、大気中の過酸化水素(H
2O
2)濃度を測定した。H
2O
2濃度には日変化や季節変化がみられた。日変化は、主に光化学反応によって駆動され、汚染大気中では、午後に濃度が極大となり、深夜に濃度が最も低くなった。日中における濃度は日射量と最も高い正の相関があり、夜間における濃度は、大気安定度の指標としての風速と良い正の相関関係にあった。季節変化については、夏期に最も濃度が高く、冬期は非常に低くなった。月平均値は、1993年には5月に最高値に達したが、1994年は8月に最高値になった。これは、1993年の7月と8月が太陽光が不足していたためである。名古屋市のSO
2濃度から判断すると、冬期は極度にSO
2の酸化剤が不足していることがわかる。また、低気圧の通過によって、夜間にH
2O
2濃度が急激に増加する現象が観測された。これは、濃度の高い自由大気から大気擾乱によって下方に輸送されてきたためであると考えられる。
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