本研究では,高出力,高密度を持つ蓄熱システムを実現するために,蒸発器のない蓄熱装置を用い,高出力・高密度を可能にする反応媒体を選定し,その放熱基礎特性を明らかにした.本システムでは,固液反応によって生じた溶解液を,熱を必要とする場所に直接送り込む水和反応システムを想定し,固液反応のエンタルピー推算結果から,複数の金属塩と水の反応系の中で,CaCl
2, CaBr
2, or LiBr (s)/H
2O (l)を本固液反応システムの反応媒体候補として選定した.そして,この3系を用いて実験を行い,その発熱量を測定した.また,これらの当量比と反応熱の関係を明確にした.本実験の結果,飽和溶解度下にて,CaBr
2 (s)/H
2O (l): 622 kJ/L-water, LiBr (s)/H
2O (l): 534 kJ/L-water,およびCaCl
2 (s)/H
2O (l): 481 kJ/L-waterの水和反応発熱量を得た.また,析出防止,蓄熱密度の観点では,CaBr
2は,飽和溶解度濃度57 wt%,蓄熱密度451 kJ/L-solutionと3系の中で最も高いことを実験により明らかにし,発熱量は,理論発熱量の96%であった.これらの溶解熱の出力速度は,3系とも1 min以内に最高値を示した.特に,CaBr
2/H
2O (l)は,水和反応開始後,10 sで出力10 kW/L-waterに達し,その発熱反応の応答性の速さを確認した.
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