症例は81歳男性。上腸間膜動脈塞栓症による全小腸・右側結腸切除後の短小腸症候群にて当院外科通院中。徐々に進行する意識レベル低下,食思不振にて当院外科入院。入院後,喀痰抗酸菌塗抹(±)(G1)および急性呼吸不全が出現し,当科へ転科。汎血球減少,CRP上昇,低蛋白血症を認めたが,HIV抗体は陰性であった。入院時より胸部X線写真およびCT上両側全肺野のびまん性小粒状影,喀疾抗酸菌培養にて
Mycobacteriumkansasii(以下
M.kansasiiと略す)検出。骨髄穿刺組織で乾酪壊死を伴う類上皮細胞肉芽腫形成を認め全身播種型
M.kansasii感染症と診断し,抗結核剤(HRS)の早期投与にて救命しえた。呼吸不全の増悪は心不全の合併も原因の1つであった。本症例は,短小腸症候群による栄養不良が発症原因と考えられた。今後,本症の発症頻度増加が予想され,鑑別診断として念頭におく必要があると考える。
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