〔目的〕1984,1989,1994,1999~2004年の病理音剖検輯幸腫を用いて,結核臨床診断の精度を検討した。〔結果〕1999~2004年における剖検例(生前診断または病理診断の主病名に結核の記載のある症例)は1725例であった。肺結核の生前診断率は55.7%,粟粒結核の生前診断率は21.9%であった。肺結核見逃し例の生前診断では,呼吸器疾患では肺炎・気管支炎(30.8%)が最も多く,呼吸器外疾患も34.0%を占めた。粟粒結核見逃し例では,呼吸器疾患では肺炎・気管支炎(17.7%)が最も多いが,呼吸器外疾患(72.0%)が多く,腎不全,悪性腫瘍,敗血症が上位だった。1984年以降の推移では,肺結核生前診断率に改善傾向はないが,粟粒結核生前診断率に若干の改善傾向がみられた。〔考察〕生前診断率を改善し,適切な結核治療や院内感染予防策を遂行するには,肺炎・気管支炎例における結核の鑑別診断が重要である。粟粒結核では,呼吸器外疾患にも留意すべきである。結核罹患率低下に伴い,結核診断の難度は増すと考えられるので,結核の臨床診断(特に粟粒結核)に関する教育や鑑別診断の励行が今後なお一層望まれる。
抄録全体を表示