結核
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82 巻, 3 号
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  • 結核療法研究協議会
    2007 年 82 巻 3 号 p. 155-164
    発行日: 2007/03/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    〔目的〕2002年度結核療法研究協議会入院時結核菌薬剤感受性に関する研究について,外部精度評価の観点から解析した。〔方法〕全国で2002年6月1日から11月30日までに,抗酸菌培養陽性で入院した症例を対象とした。臨床情報および菌検査情報(同定,薬剤感受性)を収集し,結核研究所での検査結果と比較した。〔結果〕95施設から4,134株が集められ,そのうち結核菌は3,127株(75.6%),非結核性抗酸菌は899株(21.7%),結核と非結核菌株の混在が26株(0.6%),雑菌汚染82株(2.0%)であった。評価可能な結核菌3,122株について,50施設(52.6%)がビットスペクトルーSRを,23施設(24.2%)がウエルパックSを用いて薬剤感受性試験を実施していた。結核研究所での判定を基準とした場合,各抗結核薬(INH,RFP,SM,EB)の感度は90.3%以下で,特異度・一致率は96.9%以上であった。エタンブトールのκ指数のみ0.47と低値であった。〔考察〕感受性試験の方法による検査精度の差は認められなかったが,エタンブトールのみ精度が低かった。
  • 星野 斉之, 菅原 勇, 大森 正子, 和田 雅子
    2007 年 82 巻 3 号 p. 165-171
    発行日: 2007/03/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    〔目的〕1984,1989,1994,1999~2004年の病理音剖検輯幸腫を用いて,結核臨床診断の精度を検討した。〔結果〕1999~2004年における剖検例(生前診断または病理診断の主病名に結核の記載のある症例)は1725例であった。肺結核の生前診断率は55.7%,粟粒結核の生前診断率は21.9%であった。肺結核見逃し例の生前診断では,呼吸器疾患では肺炎・気管支炎(30.8%)が最も多く,呼吸器外疾患も34.0%を占めた。粟粒結核見逃し例では,呼吸器疾患では肺炎・気管支炎(17.7%)が最も多いが,呼吸器外疾患(72.0%)が多く,腎不全,悪性腫瘍,敗血症が上位だった。1984年以降の推移では,肺結核生前診断率に改善傾向はないが,粟粒結核生前診断率に若干の改善傾向がみられた。〔考察〕生前診断率を改善し,適切な結核治療や院内感染予防策を遂行するには,肺炎・気管支炎例における結核の鑑別診断が重要である。粟粒結核では,呼吸器外疾患にも留意すべきである。結核罹患率低下に伴い,結核診断の難度は増すと考えられるので,結核の臨床診断(特に粟粒結核)に関する教育や鑑別診断の励行が今後なお一層望まれる。
  • 江森 幹子, 加治木 章, 池堂 ゆかり, 落合 早苗, 岩田 安弘, 原田 泰子, 北原 義也
    2007 年 82 巻 3 号 p. 173-178
    発行日: 2007/03/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    〔目的〕M.scrofulaceum肺感染床の臨床的特徴を明らかにする。〔対象および方法〕1989年から2003年までに国立病院機構大牟田病院にて経験した15例の本症を対象とし,その臨床像,画像所見,臨床経過を検討した。〔結果〕性比は男性8例,女性7例で,平均年齢は65.9歳であった。喫煙歴を8例に,粉塵職歴を7例に認めた。画像所見では結核類似型が11例,小結節気管支拡張型は4例であった。治療により画像所見の改善を認めた症例は4例で,不変または悪化は11例であった。死亡例は5例で,そのうち本症の悪化による死亡は3例であった。〔考察〕画像上結核類似型が多く,その拡がりは診断時から広範なものが多く,このことが難治性の一因と考えられた。粉塵職歴を7例に,慢性閉塞性肺疾患を3例に認めており,また本菌以外の非結核性抗酸菌の排菌を6例に認めたことより,肺局所の抵抗性減弱が発症要因,進展要因のひとつと考えられた。経過上改善を認めたものは4例にすぎず,死亡例が5例(原疾患死3例)と多く,予後不良の例が多いと考えられた。
  • 下内 昭, 甲田 伸一, 落合 裕隆
    2007 年 82 巻 3 号 p. 179-184
    発行日: 2007/03/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    〔目的〕高齢者施設における患者発生状況および結核感染防止対策を把握する。〔対象と方法〕2005年に大阪市内の全高齢者施設に対して,結核感染防止対策に関するアンケート調査を実施した。〔結果〕219施設中197施設から回答を得た(回収率90%)。過単数の施設で,施設内感染対策委員会が設置され(57%),構造設備面では自動換気であった(59%)。入所者の定期胸部X線検査は94%であり,大半の施設で入所者や通所者の1呼吸器症状の有無をチェックしていた。しかし,結核の健康教育(40%)や小冊子の配布の実施率(19%),新規採用職員に対するツベルクリン反応検査実施率(31%)は低かった。過去3年間(2002~2004年)に結核患者が診断された施設は22%であった。年平均罹患率は入所者が人口10万対75.2で職員(看護師,介護士,相談員)は24.1であった。患者が発生した施設の要因を分析すると,入所者数が多いこと,施設内感染対策指針の中に結核に関する記述がある率・対策委員会の設置率・職員採用時のツベルクリン反応検査実施率が高いことであった。〔考察〕大阪市内の高齢者施設では患者発生があった施設ほど対策をよりよく実施していると解釈される。また,入所者および職員の罹患率は年齢層を考慮すると一般住民より低く,罹患率が高くなるほど結核の施設内感染が発生していないと考えられる。しかし,入所者からの発病は常に起こりうるので,積極的に結核感染防止対策を実施する必要がある。
  • 小林 賀奈子, 矢野 修一, 池田 敏和, 徳田 佳之, 唐下 泰一, 石川 成範, 竹山 博泰
    2007 年 82 巻 3 号 p. 185-188
    発行日: 2007/03/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は79歳の女性。全身倦怠感を主訴に来院した。肝臓内の複数の結節性病変と,左鎖骨上窩・左頸部リンパ節・腹部大動脈周囲リンパ節・両鼠径リンパ節の腫脹を認めた。エコーガイド下肝生検では確定診断に至らなかったが,右鼠径リンパ節生検より乾酪壊死を伴う類上皮細胞性肉芽腫を認め,結核菌の培養陽性であった。以上より,肝結核,結核性リンパ節炎と診断し,HREZ4剤で治療開始した。6カ月後,肝病変,リンパ節ともに改善した。当初,悪性腫瘍の肝およびリンパ節転移を疑ったが,肝結核に多発性結核性リンパ節炎を合併した稀な結核として報告した。
  • 肉芽腫性疾患の鑑別診断における課題
    三木 誠, 清水川 稔, 岡山 博, 鹿住 祐子
    2007 年 82 巻 3 号 p. 189-194
    発行日: 2007/03/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は36歳女性。健康診断胸部X線写真で両側びまん性の浸潤陰影を指摘され,当科受診。胸部CTではコンソリデーション,tree-in-bud所見を認めた。経気管支肺生検病理所見で多核巨細胞を含む非乾酪性肉芽腫を多数認めた。誘発喀痰抗酸菌培養検査が陽性となったが,DNA-DNAhybridization法では同定できず,16SribosomalRNAsequencingを行い,塩基配列が100%一致しMycobacteriummageritenseが同定され,非結核性抗酸菌症の診断が確定した。M.mageritenseはRunyon分類IV群だが,系統発生学的にはM.smegmatisgroupに属し,特にM.wotinsjkyi,M.goodii,M.smegmatisに類似する。本菌による肺感染症の報告は明確に記載されたものがなく,本症例が第1報告例と考えられた。抗結核薬耐性であったが,本症例は無治療で自然寛解し現在も経過観察中である。非結核性抗酸菌症には不明な点が多く,除外的にサルコイドーシスと診断がなされている症例の中には,Mmageritenseによる肉芽腫症が存在する可能性が示唆された。
  • 倉島 篤行
    2007 年 82 巻 3 号 p. 195-199
    発行日: 2007/03/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    肺MAC症化学療法は,主にCAM,RFP,EBの3薬剤併用で行い,重症例ではaminoglycosidesを追加するというレジメンが国際的に同意されている。肺MAC症化学療法でこのような多剤併用を行う理由として一つは耐性菌出現阻止のために行うが,これは結核症化学療法と同様である。他には,抗菌力増強のためと,polyclonalinfectionに対応するために多剤併用を行う必要がある。現在の化学療法薬剤中.単独である程度MAC菌を抑制しうるのはCAMとaminoglycosideだけである。CAMはHIV感染に伴う全身散布性MAC症の無作為対照比較試験で有用性が明らかにされ,これが今日肺MAC症化学療法に適用されている。CAM投与時は血中濃度2μg/mlを上回らないと効果的ではない。Aminoglycosideは15mg/kg以下でないと聴覚器障害が発生する。RFPは薬物相互作用をとおしてCAM血中濃度を著しく低下させるが,臨床的にはCAMにRFPを併用したほうが有効であり,血中濃度だけでは未知な作用機序があると想像される。多くのガイドラインで化学療法は菌陰性化後1年間で終了とあるがこれはエキスパートの意見でエビデンスではない。すべての薬剤を一度に終了すると,数カ月後に再排菌することはしばしば経験する。化学療法終了後再排菌までの期間を検討するとweibullの公式に従うランダムな分布であり,環境からの再感染の可能性が高いと推定される。これらの検討からわれわれは理念的な3つの化学療法phaseを考えている。すなわち,(1)full dose induction chemotherapy(2年間),(2)maintenance chemotherapy(1年間),(3)preventive chemotherapy(1年間)である。各々は将来実証されるべき課題である。しかし,MACに対する化学療法薬が相対的に非力な現在,外科療法との組合せは重要である。気管支拡張や空洞など気道構造破壊性病変は内科治療不応であり,これらが外科摘除の対象病巣である。主要な散布源であるこれらの病巣が摘除された時こそ最も化学療法薬が有効な時期であり集学的治療観点が重要である。
  • 2007 年 82 巻 3 号 p. 201-227
    発行日: 2007/03/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
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