結核
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83 巻, 4 号
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  • 和田 雅子, 奥村 昌夫, 星野 斉之, 御手洗 聡, 大森 正子, 内村 和広, 吉山 崇, 尾形 英雄
    2008 年 83 巻 4 号 p. 353-358
    発行日: 2008/04/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    〔目的〕肺結核症に対する維持期週2回間欠療法の治療終了2年後の再発率を調査し,維持期間欠療法の効果を調べる。〔方法〕INH,RFPの両剤が感受性の初回治療肺結核症でPZAを加えた標準治療を開始し,維持期週2回INH,RFPを保険薬局DOT下に服用することに同意した患者を対象とした。副作用のためにINH,RFP,PZAのいずれかの薬剤が中止された例,治療期間中観察不能の例は除外した。同じ条件を満たし,維持期毎日自己服用した患者を対照とし,治療成績を比較した。〔結果〕研究対象例全例が所定の治療を終了し2年以上経過していた。維持期週2回間欠療法に参加した例は135例あったが,3例は副作用のため中止し,11例は初期強化期間を延長していたため分析から除外した。残りの121例中治療終了後6カ月以上経過観察された例は105例であった。対照例では治療終了した例は240例で,このうち37例は副作用のため不規則治療,他薬剤の追加,または治療期間を延長されていたため分析から除外した。残りの203例中6カ月以上経過観察された例は147例であった。週2回間欠療法を受けた105例中4例(3.8%),毎日自己服用した147例中5例(3.4%)に再排菌がみられた。それぞれ再発率は1.89/100人・年.1.86/100人・年で,両群の再発率には統計学的に有意差はみられなかった(z=0.36p=0.14)。〔結論〕維持期週2回間欠療法は,治療自己中断はなく,再発率も毎日療法と同様であり有効な治療法である。今後日本の標準化学療法の一つとして医療基準に採用されるべきである。
  • 矢野 修一, 小林 賀奈子, 池田 敏和, 徳田 佳之, 若林 規良, 石川 成範, 竹山 博泰
    2008 年 83 巻 4 号 p. 359-363
    発行日: 2008/04/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    〔目的〕過去に当院の結核病棟に勤務歴があり現在も在職中の看護師に対しQuantiFERON®TB-2G(QFT)を施行し,その結果から当院の結核感染予防対策要綱(感染防止マニュアル)施行前後における結核病棟勤務看護師の結核感染状況を検討した。〔方法〕過去に当院の結核病棟に勤務歴を有し,現在も当院在職中の看護師50名に対しQFTを施行した。QFTからみた感染防止マニュアル施行前(前群)と施行後(後群)における結核病棟看護師の結核感染状況について検討した。〔結果〕全対象看護師におけるQFT陽性率は3/50(6.0%),判定保留を含む感染率は6/50(12.0%)と高率であった。前群の感染率は17.6%と高率であったが,後群では感染率は0%であった。結核病棟勤務期間(月数)とQFT値の問には相関関係は認めなかった。〔考案〕結核感染率は前群においては高率であったが,後群では0%であり,当院の感染防止マニュアルが結核感染防止に有用であったことが証明された。
  • 大森 正子, 吉山 崇, 石川 信克
    2008 年 83 巻 4 号 p. 365-377
    発行日: 2008/04/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    〔目的〕結核制圧に向けた結核対策の今後のあり方を検討するために,全結核罹患率,喀痰塗抹陽性肺結核罹患率の将来予測を行った。〔資料と方法〕「結核の統計」ならびに結核発生動向調査年報を使用した。人口は人口問題研究所推計による中位推計人口を用い,将来予測は基本的には過去の性・年齢5歳階級別罹患率の傾向が今後も継続するとの仮定で2030年まで5年間隔で行った。まず結核罹患数を求め,それに種々の要因を性・年齢階級別に乗じることで喀痰塗抹陽性肺結核罹患数を求めた。将来推計は,罹患率減少速度の計算方法によりモデルAとモデルBを設定し,サブモデルとして2種類の観察期間を組み合わせた。〔結果〕2030年の全結核罹患率は,モデルA4で9.8,モデルA-2で5.4,モデルB-1で75,モデルB.2で3.2であった。喀痰塗抹陽性肺結核罹患率では,それぞれ5.5,3.0,4.2,1.7であった。〔考察〕中位推計にあたるミックスモデルから罹患率が低蔓延化(人口10万対10以下)するのは2020年頃と推計された。この頃結核患者は年間約1.2万人発生するが,超高齢者へ偏在化する一方20歳代から50歳代の患者への偏りもみられ,診断・治療・感染者への対応など課題も多様化すると予想される。
  • 接触者健診への応用の可能性について
    長嶺 路子, 大森 正子, 永井 恵, 深澤 啓治, 神楽岡 澄, 辰己 由里子, 大角 晃弘, 村瀬 良朗, 和田 雅子, 内村 和広, ...
    2008 年 83 巻 4 号 p. 379-386
    発行日: 2008/04/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    〔目的〕RFLP分析結果から結核菌の感染状況を推定し,より効率的な接触者健診への有効活用の可能性について検討する。〔方法〕2002年9月から2006年8月に,新宿区に新たに登録された結核患者から分離培養された結核菌402人分389株についてRFLP分析を実施した。〔結果〕形成されたクラスター数は46,患者は155人(1クラスター平均3.4人)であった(クラスター形成率:39.8%)。患者を一般,住所不定者,外国籍に分けると,一般患者のクラスター形成率34.5%に対し,住所不定者のクラスター形成は57.8%と高かった(オッズ比:2.6,95%CI;1.6-4.1,p<0.001)。一方,外国籍のクラスター形成率は194%と低かった(オッズ比:05,95%CI;0.2-1,2,p=0.090)。46クラスターのうち28クラスター(60.9%)は一般,住所不定者,外国籍のいずれかが混在していた。RFLP分析により患者調査からは分からなかった感染経路が判明し,接触者健診拡大につながった例もあった。〔考察〕住所不定者のクラスター形成率は有意に高く,この中での濃厚な感染が推測されるが一般患者と混在するクラスターも多く感染状況は単純でない。RFLP分析で感染経路が判明し接触者健診に有効活用された事例から,広域的な地域で本分析法を実施し,確実な接触者健診の実施が重要と考えられた。
  • 川田 博, 山里 将也, 篠沢 陽子, 鈴木 喜久雄, 大谷 すみれ, 根本 逸夫, 宮入 守
    2008 年 83 巻 4 号 p. 387-391
    発行日: 2008/04/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    〔目的〕肺結核の感染源は,咳嗽時のエアゾルが大気中で瞬時に乾燥した飛沫核と考えられている。一方,健常者の安静呼気中にもエアゾルは存在する。しかしながら,肺結核患者の安静換気時の呼気中に,結核菌を含むエアゾルが含まれているか否かを検討した報告はみられていない。今回塗抹陽性肺結核の安静呼気エアゾル中の結核菌について検討した。〔方法〕事前に基礎的検討を行い,蒸留水の結核菌浮遊液は,生理食塩水の結核菌浮遊液よりも遠心操作後の集菌効率が優れていることを確認した。そこで肺結核患者の安静呼気を30分間蒸留水にくぐらせ"呼気洗浄液"を作成し,遠心後の底部を検体とした。さらに10分間安静呼気を呼気凝縮器に通し,安静呼気凝縮液を採取した。24例の塗抹陽性肺結核患者を対象に,呼気洗浄液20検体および呼気凝縮液24検体の結核菌を検討した。〔結果と考察〕いずれの検体においても,塗抹,培養,結核菌同定DNAはすべて陰性であった。肺結核患者の呼吸運動に由来する安静呼気エアゾルが感染源となる可能性は低いと考えられた。
  • 新妻 一直, 斎藤 美和子
    2008 年 83 巻 4 号 p. 393-397
    発行日: 2008/04/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    結核性咽因後膿瘍の1例を報告する。症例は89歳の女性。頸部の腫脹,喉のつまり感,呼吸困難感を訴えて当院受診。頸部腫瘤部の試験穿刺で抗酸菌染色陽性の膿汁を認め,結核性咽後膿瘍を疑われて同日入院となった。現症として,右咽頭後部から口腔内に向かって粘膜の圧俳突出がみられ,頸部では右顎下部,左鎖骨上窩にピンポン玉大の軟,圧痛・熱感を伴わない腫瘤を触知した。頸部造影CT像では下咽頭後間隙に膿瘍を認め,強く造影される壁に囲まれたLDAとして描出されていた。第2頸椎で左右に膿瘍が分離し,下方に行くにしたがって左頸郎に優位に描出され,第6頸椎から第2胸椎にて椎体の骨破壊像と椎前隙での多数の小膿瘍が認められた。胸部画像はrIII2を示唆されたが,喀痰塗抹検査は(-)であった。膿瘍穿刺液でTB-PCR(+)と判明したため,結核性咽後膿瘍と診断しINH+RFP+SMにて治療開始した。入院経過中,窒息感・呼吸困難感の増強によりCTガイド下にて2回の頸部膿瘍穿刺(21G穿刺針)を施行し,100ml,80mlを排液した。その後症状は軽減し,膿瘍の再貯留はみられず,退院となった。9カ月間の治療により再発は認められていない。
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