〔目的〕RFLP分析結果から結核菌の感染状況を推定し,より効率的な接触者健診への有効活用の可能性について検討する。〔方法〕2002年9月から2006年8月に,新宿区に新たに登録された結核患者から分離培養された結核菌402人分389株についてRFLP分析を実施した。〔結果〕形成されたクラスター数は46,患者は155人(1クラスター平均3.4人)であった(クラスター形成率:39.8%)。患者を一般,住所不定者,外国籍に分けると,一般患者のクラスター形成率34.5%に対し,住所不定者のクラスター形成は57.8%と高かった(オッズ比:2.6,95%CI;1.6-4.1,p<0.001)。一方,外国籍のクラスター形成率は194%と低かった(オッズ比:05,95%CI;0.2-1,2,p=0.090)。46クラスターのうち28クラスター(60.9%)は一般,住所不定者,外国籍のいずれかが混在していた。RFLP分析により患者調査からは分からなかった感染経路が判明し,接触者健診拡大につながった例もあった。〔考察〕住所不定者のクラスター形成率は有意に高く,この中での濃厚な感染が推測されるが一般患者と混在するクラスターも多く感染状況は単純でない。RFLP分析で感染経路が判明し接触者健診に有効活用された事例から,広域的な地域で本分析法を実施し,確実な接触者健診の実施が重要と考えられた。
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