〔目的〕結核症例の排菌停止までの期間を調べ,入院期間を決定する要因について検討を行った。〔研究対象〕1996年1月1日より2003年12月31日までの8年間に,旧国立療養所神奈川病院(現,独立行政法人国立病院機構神奈川病院)結核病棟に入院した確実診断例1260例を研究対象とした。〔結果〕入院時大量排菌例(塗抹検査G9~10)の排菌停止までの期間は3カ月(median),[3.9カ月(mean)],培養3+の時には2カ月(median),[2.8カ月(mean)]であった。学会分類I+II3では3カ月(median),[2.8カ月(mean)]であった。薬剤感受性試験で何らかの薬剤に耐性を示す時には2カ月(median),[2.2カ月(mean)],多剤耐性では4カ月(median),[5カ月(mean)]であった。年齢,性別を調整した多重比例ハザードモデルに基づく退院エンドポイントに対する要因別では性別,慢性腎不全,アルコール依存症の合併を除く他の要因はすべて有意差を認め,とりわけ入院時塗抹,培養排菌量,薬剤感受性試験成績,胸部X線上の空洞病変は関与の強い要因であった。〔考案ならびに結論〕入院時大量排菌例,薬剤耐性例,空洞病変のある時には,排菌停止までに2カ月以上を要する。結核撲滅のゴールに到達するためには適切な治療を行って,感染源となる症例を1例でも減らしていくことである。今日結核入院にも「在院日数短縮」の考えが取り入れられているが,結核入院の目的のひとつである「感染性の回避」のためにも,入院期間は慎重に決定されるべきである。
抄録全体を表示