1. 昭和43年4月16日から同年7月5日にかけて青森市奥内地先においてホタテガイ浮遊幼生の出現状況および採苗器を時期別, 場所別, 水深別に投入して付着稚貝の状況を調査し, これらの関係を検討した。
2. 浮遊幼生の出現状況は時期的には4月16日が多く4月30日が少なかった。場所的には調査点3が多く1が少なかった。水深別では2m層が極端に少なくその他の水深は時期別調査点別に異なっており, はっきりした傾向はなかった。
3. 浮遊幼生の大きさは調査した時点で異なっていたが, 4月25日にはいわゆる成熟幼生 (Full-grown Larvae) の出現が多かった。浮遊幼生の出現量は多い時である水深で1m
3当り400個程度であった。
4. 付着時期は4月20日から4月30日にかけて盛んであり, とくに4月25日前後がその最盛期であったと思われる。ホタテガイの付着時期は従来考えられていたものより短かく, したがって付着盛期を見定めることが付着効率を高める一つのポイントになるのではないだろうかと推察した。
5. 付着時の稚貝の大きさは, 外縁部のChonchiolineの内側を測定した結果, 殻長280-360μの範囲におよび300-340μがその67%を占めていた。
6. 付着器材による付着数の比較は, 杉の葉およびハイゼックス・フィルムで調査した結果杉の葉の方がよく, 付着器材の入手の容易さ, 稚貝採取後の処理, 経費等の点から杉の葉が一般的であろう。
7. 時期別の付着量では, いずれの調査点でも4月25日に投入したものがよく, 調査点では3から2にかけてよく, この地先では沖側の北側がよかった。
8. 浮遊幼生の殻長組成が220μを越える部分が多くなった時に採苗器を投入した場合には付着成績がよかった。
9. 水深別の付着量は浮遊幼生の出現状況同様どの層が多いかは判然としなかった。
10. 昭和43年度の奥内地先の付着稚貝の成長は昭和42年にくらべて悪く, これは水温に影響されているのではないかと推察した。
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