1. 需要に適応した供給をすることが消費者は勿論のこと生産者にとっても最も望ましいことである。そのために最近かん水養殖並び蓄養が盛んになってきたが, 瀬戸内海では特にハマチとフグの養殖, 蓄養が注目されているので, この中フグ蓄養に関し現況を紹介し, 更に将来の発展性について述べた。
2. フグ蓄養に使用されている種苗の数量は昭和33年, 7ヵ所で約3万尾, その大きさは200匁-15,000匁, 平均500匁である。
3. フグの種苗運搬の方法は今のところ, 多くは口唇を木綿糸また針金で縫合して活間に入れて輸送しているが, 斃死率は2,4-27.0%, 平均10%である。
4. 蓄養池の底質はフグの生態から見て泥質がよいようで, 厚さは15糎以上がよい。また池の水深は高温, 低温を防ぐために1.5米以上が望ましいが, また取り揚げ時には70糎位いまで落すことができるようにしたい。
5. 蓄養池の広さは種苗の入手可能量と単位面積当りの放養量から決められるが, 標準として1m
2に1.1kgとして15,000m
2が限度であろう。
6. 蓄養中の投餌量は蓄養期間が5月-翌年1月として体重の3-5倍が適当であろう。
7. フグの取り揚げは11月から2月であるが特に12月中旬から1月末が多い。
8. フグ蓄養の支出の主なるものは造池費を除くと種苗代と餌代であるから, これらの入手経路を良く調べること。また, 販売先は大都市市場が主となるからこの両者に都合のよい位置の撰択が経営の基礎であろう。
9. 瀬戸内海におけるフグ蓄養の将来を考察するに, 現在漁獲されているフグを基にするならば蓄養の限度は約3倍までは可能であろう。しかし, 将来春や秋に多獲されるフグ稚魚 (30-100g) を養成する事業が可能となるならば, 更に大きく発展することであろうが, これには猶研究の余地が残されている。また, これと同時に人工採苗も将来の問題であろう。
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