水産増殖
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57 巻, 4 号
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原著論文
  • 中島 祥, 山本 淳
    2009 年 57 巻 4 号 p. 525-530
    発行日: 2009/12/20
    公開日: 2012/09/26
    ジャーナル フリー
    近年の遺伝子診断の発達に伴い,Anisakis I型幼虫は1種類ではなく様々な同胞種で構成されており,少なくともA. simplex sensu stricto,A. pegreffiiA. simplex C,A. ziphidarumA. typicaの5種が存在することが知られている。しかし,これらの同胞種の日本近海における地理的分布や疫学については知見が少ない。
    このため,日本近海(東シナ海)と南シナ海(中国,フィリピン)のAnisakis I 型幼虫をrDNAのITS1-5.8S rRNA-ITS2領域におけるPCR-RELP法を用いた分子生物学的特徴の点から識別し,地理的分布を調査したところ,A. simplex sensu stricto,A. pegreffii,hybrid genotype,A. typica-like larvaeの存在を確認した。A. typica-like larvaeについては,さらにITS領域のシークエンスを行い,A. typicaであることを確認したが,塩基配列にわずかな相違が認められた。また,アニサキス症患者から得られたAnisakis I 型幼虫は,A. simplex sensu strictoであった。
  • 森田 晃央, 土橋 靖史, 奥村 宏征, 倉島 彰, 前川 行幸
    2009 年 57 巻 4 号 p. 531-540
    発行日: 2009/12/20
    公開日: 2012/09/26
    ジャーナル フリー
    本研究では,屋外のメソコスム水槽にて一年生および多年生アマモの種子形成とラフティングを調査し,英虞湾におけるアマモ群落の繁殖戦略を検討した。一年生アマモのほとんどの花穂で種子形成が認められたが,多くの生殖株で種子放出までにラフティングが観察された。一方の多年生アマモでは,全ての花穂から種子が放出し花穂基部から花穂が脱落した。さらに,一年生アマモの成熟指数は,上部のユニットで高く下部ユニットで低い傾向となった。一方で多年生アマモの成熟指数は,上部のユニットで低く下部ユニットで高い傾向を示した。また,メソコスム水槽で得られたデータから,一年生アマモ群落の種子形成数は7286粒/m2であり,群落外へ88%流出し群落内に12%落下し,多年生アマモ群落の種子形成数は4100粒/m2で,全ての種子が群落内に落下した。
  • 森田 晃央, 前川 陽一, 内田 誠, 倉島 彰, 前川 行幸
    2009 年 57 巻 4 号 p. 541-548
    発行日: 2009/12/20
    公開日: 2012/09/26
    ジャーナル フリー
    生育水深と光環境がワカメおよびアオワカメ幼胞子体の生長に及ぼす影響を調べた。まず,紫外線強度が異なる条件下でそれぞれの幼胞子体を培養し,ワカメがアオワカメより高い紫外線耐性を持つことが分かった。また,沿岸域の各水深における紫外線強度からアオワカメ幼胞子体の紫外線耐性は,0.29 W/m2 以下であり,水深 5 m 付近に相当した。これらの紫外線強度と耐性からアオワカメは 4 m 以浅で生育することが難しく,ワカメとの分布域の違いに関与することが示唆された。
  • 村上 香, 的場 由美子, 野田 耕作, 山口 容子, 藤井 高任, 篠原 直哉, 秋本 恒基, 片山(須川) 洋子, 片山 眞之
    2009 年 57 巻 4 号 p. 549-556
    発行日: 2009/12/20
    公開日: 2012/09/26
    ジャーナル フリー
    海藻アカモクを食用として普及させるには,その生長・成熟と栄養成分の季節変動とそれらの関係の知見を得て,適切な採取時期や方法を知ることが必要である。そこで,本研究ではアカモク原藻の未成熟株・雄株・雌株について月ごとの水分,タンパク質,脂質,灰分,炭水化物および総食物繊維の含有量を測定した。水分量は12月から6月まで約90%であった。全期間の平均値は,タンパク質量は1.1%,脂質量は0.05%,灰分量は3.1%,炭水化物量は7.8%,総食物繊維量は5.7%であった。これらの結果より,アカモクは他の食用海藻と同様またはそれ以上に食物繊維およびミネラルの供給源として期待できる。また,生殖器床の形成以降流出までは,総食物繊維とミネラルの含有量が多く,この時期は藻体も大きく重量もあるため食用資源として活用に適していることがわかった。
  • 丹羽 健太郎, 青野 英明, 澤辺 智雄
    2009 年 57 巻 4 号 p. 557-565
    発行日: 2009/12/20
    公開日: 2012/09/26
    ジャーナル フリー
    本研究ではクロアワビの消化酵素の多様性を定量的に測定し,活性の高い多糖分解酵素の単離精製と主要性状を明らかにした。クロアワビの消化管内容液および消化盲嚢ホモジネートから脂質,タンパク質,糖質代謝酵素が検出され,その中でアルギン酸リアーゼ,セルラーゼおよびマンナナーゼの活性が高かった。これら3種の酵素を単離精製し,酵素化学的特性を調べたところ,精製酵素の分子量はそれぞれ27.5,64.6,38.1 kDaで,至適pHは7.0,5.0,5.0,至適温度は40,40,55°Cであった。
  • 城野 草平
    2009 年 57 巻 4 号 p. 567-577
    発行日: 2009/12/20
    公開日: 2012/09/26
    ジャーナル フリー
    1987年から89年にかけてチロエ島東部海域においてチリウニ Loxechinus albus の稚ウニの分布を潜水と貝類養殖施設調査により調べた。天然海域では Linao において1989年2月に38.5個体/m2 の稚ウニの生息が観察された。稚ウニの大きさは殻径2.8-7.8 mm であった。稚ウニの分布域は半島先端部の潮通しのよい水深 6 m 以浅で,海底は玉石または岩盤で貝殻片や砂利が認められた。一方,Linao と Hueihue のカキ養殖連でも稚ウニが認められた。特に Linao では1988年12月に平均殻径3.5 mm の稚ウニ54万個体の付着が観察された。Pilumnoides perlatusCancer setosus の稚カニによるチリウニの食害が示唆された。稚ウニの生態から漁場形成の仕組みが議論された。
  • 伊藤 龍星, 寺脇 利信, サトイト シリル グレン , 北村 等
    2009 年 57 巻 4 号 p. 579-585
    発行日: 2009/12/20
    公開日: 2012/09/26
    ジャーナル フリー
    ヒジキ付着器を構成する繊維状根の茎形成能を利用した人工種苗生産の方法を開発するため,2007年4月下旬,収穫後の養殖ロープに残ったヒジキの付着器を採取し,ほどいて1本ずつの繊維状根とし,培養液で洗浄した。繊維状根の保存に適する光量,繊維状根からの茎形成と生長に適する温度と光量,繊維状根の適切な切断幅を調べた。繊維状根の保存には12°C,25μmol/m2/s,光周期12L:12Dが好適であった。茎形成とその生長には23°C,120~230μmol/m2/s ,光周期12L:12Dが適していた。切断から40日後には,茎形成率は85%,幼体の平均全長は約 5 mm に達した。繊維状根を2.5 mm 幅以下に細かく切断することで,5mm 以上の切断幅よりも約3倍多くの茎が得られることがわかった。これらの結果から,繊維状根の細断によるヒジキ人工種苗生産の可能性が示唆された。
  • 田中 庸介, 久門 一紀, 西 明文, 江場 岳史, 二階堂 英城, 塩澤 聡
    2009 年 57 巻 4 号 p. 587-593
    発行日: 2009/12/20
    公開日: 2012/09/26
    ジャーナル フリー
    異なる水流条件を施したクロマグロ種苗生産水槽(底面積19 m2,容量50 m3)において,飼育仔魚の沈降実態を調べるために潜水観察を行った。仔魚の沈降防止のために夜間に強通気を施した水槽(水槽1)と昼夜通して弱通気を施した水槽(水槽2)を設定した。各水槽において日齢2から8まで23時に潜水し,コドラートを用いて沈降している仔魚の数を計数した。水槽1では,沈降している仔魚の平均密度(個体数/0.01 m2, n=9)は2.44/0.01 m2以下であったのに対し,水槽2では水槽1より有意に高く,日齢5にピークが認められた(15.6/0.01 m2)。両水槽における生残率に顕著な差は認められなかったが,本研究の結果から,通気による飼育水の攪拌が水槽底面への仔魚の沈降個体数を減少させることが明らかとなった。
  • 栩野 元秀, 長野 泰三, 佐藤 秀一, 白鳥 勝, 植田 豊
    2009 年 57 巻 4 号 p. 595-600
    発行日: 2009/12/20
    公開日: 2012/09/26
    ジャーナル フリー
    低魚粉飼料にタウリンを添加することの有効性を,養殖現場のブリ1歳魚で検証した。大豆油粕,コーングルテンミールを用いて魚粉含量が異なる EP 飼料を作製した。魚粉含量20%(タウリンを0.5%添加),30%,50%(対照)の3種類の試験飼料は同じ粗タンパク質,粗脂質に設計された。供試ブリ(尾叉長48 cm,体重1.8 kg,各区3,300尾)は養殖生簀(10×10×3.5 m 深さ)で試験飼料を給餌され,高水温期の3~4ヶ月間飼育された。どの飼料も活発に摂餌され,3ヶ月後の成長には統計的に有意な差は認められなかった。血液成分を比較すると,血中の間接ビリルビン値が,低魚粉のものほど高い値を示したが,その上昇量はわずかで,ブリを無魚粉や低魚粉の飼料で飼育した場合に見られる,緑肝を示す個体も観察されなかった。以上のことから低魚粉飼料へのタウリン添加の有効性がブリ養殖現場において確認された。
  • 三根 崇幸, 田中 重光, 川村 嘉応, 小林 元太, 神田 康三
    2009 年 57 巻 4 号 p. 601-608
    発行日: 2009/12/20
    公開日: 2012/09/26
    ジャーナル フリー
    有明海のスミノリ病ノリ葉体から分離・保存していた細菌4菌株(1985,2002,2003および2004年分離)について,病原性の確認と細菌種の同定を行った。その結果,4菌株とも同様に本病の症状を引き起こしたものの,1985年分離菌株は Arthrobacter tumbae であり,他の3菌株は Gaetbulibacter saemankumensis と同定された。また,原因菌の定量検出では,G. saemankumensis が近年の正常養殖ノリ葉体から検出されたのに対し,A. tumbae は検出されなかった。一方,スミノリ病原細菌に対するノリ葉体の感受性が,生育ノリの生理状態の悪化に伴い上昇することから,本病の発生にはノリの生理状態も大きく影響することが明らかとなった。以上の結果から,スミノリ病の発生要因は多様性を有することが強く示唆された。
  • Uriel Rodriguez-Estrada , 佐藤 秀一, 芳賀 穣, 伏見 浩, John Sweetman
    2009 年 57 巻 4 号 p. 609-617
    発行日: 2009/12/20
    公開日: 2012/09/26
    ジャーナル フリー
    ニジマスの成長および免疫能に対する各種プロバイオティクスおよびプレバイオティクスの添加効果を検討した。平均体重13.2 g のニジマスに乳酸菌 Enterococcus faecalis(E)1%,マンナンオリゴ糖(M)0.4%,およびポリ水酸化酪酸(P)1%を単独または組み合わせて添加した7種類の飼料を与えて12週間飼育した。M および E を添加した飼料区で成長および増肉係数が有意に優れるとともに,ヘマトクリット値,マクロファージ活性,単位面積当たりの皮膚の粘液量の有意な増加が見られた(P<0.05)。さらに,Vibrio anguillarum による攻撃試験後の生残率は,E および M を添加した飼料区で有意に高かった。以上より,ニジマスの成長および免疫能に及ぼす E および M 添加の有効性が示唆された。
短報
資料
  • 渡辺 研一, 太田 健吾
    2009 年 57 巻 4 号 p. 627-630
    発行日: 2009/12/20
    公開日: 2012/09/26
    ジャーナル フリー
    マダイとヒラメの耳石と鱗を,アリザリンコンプレクソン(ALC)を用いて効率的に標識する方法について検討した。ALC を溶解して魚を浸漬する海水として Herbst 処方の人工海水を用いたところ,マダイでは同等の蛍光強度を得るのに必要な濃度は,ろ過海水の1/10であった。ヒラメでも同濃度の ALC 溶液に浸漬したところ,人工海水を用いた場合に耳石の蛍光強度が明らかに強く,鱗ではろ過海水で観察されなかったのに対して人工海水では蛍光が観察できた。以上のことから,ALC を用いる場合においては,人工海水を使用することにより効率的に標識できると考えられた。
  • 池田 譲, 今井 秀行, 杉本 親要, 大島 陽太
    2009 年 57 巻 4 号 p. 631-634
    発行日: 2009/12/20
    公開日: 2012/09/26
    ジャーナル フリー
    沖縄島沿岸より夏季に採集された,ジンドウイカ科イカ類が産出したと思われる特徴的な卵嚢について記載した。この卵嚢は1房当たり卵子3個を均等に収容し,数百房が纏まって定置網に産み付けられていた。形状は収容卵子数が少ないことと長さが短いことを除き,アオリイカ卵嚢と類似していた。この卵嚢より孵化した幼体のアイソザイムを分析したところ,本卵嚢はアオリイカ由来のものであることが明らかとなった。
  • 高瀬 智洋, 田中 優平, 樋口 聡, 小泉 正行
    2009 年 57 巻 4 号 p. 635-638
    発行日: 2009/12/20
    公開日: 2012/09/26
    ジャーナル フリー
    八丈島における南方系アワビ類イボアナゴの産卵期を,その生殖巣の外観の肉眼観察により調査した。採集した計888個体は,その生殖巣の外観的な色調から,315個体が雄に,208個体が雌に,365個体が判別不能に分類された。時期別にみると,4月頃から雌雄判別の可能な個体が増加し,8~11月にはほぼすべての個体について雌雄判別が可能で,雌雄判別率は90%以上となった。その後,低下し,2~3月ではすべての個体について雌雄判別は不能で,判別率0%となった。また,8~10月には,生殖巣の中央部が丸く突出し殻からはみ出るような完熟と思われる個体がみられたが,11月には,雌雄の判別はできるものの,多くは生殖巣が委縮していた。これらのことから,本種の産卵は,概ね8月から始まり,11月には産卵をほぼ終えるものと推定された。八丈島におけるフクトコブシの産卵期と比較したところ,両種の産卵期は重複する可能性があると推定された。
  • 岩本 有司, 三代 和樹, 森田 拓真, 上村 泰洋, 水野 健一郎, 海野 徹也, 小路 淳
    2009 年 57 巻 4 号 p. 639-643
    発行日: 2009/12/20
    公開日: 2012/09/26
    ジャーナル フリー
    広島湾北部の砂浜海岸11ヶ所おいて小型曳き網による魚類採集を2006年10月から2007年9月まで月1回の頻度で実施し,28種以上,合計2,137個体の魚類を採集した。11定点の平均水温は12.1°C(2月)から28.9°C(9月)の間で,塩分は21.8(9月)から29.7の間でそれぞれ変動した。採集された魚類の合計種数は3種(4月)から13種(7月)の間で,1曳網あたり個体密度は1.4(1月および9月)から67.8(6月)の間で変動した。個体数における優占10種(%)は,クロダイ(30.3%),ビリンゴ(28.5%),トウゴロウイワシ(13.2%),クサフグ(7.2%),キチヌ(5.9%),スズキ(5.2%),セスジボラ(2.9%),ニクハゼ(1.3%),ヒメハゼ(0.9%),アユ(0.5%)であった。瀬戸内海の他海域(大阪湾,燧灘)における過去の調査結果と同様に,広島湾においても砂浜海岸に出現する仔稚魚の種数および個体数が夏期に増加し冬期に減少するという季節変動パターンが認められた。
  • 山元 憲一
    2009 年 57 巻 4 号 p. 645-670
    発行日: 2009/12/20
    公開日: 2012/09/29
    ジャーナル フリー
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