水産増殖
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原著論文
  • 村山 史康, 草加 耕司, 東畑 顕, 石田 典子
    2020 年 68 巻 3 号 p. 199-210
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/20
    ジャーナル フリー
    ヒラ資源の有効活用を目的として,生殖腺重量比による産卵期の推定を行うとともに,筋肉中の一般成分,遊離アミノ酸および味覚センサ分析に基づく呈味の季節変化を調べた。その結果,産卵期は6~8月と推定された。また,粗脂肪量は冬季に,遊離アミノ酸総量は春季と秋季に高い値を示し,有意な季節変化が認められた。味覚センサ分析において,旨味先味は秋季にあたる10月,旨味後味は春季にあたる4月に最高値を示し,官能評価の結果と一致していた。これらの結果を用いて主成分分析を行ったところ,春季と秋季は遊離アミノ酸が増加していたため旨味が強くなり,冬季は呈味の発現を増強する「脂肪味」が加わったため呈味が濃厚になったと推察された。一方,夏季は産卵によって筋肉中の粗脂肪および遊離アミノ酸を消費したため,あっさりとした呈味になったと考えられた。
  • 山本 剛史, 松成 宏之, 古板 博文, 三浦 正之, 小澤 諒, 岡崎 巧, 奥 宏海, 村下 幸司, 吉永 葉月
    2020 年 68 巻 3 号 p. 211-220
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/20
    ジャーナル フリー
    魚粉65%の飼料(FMD)を対照として,植物性原料の配合により魚粉を5%に削減した低魚粉飼料(LFMD)でニジマス浮上稚魚(対照群と低魚粉飼料選抜群,体重0.1 g)を餌付けして3週間飼育し,成長,生残および全魚体成分に及ぼす影響を検討した。両飼料とも対照群に比べ選抜群の成長がやや優れる傾向がみられたが,LFMD 区の成長は FMD 区より劣った。一方,生残率は各区とも99%と高かった。全魚体の粗タンパク質含量に差はなかったが,LFMD 区ではタウリンと遊離ヒスチジンが少なく,アンセリンとカルノシンが多かった。粗脂肪および極性脂質含量にも差はなかったが,極性脂質の EPA と DHA は LFMD 区で少なかった。一方,LFMD 区では灰分,Ca,P および Zn の含量が低かった。今回の結果から,植物性原料主体の低魚粉飼料でのニジマスの餌付けは可能であるが,いくつかの栄養素を強化する必要性が示唆された。
  • 高木 基裕, 後藤 卓哉, 菅谷 琢磨, 浜野 かおる
    2020 年 68 巻 3 号 p. 221-234
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/20
    ジャーナル フリー
    クルマエビの種苗生産に用いる交配済みの野生のクルマエビの雌は容易に入手できないため,ウイルスの影響の少ない人工種苗と親エビの養成が行われているが,人工飼育下におけるクルマエビの繁殖システムは詳細に調べられていない。本研究では,クルマエビの脱皮殻と精莢を用いマイクロサテライト DNA 多型解析を行い個体識別することで人工飼育下におけるクルマエビの繁殖生態の一端を明らかにした。4つのタンクで行われた飼育試験において,脱皮間隔は20-40日であり雌雄差はなく,雌の脱皮殻の57%-77%に交尾栓および精莢がみられた。また,雌の脱皮間隔は,精莢の有無による影響はみられなかった。オスとメスが同じ個体だけでなく異なる個体とも交尾しており,クルマエビにおける複数父性の存在が明らかとなった。
  • 天谷 貴史, 村田 良介, 征矢野 清
    2020 年 68 巻 3 号 p. 235-242
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/20
    ジャーナル フリー
    沖縄地方では重要な漁業対象種とされているカンモンハタの産卵特性を,雄4と雌20尾または雄6尾と雌22尾による飼育による集団産卵と雌雄1尾ずつ飼育によるペア産卵によって調べた。集団産卵では,満月の3日後あるいは4日後より数日間にわたって産卵が確認された。しかしペア産卵の結果,産卵の開始日は個体によって異なっている(満月の3日後から6日後)ことがわかった。ペア産卵群では4日間連続して放卵された卵が確認された。1尾の雌の産卵量は,1日あたり2,000粒から7,000粒であったが,4日目には急減した。浮上卵率,受精率,孵化率は産卵開始から3日目までは高かったが,4日目のそれらは極めて低かった。以上の結果より,本種の産卵は満月の3日目より開始され,1尾の雌が4日間連続で産卵するが,実質的な産卵は3日間であることがわかった。
  • 酒井 明久, 三枝 仁, 田口 貴史, 臼杵 崇広, 上垣 雅史, 石崎 大介, 根本 守仁
    2020 年 68 巻 3 号 p. 243-251
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/20
    ジャーナル フリー
    琵琶湖南湖におけるブルーギル生息量の動態について,2009-2018年を対象に調べた。毎年4-7月の小型定置網によるブルーギル CPUE は,1.9-30.2 kg / 統・日の範囲で大きく変動した。重回帰分析によると,ブルーギル CPUE の変動に対して,オオクチバス CPUE がマイナス要因,沈水植物群落現存量を反映する前年の透明度がプラス要因として検出された。ブルーギル生息量の変動には,小型魚の隠れ家となる沈水植物群落の消長と,捕食者としてのオオクチバス生息量がそれぞれ関わっていることが明らかとなった。また,ブルーギル当歳魚の秋のサイズ組成や栄養状態には年による変動が認められたことから,これらと冬の減耗との関係を明らかにする必要がある。
  • 中村 智幸
    2020 年 68 巻 3 号 p. 253-261
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/20
    ジャーナル フリー
    内水面5魚種(アユ,イワナ,ヤマメ・アマゴ,ニジマス,ワカサギ)の釣り人の遊漁料納付の実態をインターネットアンケートにより調査した。5魚種の釣り人の遊漁料納付必要の認識率は男性89.5%,女性65.0%であり,女性の方が低かった。遊漁料の納付率は男性74.8%,女性52.5%で女性の方が低く,男性ではおよそ4人に1人,女性ではおよそ2人に1人が遊漁料を納付していなかった。データ数が多い男性についてみると,納付必要の認識率は40代以降の釣り人より30代までの釣り人の方が低かった。納付率では年代が進むほど高くなる傾向が認められた。納付必要の認識率,納付率ともに,男性の魚種別の釣り人の間で有意差はなかった。男性の釣り人の遊漁料未納付の理由の上位2つは,「自然の川や湖で釣りをするのに料金を支払わなければならない理由がわからない」と「遊漁料納付というルールがあることを知らなかった」であった。
  • 松本 洋典
    2020 年 68 巻 3 号 p. 263-274
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/20
    ジャーナル フリー
     島根半島沖におけるアカアマダイ資源動態および種苗放流効果を評価するための各種資源特性値を推定した。調査は2003年7月から2019年3月までの期間に,小伊津漁港に水揚げされたアカアマダイを対象に行われた。
     2015年7月から2018年11月の期間に同港に水揚げされた漁獲物から663尾が採集され,すべてのサンプルについて雌雄判別,全長,体重および生殖腺重量の計測のほか,耳石を用いた年齢齢査定が実施された。これにより産卵期が9月下旬を盛期として5月中旬から9月末までであること,漁獲物の年齢構成について雌が2~14歳,雄で2~16歳であることなどが明らかとなった。また,ベルタランフィの成長曲線について次式が算定された。
     雌:Lt = 346(1-exp-0.542(t+0.045)
     雄:Lt = 472(1-exp-0.328(t+0.134)
     さらに2006年4月から2019年3月までの銘柄別漁獲量記録をもとに,VPA の基礎資料となる,雌雄別全長組成を推定した。
短報
資料
  • Albert. V. Manuel, Thi Cam Tu Phan, 筒井 直昭, 吉松 隆夫
    2020 年 68 巻 3 号 p. 279-286
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/20
    ジャーナル フリー
    降雨後の海水域における水温や塩分の変化の影響を想定し,飼育水塩分の低下(34から24あるいは14 psu)とその暴露時間(1, 3あるいは6時間)が卵期のササウシノシタに与える効果について小規模な実験室実験で検討した。6回の繰り返しを設けた実験区において,プラスチックマイクロプレートを用いて各ウェルに78粒の正常な嚢胚期卵を収容したのち,管理水温を23から19℃に低下させながら塩分を徐々に設定条件に低下,所定時間経過後に初期条件(23℃,34 psu)に回復させ,その後の影響を調査した。その結果,ふ化までの所要時間は6時間の低塩分暴露によりいずれの区においても有意に長くなる傾向が認められた。各区のふ化率,ふ化仔魚の形態異常出現率,ふ化4日目における生残率には塩分と暴露時間の影響は認められず,さらにこれらによる相互作用も認められなかった。一方,ふ化時における各区のふ化仔魚の全長と卵黄嚢体積では両条件の変化による相互作用が認められたものの,ふ化仔魚の前肛門長とふ化4日目における全長では塩分と暴露時間の変化による影響がそれぞれ認められた。
  • 山本 昌幸, 棚田 教生, 元谷 剛
    2020 年 68 巻 3 号 p. 287-292
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/20
    ジャーナル フリー
    瀬戸内海播磨灘のアイゴの漁獲状況を明らかにするため,岡山県,香川県,徳島県における2004~2014年の漁獲量の年変動,2011~2014年の漁獲量の月別変動を調べた。3県の年変動の傾向は似ており,2011~2014年に漁獲が多く,特に2011年の漁獲量が高かった。本種は5月~12月に漁獲された。2011年の9月~11月における漁場の重心は,播磨灘西部(岡山県)から紀伊水道に近い播磨灘東部(徳島県)に移動した。冬の播磨灘の海水温は約8°Cとなり,本種はおそらく生存できない。これらのことから,本種は11~12月に越冬のため播磨灘から紀伊水道へ移動する可能性が示された。
  • 川辺 勝俊, 河野 博
    2020 年 68 巻 3 号 p. 293-299
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/20
    ジャーナル フリー
    アカハタ人工種苗における鼻孔隔皮欠損標識の有効性を検討するために,欠損個体の出現率と長期飼育における標識の持続性と成長・生残を検討した。10回行った種苗生産における稚魚の鼻孔隔皮欠損率は29.2~91.4%であったが,飼育環境水と S 型ワムシの栄養強化に SV12 を使用した生産事例では約90%であった。鼻孔隔皮欠損個体と正常な個体を満2歳まで飼育したところ,鼻孔隔皮欠損個体は長期追跡が可能であり,両者に成長と生残率の差は認められなかった。一方,アカハタの鼻孔隔皮は全長約12 mm までに完了し,この段階で鼻孔隔皮が形成途上の個体はその後も形成されないまま成長すると考えられた。以上のことから本種の人工種苗に発生した鼻孔隔皮欠損は放流効果調査に用いる標識として有効と考えられた。
  • 飯田 真也
    2020 年 68 巻 3 号 p. 301-307
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/20
    ジャーナル フリー
    資源評価の精度を高めるための基礎として,本州日本海側における全てのサケ捕獲河川で操業実態を調べた。捕獲が行われる66河川のうち,65%(43/66)が漁獲努力量の年変化が小さいウライ,35%(23/66)が漁獲努力量の年変化が大きい投網や引っ掛け釣り等(以下,その他の漁法)を使用していた。2014~2016年サケ河川捕獲数の合計に占めるその他の漁法で捕獲された個体の割合は本州日本海側全体では12.2%~15.7%と低かったが,県によって大きく異なった(範囲0%~30.4%)。その他の漁法の捕獲従事者は減少しており,その他の漁法による捕獲数に基づく評価はその河川に遡上したサケ資源を過小評価することが示唆された。
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