長崎県鰺曽根水域における1978年春季の, マダイ生殖腺の熟度および漁獲量と年令組成の旬別変化から, マダイの産卵について次のような結果を得た。
1) 成熟可能魚の平均生殖腺重量比は, 3~4月に雌で35~52, 雄で29~61, 成熟個体数の割合は雌雄とも3月下旬に100%となり, 雌の74%の個体で透明卵が認められた。また, 来遊群の漁獲量は3月下旬~4月下旬が盛漁期で, その年令組成は3月中旬から5月上旬にかけて, 4才以上が77%以上を占めた。
2) 鰺曽根水域は産卵場であることが確認され, 1978年の当水域における産卵期は3月上旬から5月上旬であり, その盛期は3月下旬~4月下旬と推察された。
3) 産卵期には生殖腺熟度の発達, 漁獲量の増大, および高令魚の増加が相関していることから, 生殖腺熟度の観察をすることなしに, 漁獲量および銘柄組成の変化によって, 産卵期, 産卵場が推定できると判断された。
4) 当水域における産卵期の水温および塩分は, それぞれ14~17℃, 34.6~34.7‰であった。産卵期は水温と密接に関連していることから, 毎年の産卵期の遅速は水温の変化により予測されると考えられる。
抄録全体を表示