東南アジア産淡水フグ Pao 属3種 P. abei,P. baileyi および P. suvattii の飼育下での繁殖を試み,既報の P. cochinchinensis,P. palembangensis および P. turgidus と比較した。これら6種はすべて一定の水温(25-27℃)及び日長条件 (L12D12)下の淡水で,平らな床のある土管や沈水性流木を産卵床とすることにより繁殖した。雄は数百個の卵径 2-3 mm の卵からなる一層の卵塊を保護した。それぞれの種で1ペアが1年のうちの2-7ヶ月の間に複数回産卵した。卵は7-10日でふ化し,Artemia 幼生を初期餌料として育てることができた。これらの知見は飼育下における淡水フグ類の繁殖技術向上に貢献するものと思われる。
本邦およびアジアにおける水産重要種アカハタの雌を用いて,周年に亘り卵巣の発達を調べるとともに,17βエストラジオール(E2)の血中濃度を調べた。また,水温と日長の操作が本種の卵巣発達と成熟に及ぼす影響を調べた。その結果,長崎近郊にて捕獲したアカハタにおいて水温が約20℃の5月に卵黄形成期の個体が出現し,その後水温が約25℃,明期14時間の7月には成熟卵を持つ個体が出現した。血中 E2 濃度は第3次卵黄球期の卵母細胞を持つ個体で高かった。冬季に日長を明期14時間とし,水温を約18℃から26℃に上昇させたところ,2.5ヶ月後には卵黄形成期の個体が出現し,4.5ヶ月後には第3次卵黄球期の卵母細胞が確認できた。E2 は26℃において第2次および3次卵黄球期の卵母細胞を持つ個体で高かった。以上,本種は成熟・産卵に適した環境操作を行うことによって,成熟を人為的に誘導できることが分かった。
クロマグロの卵管理に適した通気量を明らかにするため,卵発生に伴う卵比重の変化に関する知見を収集するとともに,異なる通気量がふ化に及ぼす影響を調べた。卵比重は,4細胞期から心臓拍動期までほとんど変化しなかったが,それ以降に急激に増加してふ化直前に最大となり,飼育海水よりも高い値となった。以上より,クロマグロ卵はふ化直前に沈下することが明らかになり,正常なふ化仔魚を効率良く得るためには適切な通気で飼育水を攪拌する必要性が示唆された。次に,異なる通気量で卵を管理した結果,無通気では形態異常率が増加する傾向が認められたが,0.3-0.9 l/min の範囲でふ化率が最も高く,形態異常率も低いことが明らかになった。他方,1.2 l/min 以上ではふ化率の低下とともに仔魚膜異常率の増加が認められ,ふ化直後の仔魚が強通気による物理的損傷により死亡し,結果としてふ化率が低下したものと考えられた。
サケ科魚類の遺伝的性を判別するマルチプレックス PCR 法を新規に開発した。サケ科魚類の性決定遺伝子 sdY 及び陽性対照として18S rRNA 遺伝子のユニバーサルプライマーを設計することにより,ニジマス,アマゴ,イワナの遺伝的性を同一の手法で高精度に判別することが可能であった。加えて,開発した手法は国内の養殖業において用いられているニジマス及びアマゴの偽雄や三倍体ニジマスの性判別にも応用可能であり,遺伝的性判別の結果が供試魚の機能的性や倍数性に依存しないことが示された。さらに本手法は,鰭,精子,血液からの粗抽出液を PCR の鋳型 DNA に用いることを特徴とし,延べ320検体中318検体において1回の解析で正確な PCR 結果が得られるなど,安定した性判別が可能であった。以上により本手法は,しばしば在来種を含む複数魚種や染色体操作魚を同時に飼育するサケ科魚類の養殖現場における,簡便,迅速,低コストな遺伝的性判別法としての応用が期待される。
京都府丹後半島沖において,耳石横断面の輪紋を基にハツメの年齢と成長の関係を調べた。耳石縁辺の観察により,輪紋は年1回形成されることが示された。輪紋数を基に年齢を推定したところ,最高齢は雌で10.50歳,雄で7.83歳であった。年齢 (t) と標準体長 (Lt) の関係を表すベルタランフィーの成長曲線は,雌が Lt = 223 {1 - exp [-0.26 (t + 0.23)]}で,雄が Lt = 166 {1 - exp [-0.40 (t + 0. 09)]}であった。標準体長の雌雄差は,2歳までは 5 mm 以下と小さかったが,3歳では雌の方が雄よりも 9 mm 大きく,その差は年齢とともに徐々に大きくなった。
本研究はサトウキビのバカス抽出物(SBE)を配合した飼料のサケ科魚類の成長促進に及ぼす効果を検討した。ニジマスとイワナに100,500及び1,000 mg の SBE/kg を配合した飼料を摂餌させると尾叉長及び体重は対照群よりも著しく増加した。SBE 配合飼料群の下垂体の成長ホルモン及び肝臓のインスリン様成長因子の発現レベルは,対照群よりも有意に高い値を示した。これらのことから SBE 配合飼料は,サケ科魚類の成長促進機構を活性化させ,結果として,成長が促進されると考えられる。
The diurnal change in photochemical efficiency of a seagrass, Enhalus acoroides was determined in Okinawa, Japan. The measurements under incident sunlight were conducted from sunrise through sunset using a submersible pulse amplitude modulation (PAM)-chlorophyll fluorometer (Diving-PAM). The effective quantum yield (ΔF/Fm’) declined with increasing incident sunlight in the morning, with a ΔF/Fm’ minima occurring during noon-time. Thereafter, the ΔF/Fm’ gradually recovered during the afternoon incident sunlight decreased, indicating a dynamic negative response to the excess sunlight. The decline of ΔF/Fm’ in the habitat is likely a photoprotective response to protect the photosynthetic reaction center from damage by excess light energy.
The present study aimed to provide accurate information on maturation and spawning season of green tiger prawn Penaeus semisulcatus in the Kii Channel based on ovarian histological observations. The observation showed that vitellogenesis began in April and ended in August. Based on the occurrence of cortical crypts (ripe oocyte), the spawning season of green tiger prawn lasted from June to August with the peak spawning of July in the Kii Channel.
This study aimed to evaluate the impact of the presence of probiotic Lactococcus lactis subsp. lactis strain K-C2 on the release of free amino acids from aquafeeds and gut microbiota in amberjack, Seriola dumerili and common carp, Cyprinus carpio. The addition of strain K-C2 to feeds significantly promoted the release of free amino acids within 3 h. The single feeding of feeds containing strain K-C2 changed predominant bacterial flora in the amberjack gut. This study showed that strain K-C2 promoted the release of free amino acids in a short time, and the microbiota in the amberjack gut was changed by a single feeding with strain K-C2.
イイダコの成長と繁殖期を明らかにするために,9 月から7月にかけて 3 l 容器を使用して13個体(体重:15 ~ 57 g)を個別飼育した。体重は,試験開始から2月にかけて徐々に増加し,その後,死亡するまで大幅に減少した。成長率は日齢に伴い減少し,3月下旬からはマイナスとなった。雌は2月から4月に卵を産み付け,卵は2 ~ 4か月後にふ化した。雄は主に5~6月の間に死亡したが,雌はふ化終了後,1 ~ 4週間後の主に7月下旬に死亡した。雌と雄の最大時体重の平均はそれぞれ60.8 g と57.2 g で,死亡時体重の平均はそれぞれ25.0 g と35.7 g であった。雄に比べて雌の方が,おそらく産卵によって,体重が大きく減少した。
本研究では新規ろ材の硝化作用の獲得に及ぼす添加するアンモニアの濃度と回数の影響を調べた。実験は25℃の人工海水中でセラミックスろ材1,000 g を用いて行った。1回目の実験では塩化アンモニウムの添加を全アンモニア態窒素濃度で10,40,70,100,130 mg-N/l となるように1回だけ行った。2回目の実験ではアンモニアの添加を10,20,30,40 mg-N/l となるように1回だけ行う区と全アンモニア態窒素が 0 mg-N/l になったときに添加を繰り返す区とした。添加後,全アンモニア態窒素と亜硝酸態窒素を7日ごとに測定した。熟成の成功は12週間以内に両者が検出されなくなることで判断した。アンモニアを20 mg-N/l 以下で1回だけ添加した実験は熟成に成功したが,他の条件は失敗することがあった。失敗実験の亜硝酸態窒素濃度は成功実験よりも高い傾向があった。よって,ろ材の熟成にはアンモニアを10 mg-N/l で1回だけ添加することを提案する。