水産増殖
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24 巻, 4 号
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  • 稚貝飼育について
    平本 義春
    1977 年24 巻4 号 p. 109-115
    発行日: 1977/03/25
    公開日: 2010/06/30
    ジャーナル フリー
    バイを用いて種苗の量産化技術を確立することを目的として, 陸上水槽で自然産卵によって得た卵を重量法により計数し, ふ出・稚貝飼育槽 (10トン角型コンクリート水槽・2面) に収容して, 稚貝の水槽側壁へのはい上がり防止については二, 三の工夫をこらし, 餌料はヒレグロとキシエビを用いて稚貝の飼育を行ない (1973年6月21日-8月10日), かなり安定して種苗を生産することができ, 種苗の量産化への可能性について若干の知見を得た。
    1) 測定した6種の飼育環境 (COD, 照度, pH, 溶存酸素飽和度, 比重および水温) のうちでは, 稚貝の水槽側壁へのはい上がり防止のために照度を下げたことが歩留りの向上にかなり良い結果を与えているものと考える。また水温は28℃以上になると摂餌量が低下することから, 稚貝の飼育環境としては28℃以下が良いものと考えられた。
    2) ヒレグロとキシエビを50%ずつ混合した餌料は, 稚貝にとって有効な餌料と考えられた。日間給餌量は1日目が1g/m2, 10日目が5-7g/m2, 20日目が10g/m2, 30日目が15-20g/m2であった。
    3) 稚貝の水槽側壁へのはい上がりは照度を下げることによってかなり防止することができ, また水槽側壁の水面上へのはい上がりは水表面との境界面にウェット・スーツ地をはり付けることおよび水面上へはい上がって乾いて死亡することは, 穴を開けた塩ビ管を水槽側壁の水面上約20cmのところに配管して, その穴から給水を行ない側壁を絶えず湿らせておくことによりかなり防止でぎた。
    4) ふ出した浮遊幼生は2, 3日で匍匐生活へ移行した。匍匐生活へ移行直後の稚貝殻長は0.80-0.95mmの範囲であり, 平均殻長は0.875mmであった。その後の殻長は10日目が1.40mm前後, 20日目が2.00mm前後, 30日目が3.00mm前後であった。
    5) 10トンの角型コンクリート槽2面を使用して, 浮遊生活から匍匐生活へ移行した稚貝を30日間飼育して, 平均殻長3.00mmの稚貝を255,308個体生産した。種苗の単位生産量は7,208個体/m2と21,478個体/m2であり, 歩留りは5.73%と10.74%であった。
    6) 生産した稚貝の殻長範囲は1.3-6.5mmであり, その殻長組成は殻長2.00mm以下が20%, 2.01-3.00mmが41%, 3.01-4.00mmが27%, 4.01mm以上が12%であった。死貝の殻長範囲は0.9-3.2mmであり, その多くは浮遊生活から匍匐生活へ移行直後から殻長2.00mmまでに多くみられ, 殻長2.00mmまでの死貝は80%を占めた。
  • 多部田 修, 高井 徹, 松井 魁
    1977 年24 巻4 号 p. 116-122
    発行日: 1977/03/25
    公開日: 2010/06/30
    ジャーナル フリー
  • 西川 博, 小川 英雄
    1977 年24 巻4 号 p. 123-127
    発行日: 1977/03/25
    公開日: 2010/06/30
    ジャーナル フリー
    1973年5月にヒジキが全く枯渇した壱岐郡芦辺町カモメ瀬においてヒジキの種草を移植し, 1976年4月まで卵から発生したヒジキの単位当たり現存量・個体密度・体長 (茎の長さ) などの生育状況の経年変化を調べて次のことがわかった。
    (1) ヒジキの繁茂状況は, 種草の設置地点を中心に下方へ0.5-1.0m, 上方に2-4mのほぼ円斑状にみられた。
    (2) 移植後卵から発生したヒジキの生育状況は, 単位当たり現存量では経年的に指数関数的な増加がみられ, 3年目に約11kg/m2を示した。体長は経年的に一次直線的な生長がみられ, 3年目に50cm前後に生育した。個体密度は経年変化が少なく2500本/m2前後を示した。
    (3) 種草の移植によって, 卵から発生したヒジキが産業的に役立つようになるのは単位当たり現存量・体長などの経年変化からみて3年目以後と考えられる。
    (4) 移植後3年目の卵から発生したヒジキの単位当たり現存量・個体密度は, 長崎県下の自然漁場で3月下旬に調べた最大現存量-個体密度に近似した結果がみられ, 種草の移植による増殖効果はあがったと考えられる。
  • 四井 敏雄
    1977 年24 巻4 号 p. 128-133
    発行日: 1977/03/25
    公開日: 2010/06/30
    ジャーナル フリー
    モズク養殖の種苗を得る方法を確立するため中性遊走子に由来する胞子体の越夏培養と遊走子放出について実験した。
    (1) 胞子体の越夏培養は20日毎の換水と水温の上昇につれて照度を低下させるだけの管理で良好な結果が得られた。
    (2) 胞子体は培養の過程で中性遊走子放出を繰り返し, これによって容易に増殖させることができた。
    (3) 中性複子嚢の形成は21-22℃, 24-25℃で多く, 26-27℃でもやや多かったが, 18℃以下では少なかった。
    (4) 中性遊走子放出の日変化には明瞭な周期性が認められ, 日の出後2時間迄に大部分が放出された。また, 人為的に明, 暗を変えるよとにより放出時刻を調節することも容易であった。
    (5) 中性遊走子放出の経日変化には明瞭な周期性は認められず, 大量放出を予測することは困難であったが, 放出数は培養液を良く換水し, 通気することによって増加させることができ, 撚糸10cm当り1日平均280万の放出がみられた。
    (6) 大型水槽による培養では照度管理を均一にできず, 放出遊走子数は撚糸10cm当り1日40-60万と少なかったが, この程度の放出数でも培養胞子体を活用する採苗法は充分な実用性を持つと思われた。
  • 福所 邦彦
    1977 年24 巻4 号 p. 134-139
    発行日: 1977/03/25
    公開日: 2010/06/30
    ジャーナル フリー
    イシダイ仔魚の消化時間を成長を追って調べた。消化の指標餌料としては, シオミズツボワムシを使い, 絶食後の各経過時間毎に採取した標本の消化管内のワムシ数の推移から消化過程を調べ, 次のような結果が得られた。
    1) 消化時間は, 飽食した供試魚の消化管内ワムシ数が, 絶食後最初の10%になる時間で表した。
    2) イシダイ仔魚の消化時間は全長3.2-3.6mm (日齢7) で6.5-7.0, 3.9-4.2 (11) で8.6-9.4, 5.1-5.6 (13) で2.0-2.5, 7.4-8.0 (18) で2.0-2.5時間であった。
    3) 胃盲嚢部を備えない仔魚が絶食状態におかれた時, 排泄が起り消化管内腔に間隙ができると, 消化管内容物は前・後方に往復運搬され, その結果内容物の滞留時間が長くなる。
    4) 胃盲嚢部の形成が始まった仔魚では, 消化管内容物の運搬はかなり規則的で, 絶食後1.0時間で胃内消化が, 2.5時間で腸内消化が終る。
  • 西内 康浩
    1977 年24 巻4 号 p. 140-145
    発行日: 1977/03/25
    公開日: 2010/06/30
    ジャーナル フリー
    コイ稚魚に対する162種類の薬剤の魚毒性発現と水温の関係を調査した。その結果多くの農薬成分について魚毒性は高温区ほど強く発現しとくにアルドリン, エチオンなどはその傾向が著るしかった。しかし, 水温の変化の影響のほとんど認められない成分, 或いは逆に高温区で弱く発現するものもあった。DDT, ピレトリンなどが前者の例であり, DDTについては殺虫力と温度との関係で既に報告されている知見と同じ傾向が認められた。後者の例としてはフォルペット, メチラムなどの殺菌剤が挙げられる。ただ, この変温による魚毒性の変化の分類とそれら農薬の化学構造との間には現在のところ特別の関係は認めていない。一般に魚毒性の変化は15-25℃より25-35℃の範囲の方が著るしい傾向があった。
  • 西内 康浩
    1977 年24 巻4 号 p. 146-150
    発行日: 1977/03/25
    公開日: 2010/06/30
    ジャーナル フリー
    タナゴを供試して13種類の農薬の急性毒性を調査した。タナゴの薬剤感受性はコイよりもやや高い傾向にある。
    第1表 各種農薬のタナゴA. moriokaeに対する毒性試験結果
    第2表 各種農薬のタナゴA. moriokaeに対するTLm値 (ppm)
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