島根半島沿岸域に放流されたアカアマダイの放流効果を評価検討した。放流アカアマダイの再捕確認調査を2012~2019年度に小伊津漁港において月1回の頻度で実施した。標識魚の再捕は放流点から45 km の範囲で確認され,そのうち97%は20 km 以内の範囲であった。確認された標識魚は雌雄とも2~9齢で,雌80尾,雄43尾の総計123尾であった。混獲率は0.12~1.01%で推移し,推定回収尾数は雌1,105尾,雄681尾,総計1,786尾であった。回収魚の年齢組成と年度別放流尾数から標準的な累積回収率を算出したところ,9齢以降で4.874%が上限となった。放流の直接効果として1尾あたりの漁獲期待価格を算出したところ83.7円で,1尾あたり種苗販売単価に対する比は0.78であった。今後は間接的効果の算定にむけて本海域の再生産機構の解明が重要な課題となる。
マダコを陸上水槽で交接・産卵・孵化させ,親子鑑定により父性を推定し,繁殖生態を明らかにした。各試験において同一の水槽に雌雄を投入してから交接開始までは14~930秒,雌個体の産卵までは8~140日間,産卵開始から仔ダコのふ化が始まるまでは23~68日間,ふ化期間は6~24日間とそれぞれ期間の長さに差がみられた。雌雄の交接時間は283~6,277秒,雄のアーチ・ポンプの回数は5~25回と個体によって差がみられた。親子鑑定により,マダコにおける複数父性の存在が確認される一方,ふ化仔ダコに占める各父性の割合には差異が確認された。また,今回用いた雌の多くは自然海域ですでに複数の雄と交接し,精子を蓄えていた。各ふ化日ごとの仔ダコの父性の構成割合には大きな差異が見られなかったことから,雌と交接した各雄の精子は交接から産卵までに雌の体内でよく混ざっている可能性が考えられた。
大人に対するインターネットアンケート調査により,年少期の身近な河川湖沼における釣りの実態とその推移を検討した。釣獲対象種はコイ科魚類,釣り方は自分で収集した餌を用いる餌釣りが最も多かったが,若い世代ではルアーによる外来魚釣りを挙げる回答者も多かった。この傾向は釣獲対象種としてサケ科魚類が身近でない地域で明確に認められた。最もよく釣りに一緒に行った人および釣りを教えてくれた人は,いずれも年少者同士が大半を占めた。以上のことから,年少期における内水面の釣りの導入部としては餌釣りによるコイ科魚類の釣りが実態に即していること,内水面の釣りの普及のためには年少者同士で釣りに行ける環境を整備することが重要であると考えられた。
三重県志摩沖の熊野灘で釣獲したアカハタ264個体について生殖腺の組織学的観察を行った結果,雌が230個体,雄が21個体,間性が13個体であった。雌は6~9月,特に6~8月に成熟期の個体が多く出現し,GSI も高かった。雄は周年排精状態であったが,組織像と GSI から7月が精子形成のピークと考えられた。これらから,繁殖盛期は6~8月と推測された。標準体長と GSI の関係から,雌の成熟体長は約170 mm と考えられた。雄については全個体が排精状態であったため成熟体長は不明であった。間性の最小個体(188 mm SL)より小型の個体はすべて雌で,間性の最大個体(268 mm SL)より大型の個体はすべて雄であったこと,雌の成熟体長が間性や雄の最小体長よりも小さいことから,本種は雌性先熟の性転換を行うと判断され,性転換開始体長はおよそ190 mm SL と推測された。
ニジマスの餌付け期に植物性飼料を与える期間が幼魚期における植物性飼料の利用性に及ぼす影響を検討した。ニジマス浮上稚魚に魚粉飼料を4週間,植物性飼料を2週間与えたのち魚粉飼料を2週間,植物性飼料を4週間,それぞれ与え,得られた稚魚を魚粉飼料で約 8 g まで養成したのち植物性飼料を9週間与える試験に供した。魚粉飼料のみで餌付けした経歴のある幼魚に比べ,与えた期間に関わらず植物性飼料で餌付けした経験のある幼魚の成長や飼料効率が優れた。幼魚の血液性状,胆汁生理および栄養成分の消化吸収率には餌付け飼料の影響がみられなかったことから,植物性飼料による餌付け効果の要因として摂餌率の増加が示唆された。以上のことからニジマス幼魚における植物性飼料の利用性の改善には餌付け期に2週間,植物性飼料を与える必要があると考えられた。
ヨシキリザメは様々な国で漁獲されているが,計測箇所は国や機関によって異なっている。北西太平洋で漁獲されたヨシキリザメの様々な計測値間で線形回帰の換算式を用いて,体長を推定するのに対数変換した値を使ったモデルと実数値を使ったモデルのどちらのモデルがより適しているか検証した。さらに,資源評価に重要な体長を推定するために,精度と計測しやすさの観点から体長推定に適した計測箇所について検討した。体長-体長換算時において必ずしも実数モデルが優れているわけではなく,換算の際には両モデルについて検討することが望ましいと思われたが,多くの組み合わせにおいて対数変換モデルが選ばれた。ヨシキリザメの場合,漁港でのサンプリング状況を考慮すると胸鰭前縁長(PCA)あるいは第1背鰭-第2背鰭基底間長(DL)が体長を推定するのに適した計測部位として推奨された。
本研究では,スサビノリ採苗時におけるアルギニンおよびオルニチンの浸漬効果を明らかにするために,芽落ち防止を目的とした活着力(ヒキ)および収量増加を目的とした生長性を室内培養実験および野外養殖試験により調べた。室内培養実験からは,オルニチンへの1時間以上の浸漬により活着力が増強することが明らかとなった。野外養殖試験からは,採苗後にアルギニンおよびオルニチンに24時間の浸漬を行うことにより,育苗期の活着力の増強と生長促進が認められた。さらに,収量は,アルギニンおよびオルニチンへの浸漬を行った場合,1日1網あたり10%以上増加した。以上のことから,採苗時にアルギニンまたはオルニチンに1回浸漬することにより,ノリ葉状体の育苗期の活着力を増強させ,芽落ち防止に寄与できるだけでなく,収量の増大にも貢献できると考えられる。
Food habits of juvenile rockfish (Sebastes cheni) were examined in the eelgrass (Zostera marina) beds restored in the nearshore area of Hinase, the Seto Inland Sea, to clarify whether these habitats can contribute to fish nurseries. Stomach content analyses showed that amphipods and calanoids were the most important prey for the juveniles, as in the case of the adjacent natural eelgrass bed. Furthermore, the genera of amphipods heavily consumed by the juveniles were almost the same as the genera predominant on the eelgrass blades. Therefore, we can conclude that these restored eelgrass beds function as a feeding habitat for juvenile rockfish.
The freshwater pufferfish Pao palembangensis was bred in captivity in order to advance breeding techniques for the species. Breeding occurred in freshwater under stable water temperature (25-26°C) and lighting (L12:D12) conditions, and a spawning bed comprising a stone pipe with a uniform internal surface suitable for establishing and guarding eggs set in a single layer. A pair of individuals spawned three times from June to August 2003, a single egg batch containing about one hundred 2.25 ± 0.01 mm diameter eggs. Hatching occurred 10 days after spawning, larvae being fed initially with Artemia larvae.