水産増殖
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51 巻, 3 号
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  • 渡辺 健一, 保正 竜哉
    2003 年51 巻3 号 p. 257-262
    発行日: 2003/09/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    天然の海産アユと放流された人工産及び琵琶湖産アユが生息する吉野川において, 側線上方横列鱗数の度数分布を解析することで, 海産アユの資源尾数を推定した。3種類のアユの側線上方横列鱗数度数分布はそれぞれ正規分布しており, その平均値は互いに有意に異なっていた。3種類のアユを含む漁獲物の側線上方横列鱗数度数分布をMarqualdt法を用いて正規分解することにより, 海産アユの割合を計算した。この割合と, 人工および湖産アユの放流尾数データから, 海産アユの資源尾数を推定した。1998~2002年の海産アユ資源尾数は, それぞれ3, 938, 000尾, 17, 147, 000尾, 16, 934, 000尾, 24, 630, 000尾および32, 628, 000尾であった。ここで採用した方法は, アユ資源解析法として, 吉野川のような大河川で有効な方法と考えられた。
  • 東 健作, 堀木 信男, 谷口 順彦
    2003 年51 巻3 号 p. 263-271
    発行日: 2003/09/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    1999年から2002年にかけての3年間にわたって, 和歌山県中部の沿岸域および日高川下流において, 仔稚魚期におけるアユの資源変動を検討した。沿岸域におけるアユ稚魚の採捕量および日高川への遡上量は2001年群において最も多く,
    2001年群の資源豊度は3年間で最も高いと判断された。2001年群のアユ仔魚は, 日高川周辺の砕波帯において大量に採集され, それらの体長は他の2ヵ年に比べて大きかった。これらの結果は, 砕波帯への仔魚の加入量と仔魚期の成長率が, アユの資源水準と関係していることを示唆しており, 仔魚期の大きな減耗は, 砕波帯に加入するまでに生じることが推測された。
  • 桐原 慎二, 仲村 俊毅, 能登谷 正浩
    2003 年51 巻3 号 p. 273-280
    発行日: 2003/09/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    青森県下北半島尻屋崎沿岸のマコンブ生育量に及ぼす水温の影響を調べた。当該沿岸の水深2.5m, 5m, 10m, 15m, 20mの計53-70地点について1984年-2002年の6, 7月に海藻現存量の調査を行い, マコンブの生育密度を求め, 水温との関係を検討した。水温と生育密度は, 1年目藻体では1月第4半旬-2月第2半旬と2月第6半旬-3月第4半旬, 2年目藻体では前年の1月第5半旬-3月第4半旬の時期のそれぞれが有意な負の単相関 (1%危険率) が認められた。
    それらのうち1, 2年目藻体の生育密度 (個体数/m2; L1, L2) は, 各々1月第5半旬と前年の3月第3半旬の水温 (℃; Tc5, Tp15) と最も高い単相関の値-0.889, -0.787が得られ, 下式によく適合した。
    L1=exp (11.600-1.024×Tc5) 重相関係数0.957
    L2=exp (7.523-0.983×Tp15) 重相関係数0.939
    各々の時期の水温を用いることによって, マコンブの発生量や漁獲量の多寡を予測できると考えられた。
  • 桐原 慎二, 藤川 義一, 能登谷 正浩
    2003 年51 巻3 号 p. 281-286
    発行日: 2003/09/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    ガゴメの発生と生長に及ぼす温度, 光量の影響を知るため, 遊走子を瓶中で温度 (5, 10, 15, 20, 25℃) , 光量 (10, 20, 40, 80μmol/m2/s) , 光周期 (14L: 10D) の組合せ条件下で6週間, さらに, 幼胞子体を同じ温度, 光周期, 光量は20μmo1/m2/sにしたフラスコ, 水槽中で13週間通気, 流水培養した。この結果, 遊走子は, 20℃以下で配偶体を形成し, 15℃以下では配偶体が成熟し, 受精後に幼胞子体を形成した。胞子体は, 25℃では枯死し, 20℃では殆ど生長しなかったが, 15℃以下では順調に生長し, 瓶中では10, 5, 15℃の順に, フラスコ, 水槽中では低温度条件下ほど生長が速かった。また, 5, 10℃の低い温度では高光量下で生長が速かった。配偶体, 胞子体の形成, 生長の上限温度は, コンブ属植物とは概ね一致した。
  • 芹澤 如比古, 村上 裕重, 田中 次郎, 青木 優和, 坂西 芳彦, 平田 徹, 御園 生拓, 横浜 康継
    2003 年51 巻3 号 p. 287-294
    発行日: 2003/09/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    2001年4月に静岡県下田市田牛地先の水深0, 2.5, 5, 10, 15, 20, 23mで, 任意に設置した1m2方形枠2個でのカジメおよびアラメ (褐藻, コンブ目) の刈り取り調査を行なった。カジメ・アラメの現存量は0.13~1.50kg乾重/m2で, 水深0~2.5mで最大, 水深23mで最小であった。カジメの密度は水深2.5mの20個体/m2から水深20mの49個体/m2まで水深に伴って徐々に増加した。アラメの密度は水深0mでは31個体/m2, カジメと混生していた水深2.5mでは4個体/m2であった。カジメの茎長, 茎径の平均値は水深23mで最小 (17.2cm, 11.0mm) , 水深2.5mで最大 (91.5cm, 23.2mm) であったが, 中央葉長は水深に関係なく22.0~29.1cmであった。水深0mのアラメの茎長, 茎径, 枝長の平均値はそれぞれ, 45.3cm, 27.1mm, 6.8cmであった。海中林周辺あるいは内部の海藻類を調べた結果, 緑藻類8種, 褐藻類26種, 紅藻類34種の計68種を確認し, 総種数は水深15m以深で多かった。
  • 立原 一憲, Emi OBARA
    2003 年51 巻3 号 p. 295-306
    発行日: 2003/09/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    カワスズメOreochromiss mossambicusは, 1954年に沖縄島に移入された後, 野外に逃げ出して定着し, 現在では多くの河川で優占種となっている。ここでは本種の卵内発生の経過と飼育条件下における稚魚への成長に伴う外部形態および骨格系の発達を記載した。カワスズメ卵は, 1997年6月4日に沖縄島の小那覇川で採集した口内保育中の親から得た。卵は平均長径2.72mm, 平均短径1.96mmの楕円型で, 受精後88時間30分で孵化した。孵化後6日, 体長4.0mmで遊泳し始め, 12日後に稚魚に達した。本種の骨格の主要な要素は, 孵化後25日には全て形成された。
  • 立原 一憲, Emi OBARA
    2003 年51 巻3 号 p. 307-313
    発行日: 2003/09/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    カワスズメOreochromiss mossambicusは, 1954年に沖縄島に移入された後, 野外に逃げ出して定着し, 現在では多くの河川で優占種となっている。しかし, 本種が沖縄の河川生態系に及ぼす影響や沖縄における本種の生活史に関する知見はほとんどない。ここでは1996年2月~1997年8月に沖縄島北部源河川において, 耳石を用いて本種の年齢を査定し, 野外における寿命と成長を調べた。その結果, 本種の雄は雌より成長が早く, 両者の成長は次式, 雄: Lt=276.9 [1-exp {-0.63 (t-0.38) } ] , 雌: Lt=237.6 [1-exp {-0.26 (t+1.32) } ] で表された。観察された最高寿命は, 雄で8.5歳, 雌で14歳であった。
  • 中村 智幸, 尾田 紀夫
    2003 年51 巻3 号 p. 315-320
    発行日: 2003/09/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    1999, 2000年の4~10月に, 栃木県那珂川水系の農業水路において, ギバチの遡上生態を調査した。両年ともに, 多数のギバチが5上旬~8月下旬に水路を遡上し, 遡上数は7月上旬に多かった。遡上魚のほとんどが成熟しており, 雌雄ともに遡上した。体サイズは雌に比べて雄のほうが大きく, 明瞭な性的二型が認められた。また, 性比は雌に偏っていた。遡上数は昼間に比べて夜間に多かった。また, 降雨日に多数遡上した。これらのことから, 農業水路がギバチの産卵場所のひとつとして機能している可能性が考えられた。また, ギバチは遡上に際して夜行性で, 降雨が遡上の誘発要因のひとつになっていると考えられた。
  • 山元 憲一, 半田 岳志, 藤本 健治
    2003 年51 巻3 号 p. 321-326
    発行日: 2003/09/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    呼吸樹での換水運動から, マナマコのアカ, アオ, クロの低塩分濃度に対する抵抗性の違いを調べた。塩分濃度が30‰に低下するまでは, アカ, アオ, クロはいずれも換水運動に関する測定項目に変化がないことから30‰までは低塩分の影響を受けないと推測した。更に低下すると, アカ, アオ, クロはいずれも呼吸数および1換水周期当たりの吸入数はほぼ一定していたが, 呼出1回の水量および吸入1回の水量は減少して, 換水量は減少した。これらの結果から, 呼吸運動はアカ, アオ, クロで基本的には差違がないと判断した。しかし, 低塩分に対する抵抗性はアオとクロはほぼ同じで, アカはそれらよりも弱いことが明らかとなった。
  • 片倉 靖次, 太田 守信, 神 正人, 桜井 泰憲
    2003 年51 巻3 号 p. 327-335
    発行日: 2003/09/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    スケトウダラ幼魚に, OTC, ALCおよびARSの溶液を用いて, 液浸法により24時間の耳石染色を行った。ALC25ppmおよびARS200~1000ppmの薬品濃度は耳石染色に適正と判断された。一方, OTCでは, すべての濃度が耳石染色に適正と判断されなかった。ALCおよびARSにより染色処理された後, 1年間飼育されたスケトウダラ個体において, その耳石, 鱗, 鰭条骨および下鰓蓋骨から染色マークが確認された。1歳の天然魚と, 餌, 水温, 光条件が安定した1歳の飼育魚では, 耳石輪紋パターンが異なり, 飼育魚には年輪が形成されなかった。毒性, 染色マーク着色状況およびコストを考慮すると, ARSは, 本研究で使用した3種の薬品のうち, スケトウダラ幼魚の染色剤として最も優れていると考えられた。
  • 山本 昌幸, 栩野 元秀
    2003 年51 巻3 号 p. 337-342
    発行日: 2003/09/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    瀬戸内海中央部において海上整備船によって除去される浮遊物の量と組成, 流れ藻に随伴する稚魚および流れ藻に付着するサヨリ卵を調べた。1年間に海上整備船によって除去される浮遊物の量は約1, 300m3であった。除去量は春に増加し, 7月にピークに至り, 秋に減少し, 冬に少なかった。浮遊物は春にホンダワラ科褐藻, 夏にアマモとヨシ (イネ科) が優占した。稚魚はほとんど海上整備船に除去されていなかった。サヨリ卵は4月から6月に出現し, 海藻1kgあたり500~16, 000粒の卵が付着していた。また, 4月から6月に海上整備船によって除去される海藻の量は約41, 000kgであった。これらの結果から, 1年間に除去されるサヨリ卵は約3億2000万粒と見積もられた。
  • 佐藤 公一, 舞田 正志, 若月 彰, 松田 晋一
    2003 年51 巻3 号 p. 343-348
    発行日: 2003/09/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    ブリ, Seriola quinqueradiata成魚におけるエクストルーダー飼料 (EP) の飼料効果を知ることを目的として, 粗脂肪 (CL) 量23%のEP (EP-MF) , CL量28%のEP (EP-HF) , および生餌主体の餌料 (生餌) を用いてブリ2年魚の飼育試験を行った。
    夏期におけるEP-MF区およびEP-HF区の成績は, 生餌区の成績を100としたときに, 日間増重率 (DGR) がそれぞれ93±5 (平均値±標準偏差) %および95±9%, 日間給餌率 (DFR) が96±9%および94±10%, 飼料効率 (FE) が97±4%および101±1%で, いずれも生餌区と比較して有意な差異は認められなかった。一方, 秋期におけるEP-MF区およびEP-HF区の成績は, 同様の比較において, DGRがそれぞれ72±8%および65±9%, DFRが78±7%および69±3%, FEが90±2%および93±9%で, EP両区のDGRとDFRが生餌区より有意 (P<0.05) に低かった。
    これらの結果から, ブリ成魚にEPを給与したときの飼育成績は, 夏期では生餌と同等であるものの, 秋期では成長が生餌より劣ること, その原因として秋期に生餌主体の餌料と比較してEPの摂餌率が低くなることが考えられた。
  • 許 倫誠, 伏屋 玲子, 横田 賢史, 渡邊 精一
    2003 年51 巻3 号 p. 349-354
    発行日: 2003/09/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    イシガニの7地域標本とイシガニ属7種を用いてイシガニ地域標本間とイシガニ属間の遺伝的類縁関係を明らかにするためにアイソザイム分析を行った。11酵素16遺伝子座について調べた結果, イシガニ地域標本には遺伝的変異がなかった。一方, イシガニとイシガニ属7種では16遺伝子座中でAAT, G3PDH, GPI, IDHP-1, IDHP-2の5遺伝子座において遺伝子の置換がみられ, イシガニとイシガニ属7種の遺伝的距離は0.065~0.359であった。フタホシイシガニ亜属に属するフタホシイシガニはイシガニ亜属に属するシマイシガニ, ワタリイシガニ, アカイシガニ, Cllucifeya, C.anisodonの5種よりもイシガニと近縁であり, 形態分類とは異なる結果が得られた。
  • 羽土 真, 岡内 正典, 村瀬 昇, 水上 譲
    2003 年51 巻3 号 p. 355-360
    発行日: 2003/09/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    スサビノリ葉緑体Rubisco遺伝子のプロモーター領域塩基配列を含むDNA断片を, 植物ベクターpBI221のβ-グルクロニダーゼ (GUS) 遺伝子の上流に連結し, 組換えベクターpYez-Rub-GUSを構築した。これらのベクターをエレクトロポレーション法でスサビノリプロトプラストへ遺伝子導入した後, プロトプラストを寒天培養及び液体培養した。pYez-Rub-GUSを遺伝子導入したプロトプラストでは, 組織化学的方法によってGUS遺伝子の発現を示す青色の細胞が観察され, また, 蛍光標識したGUS基質を用いた酵素反応においても有意にGUS活性が検出された。効率よい遺伝子導入の条件を検討したところ, 電気的条件がパルス電圧200~300V, パルス幅47msの時, また, DNA濃度が0.03μg/mlの時に比較的高い発現率を得ることができた。遺伝子導入後のプロトプラスト培養では, 液体培養よりも寒天培養の方が高い発現率が得られ, また, 遺伝子導入後最も高い発現率を示したのは導入後4および5日目であった。
  • Takanobu GOTO, Hiroki SUGIYAMA, Hiroyuki FUNATSU, Yuko OSADA, Shusaku ...
    2003 年51 巻3 号 p. 361-362
    発行日: 2003/09/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    Hepatic cysteinesulfinate aminotransferase activity was studied in fish. Fish liver homogenates were incubated with a reaction mixture containing cysteinesulfinate, 2-oxoglutarate, PLP, NADH, and lactate dehydrogenase for 15 min at 25°C. NADH oxidation was monitored at 340 nm and defined as the enzyme activity. The highest enzyme activity was observed in yellowtail followed by that in red seabream. The lowest level of activity was observed in bluegill. However, the enzyme activities were distributed over a narrow range from 115-430 nmol/min/mg protein. These observations suggest that transamination is a common pathway for cysteinesulfinate metabolism in fish.
  • Tadashi ISSHIKI, Motohide TOCHINO, Taizou NAGANO
    2003 年51 巻3 号 p. 363-364
    発行日: 2003/09/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    This paper aimed to report successful cases of treatment of Neoheterobothrium infection in Japanese flounder, Paralichthys olivaceus with 8% NaCl-supplemented seawater. In a hatchery in Kagawa Prefecture, Japan in 1999 and 2000, brood stocks of Japanese flounder underwent severe anemia. To maintain the seed production, the naturally infected flounder with the causative parasite, Neoheterobothrium hirame, were treated by 8% NaCl-supplemented seawater bathing for 5 min at 17 and 20°C, resulting in detachments of both immature and adult worms, and recovery from anemia in the host fish, with no death of the host fish during and after the treatment. These observations assumed that the NaCl-supplemented seawater bathing is an effective treatment of Neoheterobothrium infection in Japanese flounder.
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