水産増殖
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65 巻, 2 号
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原著論文
  • 豊村 晃丞, 水田 篤, 松浦 光宏, 中西 健二, 有瀧 真人
    2017 年 65 巻 2 号 p. 117-124
    発行日: 2017/06/20
    公開日: 2018/06/20
    ジャーナル フリー
    アカアマダイ人工種苗に発現する形態異常について検討するため,101日齢で選別した形態異常魚205個体を用いて異常の類別化,および骨格の詳細観察を行った。形態異常は体幹部の異常,鰓蓋の欠損,頭部の陥没,口部の異常,鼻孔隔皮の欠損の5タイプに区分できた。また,各タイプの出現頻度はそれぞれ26%,26%,23%,20%,5%となった。鰓蓋の欠損,頭部の陥没ならびに口部の異常は併発する個体が多く見られ,かつ左右体側のどちらかに偏って発現する傾向が強かった。さらに,上記異常発現の左右への偏りは頭部の傾きの左右性と強い関連があった。一方,体幹部の異常を起こしていた個体では,尾椎(12~16椎体)に変形や癒合が集中して発現しており,全て鰾が未開腔であった。このことから,本種における鰓蓋の欠損,頭部の陥没および口部の異常は頭部の傾き,体幹部の異常は鰾の形成不全と,それぞれ異なる原因により発現していると考えられた。
  • 長副 聡, 德永 貴久, 松山 幸彦
    2017 年 65 巻 2 号 p. 125-132
    発行日: 2017/06/20
    公開日: 2018/06/20
    ジャーナル フリー
    これまでにタイラギに対する低酸素の影響は報告されているが,大型個体に限られる。そこで,3段階の溶存酸素濃度区を設定し,タイラギ稚貝(平均殻長 約23 mm)を用いて24時間の曝露実験を行った。3段階の濃度区は,無酸素区(0.31~0.37 mg/l),低酸素区(1.98~2.96 mg/l),および酸素飽和区(6.73~6.94 mg/l) とした。その結果,酸素飽和区のタイラギでは24時間後も斃死は確認されなかった。一方,無酸素区では曝露開始9時間までに全個体が斃死し,貧酸素区では24時間以内にほぼ全個体が斃死した。本結果は比較的大型のタイラギ(殻長 約100 mm 以上)を用いた既往知見の結果と異なり,低酸素下の稚貝は極めて短時間で斃死することが確認された。以上から,海域における貧酸素水塊の発生がタイラギ資源の再生産過程に対して著しい悪影響を及ぼすことを示唆している。
  • 小谷 知也, 原口 拓己, 山崎 悠太, 土井 達也, 松井 英明, 横山 佐一郎, 石川 学, 越塩 俊介
    2017 年 65 巻 2 号 p. 133-144
    発行日: 2017/06/20
    公開日: 2018/06/20
    ジャーナル フリー
    本研究は栄養強化時間の異なる広塩性ツボワムシ類(以下ワムシ)の餌料価値とマダイ仔魚への給与効果を明らかにすることを目的とした。強化実験には S 型及び L 型ワムシを使用した。ワムシは n-3HUFA 含有クロレラで12時間または24時間強化した。さらに,n-3HUFA 含有クロレラを一次培養過程から給餌し続けるワムシ(常時強化)も準備した。マダイはふ化後20日齢までの体長を測定し,20日齢時点の生残尾数を計数,24時間強化ワムシと常時強化ワムシの給餌群を比較した。S 型及び L 型ワムシの EPA と DHA 含量は12時間強化区と24時間強化区では差が無かった。しかし,L 型ワムシの極性脂質中の EPA 及び DHA 含量は常時強化区で高くなった。マダイの生残率は24時間強化ワムシ区給餌群より常時強化区ワムシ給餌群で高く(P<0.05),体長の成長速度も常時強化ワムシ給餌群で速くなった。
短報
資料
  • 白石 一成
    2017 年 65 巻 2 号 p. 161-163
    発行日: 2017/06/20
    公開日: 2018/06/20
    ジャーナル フリー
    本研究では,宮城県における東日本大震災前後のサケ稚魚放流数と親魚来遊数の結果を比較することで,震災がサケの回帰に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。2010年度と2011年度の稚魚放流数は,震災の影響を受けて減少した。その後に回帰した2014年度と2015年度の親魚数が,以前より減少した一方で,回帰率は低くならなかった。これらのことから,2010年級群の来遊数減少は,稚魚放流数の減少が影響したためと考えられる。また,震災の影響によって,2010年級群の放流数が2009年級群から大きく減少した河川のみならず,放流数が大きく減少することのなかった河川でも,2010年級群の捕獲数は2009年級群より減少した。このことには,震災後,津波により倒壊した堤防等施設や瓦礫などの影響が考えられる。
  • 山本 昌幸, 小林 靖尚
    2017 年 65 巻 2 号 p. 165-169
    発行日: 2017/06/20
    公開日: 2018/06/20
    ジャーナル フリー
    組織学的観察に基づき,我々は2013年6月,7月,11月,2014年8月に瀬戸内海中央部燧灘のキジハタの成熟度を調べた。さらに,肉眼的観察による性判別(肉眼観察法)の信頼性を検討した。6月に一部の個体で,未熟期の雌と間性個体が観察されたものの, 6~8月に雌雄共に成熟個体が観察された。11月には未成熟個体のみが観察された。肉眼観察法において,7月と8月にはすべての個体の性判別が正しかったが,6月と11月には生殖腺の発達が不十分な一部の個体において,性判別が誤っていた。これらの結果から,産卵盛期の7~8月においては肉眼観察法の信頼性が高いと判断された。
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