水産増殖
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53 巻, 1 号
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  • 小磯 雅彦, 桑田 博, 日野 明徳
    2005 年53 巻1 号 p. 1-5
    発行日: 2005/03/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    短時間の飢餓がワムシの増殖や大きさに及ぼす影響を検討するために, ふ化ワムシを3, 6, 9および12時間の飢餓に曝した後, 餌料を添加した培養水に移して培養し, それぞれのワムシの生残率, 生活史パラメータ, 生物学的最小形および卵の大きさを調べた。3~12時間の飢餓に曝されたワムシは, 生残率が低下し, ふ化から初産卵までの時間が飢餓に曝された時間だけ遅延すること, 生物学的最小形が小型化することがわかった。ふ化から初産卵までの時間が飢餓に曝された時間だけ遅延したことから, 摂餌の開始によって生殖器官の発達が開始されると考えられた。また, 飢餓時間の長さに伴い生物学的最小形は小型化したが, 卵の大きさは変化しないことから, ワムシの体の成長と卵形成はそれぞれ独立して発達すると考えられた。3~12時間の短時間の飢餓でも, 生残率の低下やワムシの小型化が起こるため, 大量培養では回避すべきであると考えられる。
  • 岡田 一宏, 西村 守央, 浮 永久
    2005 年53 巻1 号 p. 7-14
    発行日: 2005/03/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    アワビ類稚貝飼育用の巡流水槽に若干の改良を加え, サイフォンによる底掃除作業を不要とするクロアワビ当歳貝の省力化飼育方法について既に報告した。この新しい飼育方法をメガイアワビに適用し, 成長, 生残, 餌料効率, 適正飼育密度などについて飼育実験により検討した。飼育には10klの巡流水槽 (有効飼育面積約44m2) を4槽用い, 2種類のサイズ (平均殻長4.9mmと6.4mm) の稚貝をそれぞれ異なる2つの飼育密度 (2, 500および1, 800個体/m2) で収容した。餌料は配合飼料を用い, 稚貝の排泄物は給餌前約5時間の強通気によって除去して約7カ月飼育した。生残率は95%以上, 餌料効率は78~80%と各実験区間で大差はなかったが, 成長は低密度区で有意に優れていた。これらのことから, 本省力化飼育は平均殻長約5mm以上のメガイアワビ当歳貝に有効であり, 平均殻長約20mmまでの飼育適正密度は約1, 500~2, 000個体/m2であると考えられた。
  • 前田 経雄, 辻本 良
    2005 年53 巻1 号 p. 15-22
    発行日: 2005/03/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    ベニズワイの脱皮に伴う成長量や脱皮間隔を明らかにするために, 1999年7月から2002年7月までに富山湾で未成体18個体 (雄3個体, 雌15個体) を採集し, 2004年2月2日まで飼育を行った。飼育期間中に合計39回の脱皮が観察され, 最も多かった個体では4年6か月の間に6回の脱皮が観察された。雌雄とも未成体期における非最終脱皮では, 甲幅成長量は体サイズが大きくなるほど増加したのに対し, 雌の成体への最終脱皮では, 体サイズに依らず成長量はほぼ一定であった。また脱皮前甲幅と脱皮後甲幅との関係は, 雌の非最終脱皮と最終脱皮で異なった1次回帰式で示され, 雌は成熟に際して成長様式が変化すると考えられた。脱皮前甲幅Ln (mm) と脱皮間隔IP (日数) との関係は, IP=4.773Ln+147.3 (r2=0.737, P<0.001, n=21) で示され, 体サイズが大きくなるほど脱皮間隔は長くなる傾向が認められた。
  • 伊藤 篤, 古屋野 太一, 岡本 侑樹, 大野 正夫, 和田 哲
    2005 年53 巻1 号 p. 23-30
    発行日: 2005/03/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    土佐湾内の浦ノ内湾の竜の防波堤に, 人工海藻で作成した幼生コレクターを設置して, イセエビプエルルス幼生の着底様式を調べた。採集されたイセエビ幼生の発達ステージはコレクターの設置期間によって異なり, 発達後期のプエルルス幼生は翌日にはほとんど採集されず, 3日目以降になると増加した。このことから, 着底後のプエルルス幼生は稚エビになるまで, あまり移動しないことが示唆された。人工海藻の色に対する野外と室内での選択実験では, 一貫した傾向は認められず, 藻体の色がプエルルス幼生を誘引する要因になっている可能性は低いことが示唆された。また, プエルルス幼生が稚エビへと変態するまでの日数は着底場所の有無によって変わらなかった。このことは一度着底したプエルルス幼生は変態のタイミングを変更できないことを示している。
  • 朴 恩貞, 高橋 潤, 北出 幸広, 安井 肇, 嵯峨 直恆
    2005 年53 巻1 号 p. 31-40
    発行日: 2005/03/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    スサビノリ3株TU-1 (野生型) , TU-2 (緑色型) そしてTUH-25 (赤色型) の多型性を単胞子の培養研究と各株の配偶体のCAPS解析に基づいて調べた。単胞子の初期発生形質の比較, すなわち, 単胞子の大きさ, 第一縦分裂時の細胞数そして経時的な発芽体の細胞数の変化は, これらの形質が3株の表現型の分類に役立つことを示した。19個のプライマー対と22種類の制限酵素を使ったCAPS解析において, 制限酵素処理した断片での長さの多型は本研究で用いたスサビノリ3株間で検出されなかった。これらの結果は, 単胞子の初期発生段階において区別し得る表現形質は, 必ずしも遺伝的多型を示すとは限らないということを示唆する。したがって, これら3株は遺伝的にあまりに近いのでここに用いたCAPSマーカーを使ったスサビノリの連鎖解析には適用できないかもしれない。
  • 関 秀司, 鈴木 翼, 櫛引 里絵, 丸山 英男
    2005 年53 巻1 号 p. 41-46
    発行日: 2005/03/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    粉砕した養魚用配合飼料をモデル系として, メチル化卵白アルブミン (MeOA) による残餌の連続式泡沫分離を試みた。気泡へのMeOAと残餌の吸着を考慮した連続式泡沫分離モデルを提案し, 残餌試料質量流量, MeOA質量流量および気泡表面積生成速度の異なる条件で行った実験結果との比較からモデルの正当性を検討した。その結果, 実験により決定した残餌試料除去率とモデルから算出した理論値の間に良好な一致が得られ, 本研究において提案したモデルにより, 残餌質量流量, MeOA質量流量, 気泡表面積生成速度および排出液流量などの基本操作条件から残餌試料除去率を予測できることが明らかになった。
  • 関 秀司, 鈴木 翼, 庭 亜子
    2005 年53 巻1 号 p. 47-51
    発行日: 2005/03/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    微細藻類の増殖速度の光強度依存性について温度依存性と同様の関係が成立するとの仮定に基づき, Arrhenius型光強度関数を導入した増殖速度モデルを提案した。クロレラC. fuscaをモデル系として光強度およびKNO3濃度の異なる条件で増殖速度実験を行い, 実験結果との比較からモデルの正当性を検討した。その結果, 本研究で提案した増殖速度モデルにより低光強度における比増殖速度のシグモイド型光強度依存性を表現できること, および従来の経験式と同等以上の精度で比増殖速度の光強度依存性を予測できることが明らかとなった。
  • 高橋 計介, 矢内 秀和, 室賀 清邦, 森 勝義
    2005 年53 巻1 号 p. 53-59
    発行日: 2005/03/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    同じ環境下で一定期間飼育されたイワガキおよびマガキを用いて, 血球組成の観察と貪食能の比較実験を行った。スライドグラスに接着・伸展させ染色した血球を観察した結果, イワガキおよびマガキのいずれにおいても, 2種類の顆粒球 (C, D) および3種類の無顆粒球 (A, B, E) , 計5つのタイプの血球に分けられた。各血球タイプの貪食能の季節的変動を調べたところ, 両種においてタイプCおよびDとした顆粒球が周年高い貪食率を示したが, 放卵・放精後の秋には貪食率が低下した。以上のように, イワガキの血球組成はマガキの血球組成と同じであることが明らかにされた。しかし, 血球の貪食能に対する水温と塩分濃度の影響について調べたところ, 低水温および低塩分におかれたイワガキの血球の貪食能はマガキ血球の場合より顕著に低下し, 両種の血球の貪食能に対する環境要因の影響には差が見られた。
  • 小野 要, 矢野 由里子
    2005 年53 巻1 号 p. 61-66
    発行日: 2005/03/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    本研究では, 合成界面活性剤 (C14EO14混合剤, C18F1EO14混合剤, Tween80, C14FA混合剤およびOlyel EO20混合剤) を用い, 2種の赤潮生物とマダイC. majorに対する影響を調べた。シャトネラマリーナC. marinaおよびヘテロカプササーキュラリスカーマH. circularisquamaの培養液に, 各合成界面活性剤を1~50ppm添加して, 30分毎に遊泳, 静止および崩壊細胞を計数し, 2時間で全細胞数の約半数の細胞が静止および崩壊細胞になる最小有効濃度 (LC50, 2h) を調べた。次に, 各合成界面活性剤の魚毒性をマダイ幼魚を用いて半数致死濃度 (LC50, 24h) を算出した。
    シャトネラマリーナC. marinaに対する最小有効濃度は, C14EO14混合剤, C18F1EO14混合剤, Tween80では, それぞれ1ppm, 5ppm, 20ppm, C14FA混合剤およびOlyel EO20混合剤では, 30ppmを示した。一方, ヘテロカプササーキュラリスカーマH. circularisquamaでは, 全ての薬剤で50ppmを添加しても30%前後の細胞しか変形しなかった。魚毒性 (LC50, 24h) は, Tween80が55PPmと最も強く, 他の合成界面活性剤では, 125-150ppmであった。
  • 山元 憲一, 半田 岳志, 藤本 健治
    2005 年53 巻1 号 p. 67-74
    発行日: 2005/03/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    呼吸樹での換水運動から, マナマコのアカ, アオ, クロの高水温に対する抵抗性の違いを12, 22, 28℃から水温を上昇させて調べた。各水温から水温を上昇させてもアカ, アオ, クロはいずれも同様に, 水温28℃では, 換水量, 呼出1回の水量, 吸入1回の水量, 呼吸数および呼吸1回の吸入回数はほぼ同じ値を示した。22℃および12℃でも, 呼吸1回の吸入回数はほぼ同じ値を示したが, 換水量, 呼出1回の水量, 吸入1回の水量および呼吸数は水温の上昇に伴って増加した。これらのことから, 水温上昇に伴う換水運動の変化はアカ, アオ, クロに差違がないことが明らかとなった。しかし, 高水温に対する抵抗性はアオとクロがほぼ同じで, アカがそれらよりも弱いことが明らかとなった。
  • 一ノ瀬 寛之, 徳田 耕貴, 工藤 隆士, 吾妻 行雄
    2005 年53 巻1 号 p. 75-82
    発行日: 2005/03/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    エゾパフンウニ人工種苗群と天然群とを判別するため, 2000年, 2003年ならびに2004年に, 北海道北部稚内市沿岸の人工種苗群と天然群の加熱した第5生殖板の満1歳の輪紋の構造の特徴とその最大横幅を調べた。8月に受精し, ALCにて標識して漁場へ放流した人工種苗の満1歳の輪紋は, 生殖板中心部に位置する明瞭な輪紋に近接して形成され, その最大横幅は天然群よりも有意に広かった。4つの放流漁場で採集されたウニの満1歳の輪紋の最大横幅は, 天然群と人工種苗群で, それぞれ500μm前後と800~900μmにモードをもつ2つの正規分布に分離された。殻径13mm以上で放流された人工種苗群は, 満1歳の輪紋の構造の特徴とその最大横幅が広いことから天然群と判別できることが明らかになった。
  • 勝呂 尚之
    2005 年53 巻1 号 p. 83-90
    発行日: 2005/03/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    1) 環境省と神奈川県の絶滅危惧種に指定されているホトケドジョウを飼育下で効率的に増殖するため, 種苗生産技術の改良試験を行った。
    2) 36l水槽で, 親魚の収容数を変え, 効率的な採卵方法を検討した。収容数を増やしても採卵数は増えず, 雌雄1尾ずつがもっとも効率的に採卵できた。
    3) 雌雄1尾ずつの産卵結果から, 本種の産卵は多回産卵型で産卵数は約1, 500粒, 産卵期間は2ヶ月間におよぶことがわかった。
    4) 2t-FRP水槽における親魚収容数を雌雄10・20・30尾ずつで検討した。30尾ずつ収容した水槽からもっとも多くの仔魚が得られたが, 親魚あたりのふ化仔魚数が多く, 効率の良いのは20尾の水槽であった。
    5) 2t-FRP水槽において人工魚巣収容数の検討試験を行った。水槽に人工魚巣を2・3・4本設置して, 3回同じ試験を行い, 得られたふ化仔魚を比較した。設置本数4本でもっとも多く仔魚が得られ, 人工魚巣あたりのふ化仔魚数も多かった。同じ親魚数でも人工魚巣の設置数を増やすことで, 採卵数を増加させることができる。
  • 猪狩 忠光, 西 広海, 神野 芳久, 松元 則男, 清水 則和
    2005 年53 巻1 号 p. 91-92
    発行日: 2005/03/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    The transmission period of the unidentified filtrable causative agent of amyotrophia in the juvenile Japanese black abalone Haliotis discus discus was examined. The juvenile abalones reared in ultraviolet irradiated sea water were exposed to non-UV treated sea water for 10 days in different dates (January 18-28, January 29-February 8, February 9-19 or February 19-, in 2002) . They were sampled for observations of the typical histopathological changes of amyotrophia in April and May. The histopathological changes were observed in the groups of abalones exposed to non-UV treated sea water after February 9, but no changes in the groups exposed from January 18-28 or January 29-February 8. From the results, it was suggested that the transmission of amyotrophia via rearing sea water occurred during a particular period from the late winter to the early spring in Kagoshima Prefecture.
  • Kazutoshi OKAMOTO, Satoshi ATSUMI, Hajime MATSUYAMA
    2005 年53 巻1 号 p. 93-94
    発行日: 2005/03/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    In order to obtain information on early life history and larval rearing conditions of the deep sea red crab Chaceon granulatus, one hundred 1st zoeae of this crab were reared under laboratory conditions. It has been succeeded in rearing this crab from the 1st zoeal stage to the juvenile stage, 5.1 mm in carapace width. The number of successful moltings to the 2nd, 3rd, and 4th zoea, megalopa and juvenile crab were 40, 38, 36, 28 and 2 individuals, respectively. After hatching, it took 81 to 92 days to reach the juvenile stage. The average numbers of days spent in the 1st, 2nd, 3rd, and 4th zoea stages and the megalopa stage were 11.2, 8.5, 8.8, 12.0 and 46, respectively. It was found that maintenance of a good rearing environment and a sufficient quantity of bait were important for rearing the crabs to the juvenile stage.
  • Takanobu GOTO, Tomoko TAKAHASHI, Takumi KAIMASU, Shusaku TAKAGI, Akihi ...
    2005 年53 巻1 号 p. 95-96
    発行日: 2005/03/20
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    Distribution of cystathionine γ-lyase activity was studied in fish. Liver homogenates were incubated with L homoserine at 25°C for 60 min, and 2-oxobutyrate formed by the enzymic reaction was determined and defined as the enzyme activity. Fish enzymes showed the maximum activities when the reactions were performed at pH 8.9 with Tris-HCl buffer. The highest enzyme activity was observed in smelt fish followed by that in yellowtail, and the lowest activity was found in carp. Addition of DL-propargylglycine or L-cysteine into the reaction mixtures inhibited 2-oxobutyrate productions, but the inhibition manners of cysteine were different among the examined species.
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