群馬県利根川水系吾妻川産に由来するヤマメを飼育し, 0年魚での成熟, 銀毛の出現率ならびにその後の銀毛型群, 河川残留型群の比較飼育を行い, 生残, 成熟について観察を行い次の結果を得た。
1) 0年魚中の雄の一部が成熟し, それらの魚は翌春銀毛化しなかった。
2) 1年魚の銀毛化の割合は56%であり, また変態の時期は北海道および魚野川のサクラマスそれよりも著しく早かった。
3) 1年魚でかなりの割合のものが成熟し, その成熟率は河川残留型の群に比し, 銀毛型群ではやや低く, 2年魚では大部分のものが成熟した。
4) 銀毛型群から成熟した雄を得ることは難しく, 成熟するまでに雄は全て斃死した。
5) 1年魚として成熟するものの場合, 河川残留型群では一定の大きさに達することが必要であるが, 銀毛型群においては成熟魚と未成熟魚の体長には統計的な差はみられなかった。
6) 1年魚の体長ならびに抱卵数は銀毛型群が勝り, 卵径では河川残留型群が大きい。ふ化稚魚の全長も後者に由来するものが大きく, また, 稚魚の餌付までに要する日数は銀毛型に由来する稚魚に比し1週間早かった。
7) 銀毛型群の1年魚で成熟しなかった個体の翌年での銀毛への変態は極めて低く, その採卵の結果は1年魚における河川残留型群で得たものと同じ傾向を示した。
本文の取まとめにあたり北海道大学水産学部久保達郎助教授の指導を頂いた。ここに記して厚くお礼を申し上げる。
抄録全体を表示