水産増殖
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67 巻, 2 号
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原著論文
  • Maria Mojena Gonzales-Plasus, 近藤 秀裕, 廣野 育生, 佐藤 秀一, 芳賀 穣
    原稿種別: 原著論文
    2019 年 67 巻 2 号 p. 95-108
    発行日: 2019/06/20
    公開日: 2020/06/20
    ジャーナル フリー

    本研究ではシステアミン塩酸(CHS)及び各種含硫物質を添加したコイの肝膵臓中の含硫物質含量,タウリン合成酵素および成長ホルモン関連遺伝子の発現ならびに体形に及ぼす含硫物質の影響を調べた。1.0%および1.5%CHS 添加飼料給餌区で成長低下と形態異常が生じた。すべての試験区で魚体のタウリン含量の増加が見られ,1.5% CSH 区で最も多かった。肝膵臓中のシステインジオキシゲナーゼ(CDO1/2)遺伝子の発現はシステインならびに0.5%タウリン区で低下したが,1.5% CSH 区で増加した。システインスルフィン酸脱炭酸酵素(CSD)遺伝子はシステイン,メチオニンおよび CSH 区で低下した。システアミンジオキシゲナーゼ(ADO)遺伝子はメチオニン,システインおよび0.5%タウリン区で低下したが,CSH 区で増加した。以上のことから,システアミン経路がコイのタウリン合成経路であることが示唆された。

  • 伊藤 毅史, 増田 裕二, 梅田 智樹, 荒巻 裕
    原稿種別: 原著論文
    2019 年 67 巻 2 号 p. 109-115
    発行日: 2019/06/20
    公開日: 2020/06/20
    ジャーナル フリー

    2012年5 月から2014年5 月に六角川とその河口域で採集したエツを用いて,胃内容物の解析,年齢と成長および繁殖生態に関する検討を行った。胃内容物調査の結果,エツの主要な餌生物は甲殻類,多毛類および魚類であった。耳石縁辺部における透明帯と不透明帯の出現割合の季節変化から,耳石に見られる輪紋は1 年に1 輪,主に3 月から5 月にかけて形成され,年齢形質として耳石を用いることが可能であることがわかった。von Bertalanffy の成長式に当てはめた結果,雄は Lt = 398(1 - exp [- 0.27 {t + 0.93}]),雌は Lt = 437(1 - exp [- 0.33 {t + 0.48}])とそれぞれ表された。最高齢は雌雄ともに4 歳であった。生殖腺重量指数と生殖腺の組織学的観察の結果,産卵期は4 月から 8 月,産卵盛期は6 月から7 月と推定された。50%成熟体長は,雄で135 mm,雌で196 mm と推定された。 生物学的最小形は,雄で123 mm,雌で156 mm とそれぞれ推定された。

  • 田中 照佳, 奥 幸次, 本領 智記, 高岡 治, Amal Kumar Biswas, 滝井 健二
    原稿種別: 原著論文
    2019 年 67 巻 2 号 p. 117-125
    発行日: 2019/06/20
    公開日: 2020/06/20
    ジャーナル フリー

    本研究では,0-32日齢クロマグロ仔稚魚のサンプリングを行い,これらにおける標準体長と体重,栄養組成および組織特異的酵素活性の測定を行った。標準体長や体重の増加に伴い,水分量(%)は減少したがタンパク質量(%)は増加した。また,骨吸収マーカーに比べ骨形成マーカーの活性が高いことから,クロマグロ仔稚魚において骨の石灰化が促進されていることが示唆された。

  • 三浦 正之, 山本 剛史, 小澤 諒, 岡崎 巧, 村下 幸司, 奥 宏海, 松成 宏之, 古板 博文, 間野 伸宏, 鈴木 伸洋
    原稿種別: 原著論文
    2019 年 67 巻 2 号 p. 127-138
    発行日: 2019/06/20
    公開日: 2020/06/20
    ジャーナル フリー

    将来的な低魚粉時代に対応するため,山梨県が継代飼育しているニジマスにおける低魚粉飼料の利用性を知見が豊富な醒井系と比較するとともに,低魚粉飼料により成長選抜して交配する有効性について検討した。魚粉50%および植物性原料主体の魚粉5%飼料を飽食量与えた山梨系稚魚の飼育成績は醒井系と同等であったが,魚粉5%飼料における摂餌性や比肝重値がやや劣り,消化吸収率や肝臓と腸管の組織状態がやや優れた。一方,魚粉5%飼料で選抜・交配して得られた山梨系 F1 稚魚では両飼料とも摂餌性が向上して通常の山梨系に比べて成長や飼料効率が改善したが,胆汁生理等に顕著な改善は見られなかった。さらに魚粉5%飼料を制限給餌したところ,選抜 F1 稚魚では成長とともに飼料効率が改善した。以上のことから低魚粉飼料の利用性は家系により特徴があり,山梨系ニジマスでは低魚粉飼料により選抜交配を継続することが有効であることが示唆された。

  • Viliame Waqalevu, 松井 英明, 本田 晃伸, Serge Dossou, 山本 淳, 塩崎 一弘, 小谷 知也
    原稿種別: 原著論文
    2019 年 67 巻 2 号 p. 139-155
    発行日: 2019/06/20
    公開日: 2020/06/20
    ジャーナル フリー

    Brachionus plicatilis 複合種 SS および L 型に及ぼす3 種の栄養強化剤(DHA 強化クロレラ,冷凍ナンノクロロプシスおよび乳化筋子油)の餌料効果を比べた(対照区:濃縮淡水クロレラ)。両型ワムシの増殖速度と脂肪酸含量は試験区間で変化した。 非極性脂質と極性脂質の含量はワムシ型間で変化した。可溶性タンパク質は両型で DHA 強化クロレラおよび生クロレラ給餌で多かった。冷凍ナンノクロロプシスを除いた全ての試験区で,SS 型の可溶性タンパク質含量は L 型よりも高かった。 ワムシ型に応じて,培養方法,強化剤の投与量および脂肪酸要求量を考慮する必要がある。

  • 中川 亨, 松成 宏之, 横田 高士, 田中 寛繁, 船本 鉄一郎, 伊藤 明, 山本 剛史, 鵜沼 辰哉
    原稿種別: 原著論文
    2019 年 67 巻 2 号 p. 157-170
    発行日: 2019/06/20
    公開日: 2020/06/20
    ジャーナル フリー

    スケトウダラの個体群動態を把握するには,野外調査から得られる生物情報を環境制御下での飼育実験により補うことが有効である。しかし,本種を卵から稚魚まで飼育する技術には,未だ改良の余地がある。本研究では,タウリン強化した初期生物餌料がスケトウダラ仔魚の生残と成長に及ぼす影響を調べた。実験1では未強化または400 mg/ml で強化したワムシを摂餌開始からふ化22-23日後まで与え,実験2では未強化または800 mg/ml で強化したワムシとアルテミアをふ化55日後まで与えた。いずれの実験でも,未強化区と比べてタウリン強化区の仔魚では生残と成長が改善された。また,強化区の仔魚では成長速度と魚体のタウリン含量が天然仔魚とほぼ同等であった。以上の結果から,タウリン強化した初期生物餌料はスケトウダラ仔魚の飼育成績を改善する効果があり,本種の仔稚魚期における飼育実験に必要な実験魚の安定供給に繋がると考えられた。

短報
資料
  • 後藤 孝信, 菊地 拓也, 原田 太一, 柳澤 元紀, 桑原 卓哉, 田中 祐, 市橋 秋人, 遠藤 直貴
    原稿種別: 資料
    2019 年 67 巻 2 号 p. 183-189
    発行日: 2019/06/20
    公開日: 2020/06/20
    ジャーナル フリー

    胆汁塩とタウリンの生合成の関係を調べるため,ブルーギルにコレスチラミン,およびタウリンまたはグリシンの抱合したコール酸を与えて,胆のう胆汁酸,筋肉アミノ酸と肝臓の酵素活性を分析した。
    コレスチラミンでは,その投与量に依存して胆のう胆汁酸量は著しく減少したが,タウリン生合成の要であるシステインスルフィン酸脱炭酸酵素の活性は変化せず,それに代わってアラニントランスアミナーゼ活性が低下した。
    抱合胆汁酸の投与では,飼料摂取量の低下による魚体重の低下がみられたが,投与した胆汁酸は胆のう胆汁酸の主成分として検出された。しかしながら,システインスルフィン酸脱炭酸酵素の活性は変動しなかった。
    以上のことから,体内の抱合胆汁酸量の変化はブルーギルのタウリン生合成に影響を与えず,この魚種のタウリンとその抱合胆汁酸は,含硫アミノ酸とコレステロールの排泄形態として主に機能している可能性が示された。

  • 片平 浩孝, 山本 敦也, 増渕 隆仁, 今津 雄一郎, 山口 泰代, 渡邊 典浩, 金岩 稔
    原稿種別: 資料
    2019 年 67 巻 2 号 p. 191-195
    発行日: 2019/06/20
    公開日: 2020/06/20
    ジャーナル フリー

    アユ冷水病の蔓延を防ぐためには遊漁者の協力が不可欠であるが,現場でどの程度理解を得られているのか未だ把握されていない。そこで本稿では,三重県内のアユ釣り大会開催に際し集積されてきた意識調査を報告する。2015年から2018年にかけて集められた総回答数598件(回答者343名)のうち,冷水病への対策を講じているとの回答は393件(65.7%),対策なしとの回答が135件(22.6%)であった。調査期間内で追跡できた回答者のうち,22名で対策を講じる意識改善が見られたが,反対に20名が対策をやめるか不明となる変化も見られた。これらの結果は,冷水病への当事者意識は未だ十分ではなく,さらなる普及啓発が必要であることを示唆している。

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