水産増殖
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48 巻, 4 号
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  • 芹澤 如比古, 田井野 清也, 大野 正夫
    2000 年 48 巻 4 号 p. 597-601
    発行日: 2000/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    土佐湾須崎地先の水深約6mの岩礁上に生育する有用紅藻トサカノリの群落について生態学的な調査を行った。生育場所の環境は水温が15.7-27.3℃,塩分が33.7-35.8PSU,PO4-P濃度が0.7μg-at/l以下,DIN濃度の最高値は4.3μg-at/lであり,暖海的な土佐湾の外海の特徴を示した。トサカノリの被度は4月に最大の80%となり,夏季から秋季にかけて減少し,晩秋から春季にかけて上昇した。現存量は5月に最大値2.1kgw.w./m2に達し,葉長は7月に最大の20.5cmとなった。9-10月まで生残している成体は稀であり,新規加入の幼体は10月下旬から見られた。果胞子嚢を持つ個体は4-7月まで観察されたが,胞子放出実験の結果,果胞子は6月下旬から7月に放出され,四分胞子は7月に放出された。果胞子と四分胞子は12時間以上にわたって大量に放出され続けた。
  • 加藤 憲司, 柳川 利夫
    2000 年 48 巻 4 号 p. 603-608
    発行日: 2000/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    熊野川水系上流部の山上川では,大正末期から昭和初期と推定される時期にニジマスが放流され,放流地点付近の約800mの区間が禁漁区に設定された。その後同川では,追加放流が行われていないと考えられるにもかかわらず,現在まで良好な自然繁殖と高密度の個体群が維持されていることが確認された。
    同川の河川環境は,ニジマスの原産地であるカリフォルニアの河川,多摩川水系のニジマス自然産卵河川のそれと類似しており,自然繁殖に適した条件を備えているものと思われた。また,山上川のニジマスの大半は禁漁区内に生息しており,その上・下流域に接する漁区内では生息数が大幅に減少することから,徹底した禁漁の遵守がこの自然繁殖と高密度個体群の維持を可能にしたものと考える。
  • 宮崎 康幸, 原田 勝彦, 前田 弘
    2000 年 48 巻 4 号 p. 609-614
    発行日: 2000/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    釣り餌素材の水抽出液をしみ込ませたガーゼのある区画に出入りする累積個体数にロジスティック曲線をあてはめ,求められた曲線の係数の各々が表す意味からブリに対する摂餌誘引効果を多角的に評価した。係数の問には有意とみなせる相関を示す組み合わせが多く,目的とする特性以外にも注意しなければならないことが分かった。また,1つか2つの飼料に関する係数が離れているため相関が有意とみなせなかったが,それを除くと有意とみなせる相関を示す組み合わせも多かった。さらに,その直線関係から離れた素材は特徴的な摂餌誘引特性を持っているので餌選択の指針となることが明かとなった。
    こうした素材の例として,ベッコウカサガイおよびヘイケガニが挙げられ,これらの素材はブリを長時間かかって多数誘引する特性を有しているため,そのような特性が活かされる漁法には適しているが,短時間に集魚しようとする釣り餌としては必ずしも適切であるとは考えられない。
  • 山口 一彦, 中村 智幸, 丸山 隆
    2000 年 48 巻 4 号 p. 615-622
    発行日: 2000/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    1992年3~8月と1993年4~8月に,利根川水系鬼怒川上流の八汐湖(川治ダム背水面人工湖)において,降湖型サクラマスの天然魚と放流魚の年齢組成,性比,成長,食性を調査した。天然魚は1歳魚と2歳魚で構成され,放流魚は1歳魚のみで構成されていた。性比は両系統ともに雌に偏っていた。1993年の天然1歳魚の雌についてみると,体長と体重は4月から8月にかけて増加が見られず,肥満度は春季(4~5月)に比べて夏季(6~8月)のほうが低かった。生殖腺指数は3月から7月にかけてほとんど変化しなかったが,7月から8月にかけて増加した。天然魚,放流魚ともに消化管内容物はワカサギが優占していた。他の水域と比較すると八汐湖のサクラマスは体長が小さく,この原因としてワカサギやサクラマスの餌となる他の小魚の生息数の少ないことが考えられた。
  • Md. Sirajul ISLAM, 諸喜田 茂充, 藤田 喜久
    2000 年 48 巻 4 号 p. 623-630
    発行日: 2000/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    ガザミ科に属するイシガニ類の一種,ワタリイシガニのゾエア期からメガロパ期までの幼生発達における飼育水の最適塩分を室内飼育実験により明らかにした。飼育水を0‰から35‰まで‰ごとに区分した計8の実験区を設置し,幼生の発達,生存率,各齢期の日数を調べた。ゾエア幼生からメガロパ幼生への変態は,20~35‰の塩分条件下でのみ観察された。各実験区におけるメガロパ変態までに要した最短日数は,20‰で44日,25‰で38日,30‰で28日,35‰で36日であった。0~10‰の低塩分下においては,ゾエア幼生は次の齢期に脱皮することなくすべて死亡した。生存率は25~35‰の条件下で高い値を示し,他の実験区に対する有意差が認められた。以上の結果より,ワタリイシガニの幼生は20~35‰の塩分条件下で生育可能であるが,飼育における最適塩分は30%。であると考えられる。
  • 滝井 健二, 秋山 真一, 前田 初音, 瀬岡 学, 中村 元二, 熊井 英水, 三鬼 基史, 栗藤 和治
    2000 年 48 巻 4 号 p. 631-636
    発行日: 2000/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    飼育水の塩分濃度を32および24に,飼育密度を2および4kg/m3に,それぞれ設定して組み合わせた4飼育条件下(32s-2d,32s-4d,24s-2dおよび24s-4d)で,平均体重40gのマダイ稚魚に20日間飽食給与して飼育し,この間の消化率,増重量,体成分の変化から,飼育水の塩分濃度と飼育密度がエネルギー収支に及ぼす影響を明らかにしようとした。なお,32s-2dおよび24s-2dの絶食区も同様にして設けた。飼育密度の違いは可消化,代謝および成長エネルギーに大きな影響を及ぼさなかったが,塩分濃度の低下によって標準代謝エネルギーは減少し,逆に熱量増加+活動エネルギーは増大した。以上の結果からマダイにおいては,浸透圧調節に係わるエネルギー消費の減少は,単純に成長エネルギーを増加させないことが示唆された。
  • 柏木 正章, 近藤 茂則, 吉田 渡, 吉岡 基
    2000 年 48 巻 4 号 p. 637-642
    発行日: 2000/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    シロギスSillago japonicaの1細胞期の受精卵を水温(20,24,28,32℃)と塩分(23,29,35,45,50,55,60PSU)の組合せにおいてインキュベートし,正常ふ化率とふ化までの時間を測定した。32℃では,いずれもふ化しなかった。それ以外は,20℃-55PSUと20℃-60PSUの組合せを除き,ふ化がみられた。ふ化率は水温,塩分および両要因の交互作用の影響を強く受けた。応答曲面法により,ふ化最適条件は24.7℃-39.1PSU,このときの高温側LT50は30.4℃,低塩分側LC50は23.3PSU,高塩分側LC50は54.8PSUと推定された。したがって,シロギス卵は広塩性と考えられた。インキュベート開始から卵の50%がふ化するまでの時間は17.3~45.2時間で,水温,塩分および交互作用の影響を受けた。ただし塩分の影響は水温のそれと比べて著しく小さかった。
  • 中川 平介, 海野 徹也, 林 希彦, 佐々木 敏之, 岡田 賢治
    2000 年 48 巻 4 号 p. 643-648
    発行日: 2000/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    20mmサイズのクロダイの放流後の体成分の変化から天然環境への順化過程を調べた。筋肉タンパク質量は人工生産魚と天然魚には差異はなく,放流後も同様であった。タンパク質合成の指標としての肝臓のRNA/DNA比は人工生産魚が低かったが放流後15日以降差異は消失した。トリグリセリドは人工生産魚が天然魚より有意に高く,リン脂質は逆であったが,放流後5日以内に天然魚と同レベルとなった。放流種苗と天然魚の間に顕著な脂質含量とn-3脂肪酸量の差が認められた。EPA,DHA量は人工生産魚が低かったが,放流後5日以内に天然魚と同レベルとなった。20mmサイズの放流魚は短期間に環境に順化していることが確認された。
  • 齋藤 三四郎, 越塩 俊介, 原田 宏, 渡部 一憲, 吉田 岳史, 手島 新一, 石川 学
    2000 年 48 巻 4 号 p. 649-655
    発行日: 2000/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    2軸エクストルーダー処理脱脂大豆(EX-SBM)の餌料価値を評価し,魚粉の代替率を検討する目的で,クルマエビ,Penaeus japonicusの成長試験を行った。EX-SBMはニーディングディスクを用いた軸を使用して処理を施し,大豆の抗原性を6.7U/10mgまで低減した。飼料中の魚粉の含有量を39%-18%に,EX-SBMの含有量を0-32%に変化させた5つの飼料を調製し,0.5g,5gの各サイズのクルマエビに対して,それぞれ体重の8-10%,4-5%の餌を給餌する2回の飼育試験を行った。
    試験1,試験2ともに成長が良く,斃死率も低く,EX-SBMを含有する全ての飼料区において対照魚粉区と同様の成長が見られた。以上の結果から,抗原性が低減化された脱脂大豆は32%まで魚粉と置き換えても成長の阻害が起こらず,甲殻類の餌として魚粉の代替となり得ることが明らかとなった。
  • 岡田 一宏, 西村 守央, 河村 剛
    2000 年 48 巻 4 号 p. 657-663
    発行日: 2000/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    当歳貝と一歳貝および親貝が同時に飼育されている浜島施設において当歳貝に死亡率50%以上の大きな被害を毎年与えている筋萎縮症の防除対策として,新規に開設された尾鷲施設においては洗浄された受精卵を搬入して当歳貝のみを生産する,いわゆる,オールイン・オールアウト方式を採用した。その結果,以後3年間,尾鷲施設においては筋萎縮症の発生はなく,当歳貝の水温上昇期における死亡率は各年とも5%未満であった。
    また,尾鷲施設で生産された当歳貝を水温上昇期に浜島施設に移動し,一歳貝と同じ水槽内で飼育した結果,これらには筋萎縮症による大量死(死亡率24~70%)が発生した。以上の結果から,浜島施設の一歳貝は筋萎縮症の主要な伝染源であることが確認され,当歳貝の隔離飼育は筋萎縮症防除対策として有効であると判断された。
  • Estu NUGROHO, 谷口 順彦, 家戸 敬太郎, 宮下 盛
    2000 年 48 巻 4 号 p. 665-674
    発行日: 2000/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    カンパチ養殖で使われている国内および外国由来の天然種苗の遺伝的多様性を調べた。また,比較のため日本の沿岸で採捕された幼魚および人工種苗の遺伝的多様性を評価した。遺伝マーカーとして,マイクロサテライトDNA多型およびmtDNADループ領域多型を採用した。1遺伝子座あたりの対立遺伝子数の平均値は,養殖場のサンプルが10.3,天然採捕サンプルが11.5,平均異型接合体率の観察値(期待値)はそれぞれ0.701(0.778),0.654(0.738),0.532(0.540)であった。ハプロタイプ数は33検出され,多様性指数は著しく高かった。遺伝的多様性指数は野生種苗で高く,人工種苗では著しく低下していることが判明した。また,Neiの集団問の遺伝的距離に基づく分岐図より,外国産種苗には日本産天然種苗と類似性の高いグループと著しく異なるグループの少なくとも2集団の存在が示唆された。
  • 松岡 正信
    2000 年 48 巻 4 号 p. 675-676
    発行日: 2000/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    The occurrence of a deformity of the internostril epidermis was examined in wild and three groups of artificially reared black sea bream, Acanthopagrus schlegeli. The wild juvenile specimens and all of two groups of the reared specimens had normal nostrils. One group of reared specimens contained 24% of specimens with the deformity of the inter-nostril epidermis. The percentage with the deformity is considerably lower than in the red sea bream, Pagrus major.
  • 村田 修, 家戸 敬太郎, 那須 敏朗, 宮下 盛, 和泉 健一, 熊井 英水
    2000 年 48 巻 4 号 p. 677-678
    発行日: 2000/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    Chemical compositions of the dorsal muscle of hybrids, yellowtail, Seriola quinqueradiata _??_ × goldstriped amberjack S. aureovittata _??_ (termed as YG) and purplish amberjack S.dumerili_??_ × goldstriped amberjack _??_(termed as PG) were compared with each parents fish species. The lipid content of YG was remarkably higher than that of goldstriped amberjack. In collagen content concerning texture, though YG was lower than goldstriped amberjack, it was significantly higher than yellowtail. Crude protein, total extractive nitrogen and collagen content of PG showed the intermediate value of the parents fish species.
  • 横尾 一成, 川村 嘉応, 川原 逸朗, 東條 元昭, 水上 譲
    2000 年 48 巻 4 号 p. 679-680
    発行日: 2000/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    Oospores of Pythium porphyrae in sterile sediments were detected by using PCR technique. In the PCR reactions, the 10-mer arbitrary primer (OPB-07) and one pair of 24-mer primers were used. The latter primers were designed from the DNA sequence data of P. porphyrae genomic DNA, and desingnated as AP-I and II. DNA of oospores in sterile sediments were amplified by the OPB-07 primer in the 1st PCR. However, the quantity of amplified DNA was found to be not significant. Detectable amounts and the products of expected sizes for P. porphyrae were amplified in the 2nd PCR (Nested PCR) using AP-I and II primers. These results indicate that the PCR primers developed in this study are useful for the detection of P. porphyrae oospores in sediments.
  • 2000 年 48 巻 4 号 p. 681-722
    発行日: 2000/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
  • 講演要旨集
    2000 年 48 巻 4 号 p. 724-734
    発行日: 2000/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
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