水産増殖
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62 巻, 3 号
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原著論文
  • 吉川 貴志, 西村 真
    2014 年 62 巻 3 号 p. 229-234
    発行日: 2014/09/20
    公開日: 2015/09/20
    ジャーナル フリー
    我が国においてマダイ Pagrus major の後期仔魚は,有害化学物質の海産魚類に対する急性毒性試験において,供試生物として推奨されている。しかしながら,急性毒性試験の標準被検物質である六価クロムについて,本種に対する毒性影響の知見は公表されておらず,参照すべき毒性データが整備されていない現状にある。このため,環境省の試験指針に準拠し,六価クロムの本種仔魚に対する急性毒性試験を実施した。得られた半数致死濃度は,24時間暴露に対して28 mg/l,48時間の暴露に対しては17 mg/l であると推定された。他の海産魚と比較して,六価クロムに対する本種の感受性は高いものであると判断された。
  • 南 洋一, 吉国 通庸
    2014 年 62 巻 3 号 p. 235-242
    発行日: 2014/09/20
    公開日: 2015/09/20
    ジャーナル フリー
    沖縄県塩屋漁港周辺海域において2010年9月から2011年9月にかけてハネジナマコを毎月採捕してデータ収集した。生殖巣重量指数のピークと減少時期,卵母細胞の大きさの推移,成熟期あるいは一部放出期を示す組織像の出現頻度などからハネジナマコの主な産卵期は,5月から10月であることが明らかとなった。個体の体重と生殖巣重量指数の関係から,体重が600 g 以下の個体は性的に未成熟であることが明らかとなった。
  • 浜岡 秀樹, 宮崎 寛史, 南口 哲也, 赤松 大雅, 柴田 淳也, 大森 浩二
    2014 年 62 巻 3 号 p. 243-251
    発行日: 2014/09/20
    公開日: 2015/09/20
    ジャーナル フリー
    瀬戸内海西部に生息するタチウオ Trichiurus japonicus の餌資源特性を明らかにするため環境特性の異なる4海域から試料を集め,安定同位体比分析と胃内容分析によって T. japonicus の食性を海域間で比較した。その結果,T. japonicus の食性は海域間で異なっていたが,これは胃内容物の時空間的なばらつきによる影響と考えられた。また,安定同位体比に基づく栄養段階と胃内容から推測される栄養ニッチは一致していなかった。そのため,胃内容物による魚類の食性解析にはより多くの採集努力が必要と考えられた。一方で,胃内容分析では検出できなかった海域間での栄養炭素経路の違いを安定同位体比分析では検出することができた。この結果は西部瀬戸内海における基礎生産構造に関する先行研究と一致しており,安定同位体比分析はより少ない採集努力で魚類の食性を効率的に理解することができる手法であると考えられた。
  • 宮本 幸太, 中村 智幸
    2014 年 62 巻 3 号 p. 253-258
    発行日: 2014/09/20
    公開日: 2015/09/20
    ジャーナル フリー
    釣られにくいヤマメを養殖するため,飼育水槽の遮光の有無と給餌方法の違い(手撒き,自動給餌器使用)がヤマメ当歳魚の釣獲特性に与える影響を実験池で検証した。その結果,遮光飼育群では,釣獲された魚の数と釣獲されないが釣り餌を銜えた魚の数の合計値が有意に少なく,遮光飼育は釣られにくい魚の養殖に有効であると考えられた。
  • 橋本 博, 林 知宏, 浜崎 活幸, 甲斐 勲, 外薗 博人, 中村 章彦, 岩崎 隆志, 照屋 和久, 浜田 和久, 虫明 敬一
    2014 年 62 巻 3 号 p. 259-271
    発行日: 2014/09/20
    公開日: 2015/09/20
    ジャーナル フリー
    種苗生産飼育におけるカンパチ仔稚魚の攻撃行動および共食いの実態を把握するため,カンパチ仔稚魚の成長,死亡状況,追尾行動とつつき行動および捕食魚と被食魚の体サイズの関係を調べた。カンパチ仔稚魚の追尾行動は大型個体が稚魚期へ変態する18~19日齢頃から発現した。仔稚魚の体高,口径および口幅から推定した捕食可能サイズと,実際の攻撃個体と被攻撃個体,捕食魚と被食魚,および共倒れが起こった捕食魚と被食魚の全長の関係より,“攻撃行動および共食い”(追尾行動およびつつき行動,共倒れ,呑み込み)を許す体サイズ差[捕食魚(10.0~48.8 mm)と被食魚(4.4~25.5 mm)の全長比]は,追尾行動およびつつき行動が0.75以下,共倒れが0.63以下,呑み込みが0.35以下であると推定された。飼育魚の体サイズ差および大型個体の稚魚期への変態により攻撃性が発現し,小型個体の死亡に至ることが確認された。
  • 貝田 雅志
    2014 年 62 巻 3 号 p. 273-278
    発行日: 2014/09/20
    公開日: 2015/09/20
    ジャーナル フリー
    オニオコゼ仔稚魚の咽頭歯を組織学的に観察し,発生過程を検討した。本種の咽頭歯は多性歯性で,脊椎動物の一般的な歯の形成と同様の過程を経て形成された。上咽頭歯は Stage C(孵化後8日),下咽頭歯は Stage E(孵化後 14日)に植立し,両咽頭歯とも底生生活に移行する前に基本的構造が完成した。また,上咽頭歯は咽頭上部領域の外側両端に,下咽頭歯では下部中央に歯群を形成して,不対合をなすことや,蝶番性結合を示すことが明らかとなった。このことは,餌の保持を効率的にしていると考えられ,底生移行後,魚食性が高まることに対応していると推測された。
  • 野呂 恭成, 桜井 泰憲
    2014 年 62 巻 3 号 p. 279-287
    発行日: 2014/09/20
    公開日: 2015/09/20
    ジャーナル フリー
    津軽海峡周辺海域に分布するミズダコの性成熟と生殖周期について,1989年11月~1997年5月までに採集した雄598個体,雌515個体,合計1,113個体を用いて調べた。雄の熟度判別基準は,精莢の有無と長さ,雌のそれは卵巣の色調とした。雄の未熟個体は周年,半熟個体は3~12月,成熟個体は11~5月,雌の未熟個体は周年,成熟個体は12~5月に出現した。雄の最小成熟体重は9.8 kg で3月以降大型化した。雌の最小成熟体重は8.5 kg で1~5月にかけほぼ同じ大きさであった。雌の交接個体は11~4月に出現し,最小既交接体重は10.6 kg で1月以降ほぼ同じ大きさであった。雌成熟65個体中既交接は23個体で,交接率は35%であった。
  • 川辺 勝俊, 河野 博
    2014 年 62 巻 3 号 p. 289-294
    発行日: 2014/09/20
    公開日: 2015/09/20
    ジャーナル フリー
    アカハタ中間育成時の効率的な給餌回数と収容密度を生残率,成長,飼料転換効率を指標として検討した。全長5~9 cm サイズでは給餌回数と生残率の間には相関は認められなかった。日間成長率は1回/2日給餌区と1回/日給餌区より2~5回/日給餌区が高い傾向がみられた。飼料転換効率は給餌回数の増加とともに減少傾向を示した。全長9~12 cm サイズでは,生残率は1~3回/日給餌区が1回/2~4回給餌区より高かった。日間成長率は1~3回/日給餌区が1回/2~4日給餌区より高い傾向がみられた。飼料転換効率は給餌回数の増加にともなって低下する傾向がみられた。全長5~10 cm サイズにおける収容密度(100~3,200尾/kl)と日間成長率には相関は認められなかった。生残率は3,200尾/kl 区が800~1,600尾/kl より低下し,飼料転換効率は100尾/kl 区が他の区より低い傾向がみられた。
  • 水藤 勝喜, 奥村 卓二, 山根 史裕, 柘植 朝太郎, 小椋 友介, 山野 恵祐
    2014 年 62 巻 3 号 p. 295-305
    発行日: 2014/09/20
    公開日: 2015/09/20
    ジャーナル フリー
    西部遠州灘で9月から翌年3月までに採取した経産個体とみられるクルマエビの卵巣は,組織観察により休止期,内因性卵黄蓄積期,外因性卵黄蓄積期,成熟期,産卵後期,退縮期 Type A および同 Type B に区別された。これらの出現状況から当海域におけるクルマエビの卵黄形成は11月に終息して翌年2月に再開することが明らかとなり,産卵期は3月から11月と推定された。また,体長200 mm を超える大型の個体は,これより小さな個体よりも卵黄形成や産卵を開始する時期が早い傾向が認められた。
  • 友田 努, 團 重樹
    2014 年 62 巻 3 号 p. 307-318
    発行日: 2014/09/20
    公開日: 2015/09/20
    ジャーナル フリー
    低温馴致(12°C)したワムシを用いてマダラ仔魚の止水式飼育試験を検討した。⌈ほっとけ飼育⌋方式に準じて,ワムシ培養・栄養強化・仔魚飼育を同時並行して50 kl 飼育水槽内で行った。28~30日間の飼育期間中,9.5~11.7°Cの飼育水槽内においてもワムシ密度は徐々に増加し,概ね初期2~3回の接種で十分間に合った。全長 9 mm サイズの仔魚1万尾を生産するのに要したワムシ使用量は大幅に減少した。マダラ仔魚の成長と生残に影響を及ぼすような水質悪化は認められなかった。仔魚の成長と生残は標準的な流水式飼育と比べて遜色がなかった。飼育水中ワムシの n-3 HUFA 含量は飼育水槽に接種した二次培養ワムシよりも高くなった。また,マダラ仔魚の脂肪酸組成もそれらワムシを反映した。量産規模で低温下における止水式飼育を実証し,かつ省力化と栄養学的観点からもその有効性がうかがわれた。
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