海藻類は, 生長過程での栄養塩類吸収等による環境水の浄化作用を有する。本実験では, アナアオサ (以下アオサと略称) とクルマエビ幼生の複合飼育を試み, アオサによる環境水の浄化作用がクルマエビ幼生の成長に及ぼす影響を調べた。クルマエビ幼生の飼育は, ノウプリウスVI期幼生を50
l容のガラス製水槽に59個体/
lの密度に収容して開始した。実験区は, アオサを収容し餌としてテトラセルミスとキートセロス, およびアルテミアを与えた区 (UTC区) , アオサは収容せずテトラセルミスとキートセロス, およびアルテミアを与えた区 (TC区) , それに, アオサを収容せずテトラセルミスおよびアルテミアを与えた区 (T区) の3区を設けた。アオサは, 飼育実験開始時に, 直径1.8mmの円形のものを1水槽あたり250枚収容した。植物プランクトンはゾエアI期からIII期幼生まで投与し, ミシスI期以降はアルテミア幼生のみ与えた。水槽は各実験区とも3個ずつ用意し, 室内の窓際に設置した。実験はクルマエビ幼生がポストラーバの10日目になったところで終了した。実験終了時の生残率は, UTC区, TC区, およびT区において, 平均値でそれぞれ49.5, 33.9, および11.0%, 体長は, それぞれ12.8, 12.1, および10.8mmと, UTC区が優れていた。また, 飼育中水のNH
4-N濃度は, 実験終了時には, UTC区, TC区, およびT区でそれぞれ16.0, 67.2, および44.8μg-at/
lを示した。さらに, UTC区では, 水槽底面の沈積物が全く認められず, また粒子状縣濁物も認められなかった。なお, 実験終了時にアオサは, 実験開始時の直径約3倍に達した。
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