日本救急医学会雑誌
Online ISSN : 1883-3772
Print ISSN : 0915-924X
ISSN-L : 0915-924X
8 巻, 4 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 桂田 菊嗣, 上嶋 権兵衛
    1997 年 8 巻 4 号 p. 131-137
    発行日: 1997/04/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    平成4年7月からわが国の消防機関において救急救命士の活動がはじまっている。現在のところ救急救命士の配置には地域差があり,まだ育成段階であるが今後の方策に役立てるべく,救急救命士による病院外心肺機能停止に対する蘇生実績を検討する機会を得た。なお,この調査は消防庁の救急業務高度化推進検討委員会によるものであり,病院外心肺機能停止に対する救急隊活動の全国的調査としても初めてのものである。平成6年7月から12月までの6ヵ月間に,救急救命士の運用されている全国145消防本部が扱った心肺機能停止(心肺蘇生を行ったもの,ただし外傷他外因性のものを含むすべて)は計31,206例であり,これが調査対象である。これら対象について,目撃者の有無,市民等による救命手当ての有無,一般の救急隊員が対応した場合と救急救命士が対応した場合による,病院到着時心拍再開,7日後生存,1ヵ月後生存の頻度を検討した。心肺機能停止の目撃された割合は全体の48.4%,市民等によって救命手当てが行われていたものはわずか13.4%であった。全対象の心肺蘇生結果は心拍再開率11.4%, 7日後生存4.4%, 1ヵ月後生存2.6%であった。ただし目撃された,あるいは救命手当ての行われた心肺機能停止では,そうでない場合に比べて患者転帰は明らかに良好であった。また救急救命士が対応した場合の成績は,救急隊員の場合と比べて,統計学的有意差をもって良好であった。目撃された心肺機能停止に対して救急救命士が心肺蘇生を行った場合には,心拍再開,7日後生存,1ヵ月後生存はそれぞれ21.8%, 9.6%, 6.0%であった。今後統一した統計基準が作成されるとともに,プレホスピタルケアと病院治療の一貫性をもった蘇生成績が,さらに正確に検討されることが必要と考えられる。
  • 伊佐 之孝, 国元 文生, 荒井 賢一, 小谷野 哲也, 藤田 達士
    1997 年 8 巻 4 号 p. 138-144
    発行日: 1997/04/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    群馬大学集中治療部に入室した患者25名を対象に可溶性ICAM-1(以下sICAM-1と略す)血中濃度と可溶性ELAM-1(以下sELAM-1と略す)血中濃度と臓器障害との関連を検討した。各臓器別障害基準は群馬大学集中治療部で作成した基準で,(1)中枢神経;JCS>10,(2)肺;P/F ratio<250mmHg,(3)心;DOA+DOB≧5μg/kg/min,(4)肝;T. Bil.>3mg/dl,(5)腎;p-Cr>2mg/dl,(6)DIC; DICスコア≧6を満たす場合を臓器不全ありとした。対象患者25名は0臓器不全6名,1臓器不全7名,2臓器不全4名,3臓器不全2名,4臓器不全3名,5臓器不全3名,および6臓器不全なしであった。多臓器不全(以下MOFと略す)患者と1臓器不全以下の患者でのsICAM-1およびsELAM-1血中濃度の比較ではMOF患者での有意な上昇を認めた(p<0.05, unpaired t-test)。さらに不全臓器数と可溶性接着分子血中濃度を検討したところ,不全臓器数が増えるにつれて可溶性接着分子血中濃度が上昇する傾向を示した。さらに全身性炎症反応症候群(以下SIRSと略す)の有無,MOFの存在の有無で4群に分けて血中濃度との相関を検討したところ,SIRS (+)かつMOF (+)群は他の群と比較して有意な上昇を認めた(one way ANOVA, Scheffe, p<0.05)。SIRS (-)群では血中sICAM-1濃度は低く,SIRS (+)群でも血中sICAM-1濃度が低い症例はMOFを認めなかった。臓器別の検討では,sICAM-1血中濃度はCNS, DIC,肝障害,肺障害で有意の上昇を示した(p<0.05, unpaired t-test)。またsELAM-1血中濃度はDICと腎障害で有意の上昇を示した(p<0.05)。SIRSのMOF患者の臓器症状の発症に可溶性接着分子の関与が示唆された。
  • 澤野 誠, 大原 毅
    1997 年 8 巻 4 号 p. 145-160
    発行日: 1997/04/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    外傷性腸管破裂後のGolden Timeを術後水分移動の観点から検討すること,さらに膠質液投与が水分移動に与える影響を検討することを目的とした。術後水分移動を定量化する時間的な指標としては,手術から利尿期の開始までの時間(T2-T1)を,量的な指標としては,術前から利尿期までの期間血管内より血管外に移動したが利尿期にも血管内に戻らず血管外に貯留したと考えられる水分量をLost Water (LW)と名付け用いた。対象とした小腸破裂例26例を受傷から手術まで6時間未満の群と,6時間以上の群とに分けた場合のみ,両群間でT2-T1, LW/hの両指標ともに有意差が認められた。この両群間でPEEPを必要とした期間やFIO2の最高値にも有意差が認められた。以上より術後水分移動ならびに術後呼吸器合併症の頻度からみた,外傷性腸管破裂後のGolden Timeは受傷後約6時間であると考えられた。術後24時間以内に膠質液を投与された外傷性腸管破裂症例では,非投与例との間にT2-T1には有意差が認められなかったが,Lost Water/hは有意に減少した。外傷性腸管破裂症例における水分バランス,血清抗利尿ホルモン値(ADH),血色素量(Hb),血清浸透圧(Osm)の術後変動の検討から術後利尿期へ移行する時期は,ADHが正常化する時期に一致すると考えられた。膠質液投与は術後Osmを比較的高値に保つため,ADHの低下を遅らし術後利尿期への移行をむしろ遷延させるが,血管内から血管外への水分移動を抑制し,血管外から血管内への水分移動を促進するため,利尿期以後も血管外に貯留する水分量(LW)を減少させる機序が考えられた。
  • 射場 敏明, 八木 義弘, 木所 昭夫, 福永 正氣, 百瀬 文教
    1997 年 8 巻 4 号 p. 161-167
    発行日: 1997/04/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    敗血症性臓器障害の発生には好中球-血管内皮間の相互作用が重要な役割を果たしており,とくに好中球表面のインテグリンファミリーと血管内皮細胞表面のintercellular adhesion molecule-1(以下ICAM-1と略す)の結合が重要である。最近血中にみられる可溶性のICAM-1レベルが血管内皮表面のICAM-1発現量を反映するという報告がなされた。そこで今回,敗血症患者における血中の可溶性ICAM-1(以下sICAM-1と略す)レベルを測定し,臓器障害発生との関連を検討した。対象はsepsis induced SIRS 53例で,このうち40例は臓器障害を合併し,13例では臓器障害はみられなかった。そして臓器障害合併例のうち15例は多臓器不全のため死亡した。これらの症例において経時的に血中sICAM-1レベルの測定を行い,臓器障害合併例における臓器障害発生時のsICAM-1値と,非合併例における経過中sICAM-1最高値との比較を行った。またsICAM-1を測定したものと同一検体中のinterleukin-6 (IL-6)やpolymorphonuclear leukocyte elastase (PMN-E), thrombomodulin (TM), endothelin-1 (ET-1)の測定を行い,sICAM-1値との関連を検討した.その結果,臓器障害合併例におけるsICAM-1レベルは1,040.3±495.7ng/mlで,非合併例よりも有意に高値であった(p<0.001)。また臓器障害合併例においては敗血症発生からsICAM-1値が漸増する傾向がみられた。このsICAM-1レベルの上昇に関しては,IL-6値やPMN-E値との間に明らかな相関がみられなかったことと,一方で血管内皮障害の指標であるTM値やET-1値との間に正の相関関係が認められたことから(各々p<0.01), sICAM-1レベルは血管内皮障害の程度を反映して上昇しているものと考えられた。敗血症においてsICAM-1は血管内皮障害の程度を反映し,臓器障害の発生に関与しているものと考えられた。また経時的測定を行うことによって重症度や臓器障害発生を予測する指標となり得るものと考えられた。
  • 1997 年 8 巻 4 号 p. 168
    発行日: 1997/04/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
feedback
Top