平成4年7月からわが国の消防機関において救急救命士の活動がはじまっている。現在のところ救急救命士の配置には地域差があり,まだ育成段階であるが今後の方策に役立てるべく,救急救命士による病院外心肺機能停止に対する蘇生実績を検討する機会を得た。なお,この調査は消防庁の救急業務高度化推進検討委員会によるものであり,病院外心肺機能停止に対する救急隊活動の全国的調査としても初めてのものである。平成6年7月から12月までの6ヵ月間に,救急救命士の運用されている全国145消防本部が扱った心肺機能停止(心肺蘇生を行ったもの,ただし外傷他外因性のものを含むすべて)は計31,206例であり,これが調査対象である。これら対象について,目撃者の有無,市民等による救命手当ての有無,一般の救急隊員が対応した場合と救急救命士が対応した場合による,病院到着時心拍再開,7日後生存,1ヵ月後生存の頻度を検討した。心肺機能停止の目撃された割合は全体の48.4%,市民等によって救命手当てが行われていたものはわずか13.4%であった。全対象の心肺蘇生結果は心拍再開率11.4%, 7日後生存4.4%, 1ヵ月後生存2.6%であった。ただし目撃された,あるいは救命手当ての行われた心肺機能停止では,そうでない場合に比べて患者転帰は明らかに良好であった。また救急救命士が対応した場合の成績は,救急隊員の場合と比べて,統計学的有意差をもって良好であった。目撃された心肺機能停止に対して救急救命士が心肺蘇生を行った場合には,心拍再開,7日後生存,1ヵ月後生存はそれぞれ21.8%, 9.6%, 6.0%であった。今後統一した統計基準が作成されるとともに,プレホスピタルケアと病院治療の一貫性をもった蘇生成績が,さらに正確に検討されることが必要と考えられる。
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