日本応用動物昆虫学会誌
Online ISSN : 1347-6068
Print ISSN : 0021-4914
ISSN-L : 0021-4914
31 巻, 2 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
  • I. トラップの高さと誘殺数ならびにほ場密度と誘殺数の関係
    佐藤 力郎, 柳沼 薫, 杉江 元
    1987 年 31 巻 2 号 p. 103-109
    発行日: 1987/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    1) リンゴモンハマキのフェロモントラップの高さと誘殺数の関係を検討したところ,裸地では1.0mの高さで,ナシ園では高さ2.4mで(棚上の新梢先端の高さ),そして標準的なリンゴ園でも高さ2.4m(樹冠分布量が多い高さ)での誘殺数が多かった。
    2) 水田に囲まれたナシ園および周辺からマーク虫を放飼し,園内および水田に配置されたトラップでの再捕率と再捕までの飛翔距離を調べた。再捕率は園内から放飼した場合30%程度であった。この場合,放飼当夜に,放飼地点に近いトラップで捕獲される場合が多かった。再捕までの一晩の飛翔距離は,園内および園外200m地点から放飼した場合,それぞれ41mおよび110mであり,本種の雄蛾がかなりの飛翔力をもつことが明らかとなった。
    3) ほ場での蛹殻密度とトラップでの誘殺数の関係を検討したところ,第1および第2世代では誘殺数は蛹殻密度の0.6∼1.8倍であったが,越冬世代では45倍以上と著しく多かった。この原因の一つとして,越冬世代の成虫の生存日数が他の世代よりも長いことが影響していると考えられる。
  • II. 予察灯とフェロモントラップの比較
    佐藤 力郎, 柳沼 薫, 杉江 元
    1987 年 31 巻 2 号 p. 110-115
    発行日: 1987/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    1) フェロモントラップおよび予察灯への誘殺時刻を世代別に比較したところ,越冬世代の5月下旬には19∼20時に,6月上旬には0∼1時に最も多く誘殺された。第1世代では,放飼虫および野外雄の誘殺のピーク時刻はともに2∼3時であり,予察灯での消長ともよく一致した。また,第2世代では野外雄および放飼虫のいずれの場合にもフェロモントラップでの誘殺のピーク時刻ははっきりしなかったが,予察灯では3∼4時に誘殺のピークが見られた。
    2) フェロモントラップと予察灯による雄蛾の誘殺曲線を世代別に比較したところ,第1および第2世代については両者の累積誘殺曲線の50%誘殺日および移動平均ピーク日はよく一致し,フェロモントラップが発生時期の予察に有用であることがわかった。また,越冬世代ではフェロモントラップでのこれらの時期が予察灯よりも早まる場合が多く見られた。
    3) フェロモントラップおよび予察灯での誘引性を放飼試験によって比較したところ,フェロモントラップでの放飼当夜の再捕率は,全世代の平均では32.5%で,予察灯の場合の3.6%に比べてきわめて高かった。
    4) 相互に200m程度離れたフェロモントラップと予察灯での誘殺数を世代ごとに比較したところ,越冬世代においては非常に高い相関(r2=0.977)が認められたが,他の世代では一定の傾向がなかった。
  • V. カイコガ潜成虫の羽化ホルモンに対する反応性
    普後 一, 折笠 千登世
    1987 年 31 巻 2 号 p. 116-120
    発行日: 1987/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    カイコガ潜成虫の羽化ホルモンに対する反応性と,20ヒドロキシエクダイソン(Ecd)投与の羽化におよぼす影響について検討し,以下の結果を得た。
    種々の発育段階の潜成虫に羽化ホルモンを投与し,早期羽化誘導率から羽化ホルモンに対する反応性を調べた結果,予想羽化時刻の約14∼12時間前ごろから羽化時刻に近づくにつれて,反応性は高くなることが判明した。予想羽化時刻の22時間前の潜成虫に,0.01∼10μgのEcdを注射しその後の羽化状況を調べた結果,0.01∼0.1μgの範囲では羽化日は対照区と変わらなかったが,0.5∼10μgの範囲では羽化の遅れがみられ,とくに5μg以上の注射区では対照区より2日遅れて羽化する個体が多くみられた。一方,予想羽化時刻8時間前に同様のEcd処理した個体では羽化の遅延はみられなかった。予想羽化時刻の20時間前にEcdを5μg投与された個体は,羽化ホルモンに対する反応性が低下していた。
  • 清水 進
    1987 年 31 巻 2 号 p. 121-124
    発行日: 1987/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    白きょう病菌(B. bassiana)の菌体可溶性抗原の性状を昆虫に非病原性糸状菌(Fusarium oxysporum, Fusarium lateritium, Diaporthe nomurai),昆虫病原性糸状菌(Beauveria brongniartii, Paecilomyces fumosoroseus, Paecilomyces farinosus, Nomuraea rileyi)および白きょう病菌(B. bassiana)の各血清型のそれとゲル内拡散沈降法により比較検討した。抗B. bassiana F1血清と昆虫に非病原性糸状菌の菌体可溶性抗原とは反応せず,これら糸状菌と白きょう病菌との共通抗原は検出できなかった。抗B. bassiana F1血清と昆虫病原性糸状菌の反応ではP. fumosoroseus, B. brongniartiiおよびP. farinosusに2∼3本の沈降線が生じ, B. bassianaF1との共通抗原の存在を確かめたが,N. rileyiの菌体可溶性抗原は抗B. bassiana F1血清とは反応しなかった。白きょう病菌(B. bassiana)のblastosporeの凝集反応による血清型(B1, B2,およびB3)とゲル内拡散沈降法による沈降線のパターンの結果とよく一致した。さらに,B. bassiana F1(血清型B1)の特異抗原を検出することができた。
  • 田中 福三郎, 矢吹 正, 田付 貞洋, 積木 久明, 菅野 紘男, 服部 誠, 臼井 健二, 栗原 政明, 内海 恭一, 深見 順一
    1987 年 31 巻 2 号 p. 125-133
    発行日: 1987/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    1981年から1985年まで岡山県内で,ニカメイガにおける交信攪乱法による防除効果を検討した。
    1) 越冬世代成虫に対する交信攪乱法については,成虫のおもな発生場所が水田外であり,防除効果は,処理方法を改善しない限り,十分期待できないものと考えられた。
    2) 第一世代成虫に対する交信攪乱法については,蒸発速度を高めることによって,防除効果が期待できる。
    3) 交信攪乱法に用いるディスペンサーは封入するポリエチレン細管の壁幅を厚くすることによって,蒸発速度を長期間安定化できた。
    4) 交信攪乱効果は,圃場段階では,Z-11-HDAL単独と3成分とは大差なく,ニカメイガの発生量や蒸発速度の高低が影響するものと考えられた。すなわち,少発生時には約50mg/10a/日でよいが,多発生時には100mg/10a/日以上の蒸発速度が必要であろう。
    5) 交信攪乱法の処理規模は,極端な大発生でない限り,50a以上であれば十分効果が期待できる。
    6) 高い防除効果を得るには誘引阻害率が100%,「つなぎ雌」での交尾阻害率が90%以上であることが必要であると示唆された。
    7) 処理前の被害程度と処理後の被害程度との相関は対照区で高く,処理区では低かった。これは交尾率や卵塊数との関係から交信攪乱処理に起因していると判断された。
  • 仲盛 広明
    1987 年 31 巻 2 号 p. 134-137
    発行日: 1987/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    γ線照射がウリミバエの飛翔時間,距離,速度におよぼす影響をフライトミルシステムを使って研究した。
    1) 飛翔時間は非照射虫でもっとも長く,照射線量が高くなるにつれて飛翔時間が短くなる傾向を示した。
    2) 飛翔距離は基本的には飛翔時間を反映した結果となり,照射線量が高くなるにつれて低下する傾向を示した。
    3) 飛翔速度と照射線量の間には一定の関係が認められず,照射による影響はないものと考えられた。
    以上の結果,γ線照射によって飛翔力の低下が起こり,そのなかでもとくに飛翔時間の短縮が著しいことが確認された。
  • 宮原 義雄
    1987 年 31 巻 2 号 p. 138-143
    発行日: 1987/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    アワヨトウ,コナガの岩手県盛岡市における春期の飛来をフェロモントラップを用い,アワヨトウについては,さらに糖蜜トラップも併用して調べた。3か年調査のうち2か年について,特異的な飛来がみられた。
    すなわち,アワヨトウのフェロモントラップによる初誘殺は,1982, 1983年,それぞれ,5月13日および5月7日で,同時にコナガも多数誘殺された。
    この両種の誘殺時には,2か年,共通した特徴がみられ,中国大陸長江下流域に発生した低気圧に伴う前線が,黄海,朝鮮半島,日本海を経て,北日本を通過した直後で,前線の移動に伴う飛来と考えられた。
    前線通過時の盛岡の気象条件は,風向は南々西の風を中心に,南から南西にわたり,風速は6∼8m,気温12∼14°Cで,夜半より翌朝にかけ,気温の上昇がみられ,降雨を伴った。両年,ほぼ類似した傾向であった。
  • 串田 保, 真宮 靖治, 三橋 淳
    1987 年 31 巻 2 号 p. 144-149
    発行日: 1987/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    静岡県浜北市内の畑地で採取した土壌から,コガネムシ類幼虫に強い殺虫性を示すSteinernema sp.が検出された。本線虫について,土壌害虫防除における有効性を検討するための基礎的実験を行った。実験には,コガネムシ類幼虫で継代維持して得た本線虫の感染態幼虫(JIII)を供試した。ペトリ皿とポリエチレン製カップを用いて,その中のろ紙,土壌あるいはバーク堆肥に線虫を接種し,その上にコガネムシ類幼虫を放飼した。供試した7種のコガネムシ類幼虫に対してはいずれも高い殺虫効果が示された。ドウガネブイブイ幼虫についてはJIII100頭以上の接種で効果が高かった。ハスモンヨトウの幼虫に対しても強い殺虫性が認められた。線虫接種後,死亡にいたる経過は,他のSteinernema属線虫で一般的に知られている経過に比べると長く,それはおおむね4日以上を要した。殺虫効果は17°C以上で現われ,15°C以下では供試虫の感染死亡は起こらなかった。JIIIの水懸濁液を5°Cで保存した場合,生存率の低下は急速で,20日目には10%以下となり,43日目で生存線虫はいなくなった。一方,10, 15°C保存では,100日以上経過しても生存率は95%以上を保ち,殺虫力も維持されていた。土壌やバーク堆肥中では,7°C保存,60日後において殺虫効果に変化はなかった。25°Cの場合も,10か月にわたって,高い効果が維持された。プラスチックコンテナーを用いての土壌に対するJIII施用試験から,効果の期待できる施用線虫密度は100万頭/m2以上であるとの結果が得られた。
  • 長澤 純夫, 渋谷 重夫
    1987 年 31 巻 2 号 p. 150-155
    発行日: 1987/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    合成ピレスロイド化合物のallethrin, fenvalerate, tetramcthrin, permethrinおよびphenothrinのイエバエの成虫に対する毒性はpiperonyl butoxideの併用により,21.10, 11.52, 9.70, 6.74および5.73倍まで増強されることを,HEWLETTの協力作用に関する数学的モデルy=a+b1 logz1+b2z2/(c+z2)のあてはめの結果から推定した。ここでyは致死率のプロビット,z1z2はそれぞれ主剤と協力剤の薬量,a, b1, b2およびcはパラメータである。
  • 野田 博明
    1987 年 31 巻 2 号 p. 156-161
    発行日: 1987/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    トビイロウンカがイネの株元に寄生する理由と,3種のウンカが上を向いてイネにとまる理由を知るために,ポット栽培イネや切り取ったイネにウンカを放し,虫の寄生位置や寄生姿勢を観察した。
    1) トビイロウンカの株元寄生に関与する要因として,次の二つが推定できた。一つは,イネの株元への定着性であり,もう一つは,稲株を上へ登る個体が少なく,下へ降りる個体が多いことであった。
    2) 3種のイネウンカの上向き姿勢を支配する要因として,次の三つが推定できた。一番目は,稲茎の長軸(縦)方向への定位であり,二番目は,虫の重心位置や脚の構造からみた上向き姿勢の安定性であり,三番目は,光に対する定位である。そして,水田では上方から光が入ってくるので,上向き姿勢は強化される。
  • 野里 和雄
    1987 年 31 巻 2 号 p. 162-167
    発行日: 1987/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    高知県南国市において,1984年12月∼1985年5月までの冬期に実験圃場と無加温のガラス室でオオイヌノフグリに発生したワタアブラムシの発生消長を調べた。また,発生と温度との関係を知るため,同植物上での産子数,幼虫の発育と生存率および個体数の増殖などに及ぼす温度の影響を室内で実験的に調べた。
    実験圃場におけるワタアブラムシの発生は12月上旬ではコロニー当たり個体数はごくわずかであった。その後,個体数は少し増加したが,2月まで低いレベルで推移した。これはこの期間の気温が低いことによると考えられる。なぜなら,室内の実験結果によると,温度が低いと雌成虫の産子数は少なく,また幼虫の発育も遅れ,さらに幼虫の生存率も低くなるからである。それに対して,無加温のガラス室では12月下旬からワタアブラムシの個体数はしだいに増加した。これはガラス室が圃場より気温が高かったことによると思われる。3月になると,気温が2月より上昇してきたことによりワタアブラムシの個体数は圃場でもさらに増加した。
  • 緒方 健
    1987 年 31 巻 2 号 p. 168-169
    発行日: 1987/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    Development times of Coccobius fulvus (COMPERE et ANNECKE) introduced from China for the control of the arrowhead scale were determined under five different temperature conditions. Based on the data, the developmental zero and effective cumulative temperature of this parasitoid were estimated to be 11.5°C and 373 day degrees, respectively. The number of generations in a year in Fukuoka was also estimated to be 6.
  • 白井 洋一, 村田 英一郎
    1987 年 31 巻 2 号 p. 170-172
    発行日: 1987/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    Preliminary experiments for marking adult diamond-back moths with 7 coloured and 10 fluorescent dyes were carried out in the laboratory and field cages. Two fluorescent dyes, Rhodamine-B and Uvitex-OB were found to be most suitable as markers among the 17 dyes tested in relation to the survival rates and proportion of marked moths. Other small moths, for example, the cabbage webworm were successfully marked with these two dyes.
  • 松本 要
    1987 年 31 巻 2 号 p. 172-174
    発行日: 1987/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
  • 後藤 哲雄
    1987 年 31 巻 2 号 p. 174-175
    発行日: 1987/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    The duration of the developmental period from egg to oviposition in Tetranychus viennensis ZACHER on Quercus mongolica var. grosseserrata (BLUME) was studied under constant temperature conditions at 15, 18, 20, 23 and 25°C. The developmental zero (11.42°C) and the total effective temperature (196.46 day-degrees) were determined based on the equation obtained by the least squares method. The number of generations estimated by the total effective temperature and critical photoperiod was almost the same as the empirical one (4 generations) obtained in the field in 1981.
feedback
Top