心電図 (ECG) 上のT波は, 心室筋各部位の活動電位プラトー相の電位勾配により形成され, この再分極相の電位勾配には, 心外膜 (Epi) 細胞から心筋中層に存在し活動電位持続時間 (APD) の長いM細胞, さらに心内膜 (Endo) 細胞にかけての心室筋貫壁性の電位勾配が重要であることが明らかとなってきた.M細胞, Epi細胞, Endo細胞, およびPurkinje細胞の活動電位 (AP) と貫壁性双極心電図 (ECG) の同時記録が可能な動脈灌流左室心筋切片を用いた検討によれば, 再分極時間 (activation time+APD) はEpi細胞が最短で, 心筋中層に向けて徐々に延長し, Endo下のM細胞で最長となり, 再びEndo細胞に向けて短くなる.陽性T波の終末点は最長のM細胞の再分極点に, 陽1生T波の頂点は最短のEpi細胞の再分極点に一致する.また, Endo細胞の再分極点はM細胞とEpi細胞の中間になるのに対して, Purkinje細胞の再分極点は常にT波の終末点よりも長く, 少なくとも正常T波の形成には関与していないことが明らかとなった.また, イオンチャネルを修飾する薬剤を用いたQT延長症候群モデルにより, 各遺伝型に特徴的な異常T波の成因にも貫壁性の電位勾配が関与することが明らかとなった.
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