結核
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78 巻, 5 号
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  • 小橋 吉博, 宮下 修行, 二木 芳人, 松島 敏春, 沖本 二郎, 原 義人
    2003 年 78 巻 5 号 p. 383-387
    発行日: 2003/05/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    今回私どもは, 過去10年間に当関連施設において肺結核と診断された521例の中から健康診断で発見され, 肺結核と確診がえられた43例 (8.3%) に関して臨床的検討を行った。平均年齢は54.8歳, 男性22例に対し, 女性21例で, 職業は無職が15例と最も多かった。全例, 全身状態は良好であったものの基礎疾患は18例 (41.9%) にみられ, 消化器疾患, 糖尿病の順に多くみられていた。発見動機は, 大半の症例が市町松もしくは事業主が行う定期健康診断で偶然に発見されていたが, 7例は定期外健康診断において接触者検診で発見されていた。診断は18例で喀痰で結核菌が検出されなかったため, 気管支鏡検査を行い, その検体から同定していた。画像的には分布は片側性, 病型分類はIII型, 拡がりは1が最も多くみられた。治療は, PZAを含む4剤併用療法が半数以上の症例に行われ, 予後は結核死が1例もなく良好で, 治療効果もみられていた。一般的には, 結核菌が検出されなくても臨床的に肺結核が疑われた症例には抗結核薬の投与がなされているが, 喀痰で結核菌が検出されなくとも気管支鏡を用いた診断法が有用であることから, 積極的に早期診断, 早期治療をめざしていくことが重要と考えられた。
  • MGITでの菌量定量の可能性について
    露口 一成, 池田 雄史, 中谷 光一, 坪井 知正, 佐藤 敦夫, 倉澤 卓也
    2003 年 78 巻 5 号 p. 389-393
    発行日: 2003/05/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    液体培地を用いた抗酸菌培養法であるMycobacteria Growth Indicator Tube (MGIT) 法は, 小川固形培地による培養法に比して感度, 迅速性に優れており, わが国でも近年普及しつつあるが, 一方で菌量の定量ができないという短所もある。今回われわれは, 当院におけるMGIT法の培養成績を小川法と比較するとともに, MGIT法での培養所要日数と菌量との関係につき検討した。対象は245人の患者から得られたのべ413呼吸器検体で, それぞれに対し両培養法を施行した。127検体から結核菌, 42検体からM.avtim complex (MAC), 6検体からM.kansasiiを検出した。結核菌, MACにおいて, MGIT法が小川法に比して有意に検出率が高く, 有意に培養所要日数が短かった。また, MGIT法での培養所要日数は, 結核菌, MACとも, 塗抹陰性例に比して菌量が多いと考えられる塗抹陽性例で有意に短かった。そして, 結核菌において, 小川培地上のコロニー数判明例に限ると, コロニー数とMGIT法での培養所要日数の問には有意な負の相関があった。以上より, MGIT法の優れた感度, 迅速性を再確認するとともに, MGIT法での培養所要日数による菌量の定量化の可能性が示唆された。
  • 関 なおみ
    2003 年 78 巻 5 号 p. 395-399
    発行日: 2003/05/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    近年わが国において成人集団における集団感染リスクは増加傾向にあるが, これらの事例は感染経路の同定が難しく, 予想外に感染が拡大している可能性があり, 対応に苦慮することが多い。今回当保健所が経験した中小企業での集団感染事例について, 対象年齢を60歳未満まで引き上げたツベルクリン反応検査 (以下, ツ反), 換気測定, 聞き取り調査等をもとに検討した。
    初発患者は38歳男性で病型班bII3pl, 喀痰検査はGaffky8号, 培養+ (INH耐性) であった。調査対象の事業所は2・7階に分かれ職務内容ごとに配置が異なっていた。30歳未満を対象としたツ反により, 両階合わせて感染者3名, リンパ節結核1名が発見された。このため, 対象年齢を60歳未満まで引き上げツ反を実施したところ, さらに13名が感染の疑いと判断された。
    当初の情報では, 初発患者の出入りは2階のみで7階職員との接触はほとんどないとのことであったが, 現場視察と聞き取り調査等から感染状況が推測された。都市部中小企業職員はデインジャーグループに属さないが, 定期外検診において積極的な調査の重要性が示唆された。
  • 松島 秀和, 杉田 裕, 柳沢 勉, 生方 幹夫, 黒沢 知徳, 吉田 文香, 金沢 実
    2003 年 78 巻 5 号 p. 401-406
    発行日: 2003/05/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は71歳の男性。肺結核症の治療5カ月後に呼吸不全にて入院。胸部HRCTにて両側びまん性に小葉間隔壁の肥厚を伴うスリガラス影を認めた。rifampicine, isoniazid sodium methanesulfonate (IHMS), ethambutol, ursodesoxycholic acidの内服中止のみで呼吸不全および胸部HRCT所見の改善を認めた。TBLBにて器質化肺炎の像が得られ, 気管支肺胞洗浄液 (BALF) のIHMSに対する薬剤リンパ球刺激試験 (DLST) が陽性であった。IHMS以外の内服薬を再開してもびまん性肺病変が悪化しなかったことより, IHMSによる薬剤性肺炎と診断した。肺結核症治療中の症例において, まれではあるが抗結核剤による薬剤性肺炎の発症にも注意が必要と思われた。また, 薬剤性肺炎の診断にBALFのDLSTが有用である可能性が示唆された。
  • 矢野 修一, 小林 賀奈子, 加藤 和宏, 斉藤 慎爾
    2003 年 78 巻 5 号 p. 407-410
    発行日: 2003/05/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は81歳男性。平成13年12月, 大量の心嚢水貯留による心タンポナーデ症状にて他院入院。喀痰の結核菌PCR陽性であったため, 平成14年1月, 当科紹介入院。当科入院後, 心嚢水試験穿刺を2回施行したが, 心嚢水中ADA値はそれぞれ37IU/l, 47IU/lと低値で, 心嚢水の結核菌塗抹・培養・PCRともに陰性であった。また喀痰の結核菌塗抹・培養・PCRも陰性であったため外来にて経過観察とした。しかし, 同年3月初旬より38~39℃の発熱出現し心嚢水も増加した。心嚢水試験穿刺にて心嚢水のADA値は701U/lと増加し, 喀痰PCR・培養ともに陽性となった。発疹等のため治療も順調ではなかったが, 治療後約2カ月半で心嚢水はほぼ消失した。本例は初診時, 心嚢水貯留を認めるのみで肺野病変がはっきりしなかったため結核の診断までに時間を要した。
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