結核
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81 巻, 12 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 阿野 裕美, 松本 智成, 永井 崇之, 田村 嘉孝, 吉多 仁子, 河原 邦光, 高松 勇, 露口 泉夫, 高嶋 哲也
    2006 年 81 巻 12 号 p. 709-713
    発行日: 2006/12/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    〔目的〕INHの最小発育阻止濃度(MIC)が判定保留域にある結核菌の薬剤耐性化遺伝子変異の有無を検討する。〔対象と方法〕2000年1月~2005年5月に培養陽性となったINH-MIC料定保留域(MIC1~2μg/ml)の全47菌株と,同期間内で任意に選出したMIC0.25μ9/m似下の感受性菌31株およびMIC4μg/ml以上の耐性菌41株を対象とした。MIC測定は微量液体希釈法(プロスミックMTB-1,極東製薬),薬剤耐性遺伝子の検出はDNAマイクロアレイ法(OligoArrayTM,日清紡)を用いた。〔結果〕感受性菌はすべてwildtypeで,判定保留域菌と耐性菌に7種類のINH耐性遺伝子変異が認められた。判定保留域菌47株のうち,inhA転写開始点の上流一15番のCからTへの置換が23株(48.9%),-8番のTからAへの置換が2株(4.3%),katG1778番のGからAへの置換が6株(12.8%)に認められ,さらに3株(6.4%)はkatG1778番のGからAへの置換とkatG982番のTからGへの置換を二重にもっていた。〔まとめ〕われわれは,大阪の場合には,判定保留域にある結核菌の7割がINH耐性遺伝子変異をもち,その半数以上がinhA調節領域の遺伝子変異であることを明らかにした。
  • 森野 英里子, 浅川 誉, 豊田 恵美子, 石塚 直樹, 仲 剛, 泉 信有, 加藤 康幸, 吉澤 篤人, 放生 雅章, 竹田 雄一郎, 川 ...
    2006 年 81 巻 12 号 p. 715-720
    発行日: 2006/12/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    〔目的〕当センター結核病棟では2003年1月に喀疾塗抹陽性患者の退院基準を培養陰性化から塗抹陰性化に変更した。その新基準による退院が治療効果に与える影響について検討した。〔対象と方法〕当センター結核病棟に2000年1月から2002年12月に入院し,旧基準で退院した459例(I群)と,2003年1月から2004年4月に新基準で退院した259例(II群)を,入院日数DOTS実施率,治療完遂率,1年後再発の有無について比較した。〔結果〕新基準の適応によって入院日数の中央値は84日から69日に短縮し,退院後DOTSの実施率は5.9%から40.5%に上昇した。統計的に有意とはならなかったが,治療完遂率は83.0%から86.6%に上昇し,脱落率は6.3%から3.9%に減少した。1年後再発率は両群に差を認めなかった。〔結論〕新退院基準の適用と退院後DOTSの充実により,治療完遂率・脱落率に悪影響を与えずに入院日数を短縮することができた。
  • 伊藤 邦彦, 豊田 恵美子
    2006 年 81 巻 12 号 p. 721-730
    発行日: 2006/12/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    欧米における結核患者の入退院基準を明らかにし,本邦の基準と比較考察を行った。アメリカ(USA)/ニューヨーク/カナダ/EU/イギリス(UK)/ドイツ/フランス/スペイン/イタリアの9地域を対象に,インターネット/PubMed等で入退院基準を述べた公的文書を抽出し,化学療法後の感染性推移に関する見解/入退院基準/隔離解除基準を調査した。欧米においては,化学療法開始後に感染性が消失する時期については不明であるとする見解を採る場合が多い。短期隔離やadherence確保のための入院適応も存在している場合が多く,隔離解除基準や退院基準では,患者の感染性そのものよりは,患者のもつ可能性のある接触の総合的リスク(接触者の結核の発病しやすさや,多剤耐性結核/播種性結核/結核性髄膜炎等の重篤な結核発症のリスク)を勘案して決定されているものと考えられた。欧米では外来治療に固執するのではなく柔軟な対応が可能である。米国においても初期入院治療の頻度は高く,場合によって長期の入院治療も行われている。本邦の基準は感染性に過度に偏重しているものと思われた。
  • 中下 珠緒, 本島 新司
    2006 年 81 巻 12 号 p. 731-735
    発行日: 2006/12/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    結核症では比較的まれだがSIADHの合併が報告されており,多くは粟粒結核や重症肺結核に合併したものである。今回われわれはSIADHの原因としてTHが原因と考えられる第1例を経験したので報告する。症例は76歳,女性。2004年4月より咳嗽が出現し,7月に画像上右上中肺野に浸潤影を認め,喀痰でTB.PCR陽性のため入院となった。INH,RFP,EBで治療を開始するも,第59病日にINH耐性であることが判明したため,INHをTHに変更した。THに変更後4日目より食欲低下,6日目には意識レベルがII-20に,血清ナトリウム値が113mEq/lまで低下した。診断基準と照らし合わせSIADHと診断,THをSMに変更,飲水制限,ナトリウム負荷により改善した。TH投与時期との一致性,TH中止で再発がないこと,肺結核自体は軽症でありしかも改善しているときに発症したことから,THをSIADHの原因と考えた。結核症で低ナトリウム血症を認めた場合SIADHも考慮し,またSIADHの原因として薬剤も考えることが必要である。
  • 塚原 太郎
    2006 年 81 巻 12 号 p. 737-743
    発行日: 2006/12/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    本邦において結核症対策は,いまだに今日的課題である。平成17年4月に結核予防法が改正され,健康診断の重点化などが薪たに定められた。しかしながら,現行の結核予防法には,公衆衛生上の課題,人権上の課題,法制上の課題等が指摘されている。結核予防法は今後,これらの点を踏まえつつ,感染症法に統合されてゆく方向であるが,これは生物テロや事故による感染症の蔓延を防止するための病原体等の管理体制の確立,および最新の医学的知見をもとに感染症に対して総合的な対策を実施すること,が主な目的である。平成18年3月には,その感染症法改正原案ができ,閣議決定となっている。もちろん結核予防法と感染症法が統合されることにより,より良い結核症,感染症対策が講じられることが目的であるが,まだ課題点も残されている。本稿では,結核予防法と感染症法の統合について,これまでの経過,いま何をしようとしているのか,統合により何が変わるのかということについて概説した。
  • 岡田 全司
    2006 年 81 巻 12 号 p. 745-751
    発行日: 2006/12/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    1998年,米国CDCおよびACETは新世代の結核ワクチン開発の必要性を発表した。しかしながら,BCGワクチンに代わる結核ワクチンは欧米でも臨床応用には至っていない。われわれはBCGをはるかに凌駕する100倍以上強力な結核予防ワクチン効果を示す薪しいDNAワクチン(HVJ-リポソーム/HSP65+IL-12DNA)やリコンビナント72fBCGワクチンを開発した。このワクチンは結核菌抗原特異的なキラーT細胞の分化を増強した。IFN-γ 産生T細胞の分化と増殖増強効果も示した。さらに,治療結核ワクチン効果も示した。欧米では治療ワクチンは未開発である。さらに,ヒト結核感染モデルに最も近いカニクイザルを用い,サルでも有効なHSP65DNA+IL-12DNAワクチンを世界に先駆けて開発した。リンパ球増殖反応・サイトカイン産生の増強および胸部X線所見・血沈,体重の改善効果が認められた。また生存率改善・延命効果も認められた。コントロール群の生存率は0~50%であった。一方,このDNAワクチン投与群はpriming-booster法で100%の生存率を示した。このワクチンの臨床応用を計画中である。
  • 2006 年 81 巻 12 号 p. 753-774
    発行日: 2006/12/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
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