日本呼吸器外科学会雑誌
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7 巻, 2 号
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  • 加勢田 静, 西村 嘉裕, 酒井 忠昭, 池田 高明, 深山 正久
    1993 年 7 巻 2 号 p. 104-111
    発行日: 1993/03/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    非常に稀な疾患である胸腺癌を7例経験した.組織型は扁平上皮癌が4例, 未分化癌が3例であった.術式は, 完全切除が2例, 部分切除が4例, 生検のみ行った症例が1例であった.補助療法として, 化学療法を5例, 放射線療法を6例で行った.扁平上皮癌4例のうち, 1例は, 胸腺嚢腫から発生したものと考えられる特殊なタイプであった.術後50Gyの照射を行ったところ, 再発の徴候なく, 術後10年経過した.残りの3例中, 1例は8ヵ月で他病死し, 2例は6~17ヵ月で腫瘍死した.未分化癌の1例は, 原発巣の部分切除と肺転移巣の切除を行ったのち, 照射とCDDP/BLM/VLBによる化学療法を行った.この症例は, 担癌状態で8年生存したが, 悪性リンパ腫を併発して死亡した.残りの2例は13~23ヵ月で腫瘍死した.
  • 坪田 典之, 亀山 耕太郎, 杉田 礼典, 林 栄一, 川口 仁, 谷口 清英, 岡田 貴浩, 桂 浩, 中元 賢武, 前田 昌純
    1993 年 7 巻 2 号 p. 112-117
    発行日: 1993/03/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    保存液電解質濃度 (Na+, K+濃度) の肺保存に及ぼす影響について, 家兎心肺ブロック (n=16) の自己血潅流モデルで検討した.保存液はNaClとKC1のみを用い, [Na+] + [K+] =150mEq/Lとなるよう任意に11種類作製した.8℃各保存液を30cm落差で10分間前進潅流した.8℃18時間保存後, 自己血潅流モデルで60分間潅流し機能評価した.60分間の潅流に耐え得たのは [K+] =40.2mEq/L以下の保存液を用いたグラフトであった.全グラフトについて, K濃度 (mEq/L) と (1) 前潅流液量 (ml), (2) 前潅流平均圧 (cmH2O), (3) 機能評価時の潅流平均圧 (cmH2O), (4) 酸素化能間でそれぞれ有意な回帰式を得た.K+濃度をXとする. (1) : Y=66.699×0.998x R=0.719 (p<0.01) (2) : Y=24.057×0.4190.985xR= 0.875 (P<0.01) (3) : Y=120.550×0.986x R=0.855 (P<0.01) (4) : Y=214.500x0.1620.981x R=0.855 (p<0.01) 肺保存液として高Na+低K+ 液が優れていた.
  • 湯浅 洋司, 赤荻 栄一, 金成 秀生, 中川 晴夫, 重盛 基厚
    1993 年 7 巻 2 号 p. 118-123
    発行日: 1993/03/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    症例は61歳男性.有瘻性MRSA膿胸に対して2ヵ月間胸腔ドレナージ, 洗浄を続けたが軽快せず, 開窓術を旋行した.その後MRSAは消失したが瘻孔は閉鎖せず, 創部から新たに緑膿菌の排出が続いた.そこで, 開窓部に露出していた瘻孔内に直視下にフィブリングルーを注入すると同時に瘻口に硝酸銀を塗布することにより, 無瘻化に成功した.その後, 開放腔の掻爬および広背筋弁充填術を施行して完治し得た.
  • 矢満田 健, 西村 秀紀, 小林 理, 青木 孝學, 羽生田 正行, 森本 雅巳, 疋田 仁志
    1993 年 7 巻 2 号 p. 124-130
    発行日: 1993/03/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    胸腺腫の血行性あるいはリンパ行性転移は比較的稀れとされている.最近われわれは胸腺腫にて胸腺腫および胸腺全摘出術を施行後, 5年2ヵ月, 13年10ヵ月後にそれぞれ肺転移が発見され, 再手術にて転移巣を切除し得た2症例を経験した。初回手術時の病期はそれぞれ正岡分類の病期III期, IVa期と明かな被膜浸潤を呈していたが, 組織学的に上皮細胞の異型性あるいは血管侵襲像は明かでなく, 初回手術時に転移の危険性を予測するのは困難と思われた.胸腺腫の他臓器転移例で外科治療の適応になる症例は稀れであるが, 呈示した2症例のように転移巣が肺に限局し, かつ転移巣出現までに長期間を要した症例に対しては積極的な手術も必要であろう.
  • 近間 英樹, 田中 康一, 岡田 秀司, 葉玉 哲生, 内田 雄三
    1993 年 7 巻 2 号 p. 131-136
    発行日: 1993/03/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    症例は17歳, 男性で感冒様症状にて近医を受診した際胸部X線写真で13歳時に指摘されていた縦隔腫瘍の増大が認められたため当科へ紹介された。胸部CT検査では腫瘍の内容は不均一であり, 気管を左方に上大静脈および左腕頭静脈を前方に強く圧排していた.確定診断の得られないまま手術を行なったが, 腫瘍は上大静脈に強固に癒着しており摘出は困難で, まず左腕頭静脈を切離し右房との間に人工血管にてバイパスを造設したのち, 腫瘍を完全摘出した.病理組織学的には海綿状血管腫であった.本症は良性腫瘍であるが不完全摘出例での再発の報告もあり, 血行再建術式が確立された現在, 上大静脈への癒着であれば完全摘出を試みるべきと考えている.
  • 藤原 清宏, 桑原 修, 花田 正人
    1993 年 7 巻 2 号 p. 137-142
    発行日: 1993/03/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    患者は47歳, 女性.検診で胸部異常陰影を指摘された.入院時胸部X線像で右中葉に3.0×2.7cmの銭形陰影があった.胸部CT像で腫瘤陰影は右S5に認められた.気管支鏡検査では可視範囲に異常はなく, 経気管支肺生検を行った.その組織診によって, 褐色のメラニン色素を含む異型性の強い細胞を認め, 悪性黒色腫と診断した.全身の皮膚, 粘膜に黒色腫を示唆する病変はなく, 肺原発と考えられた.右中下葉切除と縦隔リンパ節廓清を施行した.組織学所見では腫瘍細胞は類円形あるいは紡錘形で不規則に配列し, 核分裂や大型細胞も目立ちメラニン沈着もみられた.縦隔リンパ節の#4にも転移を認めた.気管支内へ浸潤増殖しているが, 気管支上皮内にいわゆるjunctional changeの像を明らかに示す所は見当たらなかった.症例は術後9ヵ月目に死亡した.剖検では, 全身転移を認めた.
  • 坪田 典之, 亀山 耕太郎, 杉田 礼典, 林 栄一, 川口 仁, 谷口 清英, 岡田 貴浩, 桂 浩, 中元 賢武, 前田 昌純
    1993 年 7 巻 2 号 p. 143-149
    発行日: 1993/03/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    症例は52歳女性, 進行性呼吸困難を主訴に来院した.40歳以降, 自然気胸を8回くり返していた.胸部単純X線像ではびまん性網状影を, 胸部CTでは全肺野に嚢胞状陰影を認め, 肺機能上, 高度の閉塞性障害と拘束性障害を呈していた.以上より, びまん性過誤腫性肺脈管筋腫症を疑った.開胸肺生検により病理学的確診を得た.生検時に胸膜癒着療法を施行後も, 術後部分的な気胸が反復した.胸腔ドレナージと胸膜癒着療法で軽快したが, 血液ガス所見も含め呼吸機能の悪化を認めた.酸素療法依存状態の末期進行例であること, 生検組織中のエストロゲンおよびプロゲステロンレセプターは共に陰性であったこと等からホルモン療法は期待し難いと判断した.非可逆性の末期的進行性肺疾患であり, 本症例では肺移植が唯一の治療法と考えられた.
  • 常塚 宣男, 清水 淳三, 小田 誠, 関戸 伸明, 和田 真也, 渡辺 洋宇
    1993 年 7 巻 2 号 p. 150-156
    発行日: 1993/03/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    症例は55歳, 女性.主訴は咳嗽.胸部X線写真にて, 右上肺野に腫瘤陰影を指摘された.術前に確定診断は得られなかったが肺癌を疑って, 右上葉切除術を施行した.切除標本の病理組織検査では形質細胞の腫瘍性増殖を認めたが, 一部にリンパ濾胞の形成, リンパ球の巣状配列を認め, 形質細胞腫とCastlemanリンパ腫-Plasma cell typeとの鑑別が問題となった.PAP法による免疫組織化学的検査の結果, IgA-λ型の単クローン性の染色性を持つ肺原発性の形質細胞腫と診断された.組織学的にCastlemanリンパ腫と類似した形質細胞腫は, われわれが調べ得た範囲では本邦3例目であるが, 肺原発の症例は過去に報告例がない.
  • 小倉 芳人, 下高原 哲朗, 西島 浩雄, 松本 英彦, 柳 正和, 島津 久明
    1993 年 7 巻 2 号 p. 157-164
    発行日: 1993/03/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    64歳, 女性.咳嗽, 呼吸困難, 血痰を主訴として来院し, 胸部X線写真で左無気肺を指摘された.胸部断層写真, CT, MRIなどにより左肺門部に径58×33mm大の腫瘤が検出され, 気管支鏡下に認められた左気管支内腔を占める黄褐色の軟らかい腫瘤の生検により血管肉腫と診断された.手術は, 左肺全摘術と肺癌のR2リンパ節郭清を施行した・腫瘍は左肺動脈を取り囲み, 肺動脈内腔は腫瘍塞栓によって完全に閉塞されていた.HE染色・鍍銀染色・免疫組織化学的染色などによって血管内皮細胞由来の血管肉腫であることが確認された.術後, 肺動脈断端・副腎・脳に再発が起こり, 放射線療法やIL-2の投与を行ったが効なく, 術後284日目に死亡した.肺の血管肉腫はきわめて稀な腫瘍であるが, 発育速度が早く, 早期に血行性転移を起こす悪性度の高い腫瘍であるので, 根治的な外科的切除に加え, 術後の慎重なfollow-upと補助榛法の実施が重要と考えられた.
  • 山川 智之, 中原 数也, 藤井 義敬, 三好 新一郎, 水田 隆俊, 武田 伸一, 南 正人, 稲田 啓次, 奥村 明之進, 末岐 博文, ...
    1993 年 7 巻 2 号 p. 165-171
    発行日: 1993/03/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    22歳の女性.胸部X線写真上, 右上肺野内側に5.5×4.0cm大の腫瘤陰影を認めた.胸部CT上ではenhance効果を伴う均一な腫瘍で, 肺腫瘍あるいは縦隔腫瘍の鑑別は困難であった.開胸術により右肺上葉の部分切除にて腫瘍を摘出しえた.病理組織所見では, Antoni A & B typeの神経鞘腫と診断された.本症例は本邦20例目の報告であり, 若干の文献的考察を加えて報告した.
  • 横手 薫美夫, 長田 博昭, 平 泰彦, 栗栖 純穂, 山手 昇, 中村 俊夫, 高木 正之
    1993 年 7 巻 2 号 p. 172-177
    発行日: 1993/03/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    妊娠に合併した30歳女性の原発性肺癌を経験した.患者は肺の異常影を指摘され, その直後に妊娠16週と診断された.入院精査の結果肺癌Stage Iと診断し, 母体が安定した妊娠24週で無事肺癌根治術を施行した.肺門縦隔リンパ節にも転移はなく, 患者は妊娠を継続し無事に児をえた.術後2年経過した時点で母親における再発もなく, 児の発育も経過良好で共に健在である.妊娠に合併した肺癌は, 進行癌でない限り, 妊娠を継続しつつ根治術を施行すべきと思われた.
  • 豊田 太, 稲葉 浩久, 太田 伸一郎, 影山 善彦, 長島 康之, 鈴木 春見
    1993 年 7 巻 2 号 p. 178-182
    発行日: 1993/03/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    血清CA19-9の上昇を伴った縦隔成熟奇形腫の2例を経験した.症例1は, 24歳の女性で, 前胸部痛, 咳嗽, 発熱にて当院を受診し, 縦隔腫瘍と診断した.血清 AFP, CEA, HCG は正常範囲であったが, CA19-9は, 958.0U/ml と高値であった.症例2は, 23歳の男性で, 検診にて胸部異常陰影を指摘され, 当科紹介となり, 縦隔腫瘍と診断した.血清CA19-9は, 47.5U/ml と上昇していた.縦隔奇形腫を疑い手術を施行した.2例とも, 摘出腫瘤の病理診断は, 膵組織を含んだ嚢胞性成熟奇形腫であった.術後, 血清CA19-9はともに正常化した.CA19-9の免疫組織染色では, 奇形腫内の嚢胞壁上皮, 膵組織等に陽性反応が認められた.CA19-9は, 嚢胞性奇形腫に膵組織を含む可能性を考膚する所見となりえるが, 腫瘍の良悪性の鑑別には応用できないと思われた.
  • 坪田 典之, 亀山 耕太郎, 杉田 礼典, 林 栄一, 川口 仁, 谷口 清英, 岡田 貴浩, 桂 浩, 中元 賢武, 前田 昌純
    1993 年 7 巻 2 号 p. 183-191
    発行日: 1993/03/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    肺移植適応患老と考えられたびまん性汎細気管支炎 (DPB) の2例を経験した.症例1は55歳女性, 症例2は60歳女性である.ともに, 咳嗽, 喀痰, 呼吸困難を主訴に来院した.症例1は抗生剤投与, 気道クリーニング等の治療を行い, 症状の改善を認めた.その後, 徐々に増悪し右心不全により5年後に再入院となった.現在, 在宅酸素療法とエリスロマイシソ療法中であるが, 呼吸不全状態は徐々に悪化している.症例2も抗生剤投与, 気道クリーニング等の治療により症状の改善を認めた.退院後もエリスロマイシソ療法中であるが, 呼吸不全状態が続き在宅酸素療法中である.2例とも, エリスロマイシン療法に反応しない進行例である.今後の増悪が予想され, 予後は不良と判断している.非可逆性の末期的進行性肺疾患であり, 肺移植が唯一の治療法と考えられた.DPBはアジア独特の疾患であり, 右心不全例の問題や至適移植時期など, 移植の適応基準の作製が急務である.
  • 成田 久仁夫, 岩波 洋, 日吉 晴久, 立花 正徳, 左近司 光明, 篠原 義智, 坪井 栄孝
    1993 年 7 巻 2 号 p. 192-198
    発行日: 1993/03/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    種々の原因で発生する食道穿孔は, 稀な疾患ながら縦隔洞炎や膿胸等を併発する重篤な疾患で, その予後は極めて不良とされる.食道内異物 (魚骨) が原因と思われる頸部食道穿孔により, 急性縦隔洞炎と左膿胸を併発した症例に対して, 右開胸下に縦隔, 胸腔の清浄とドレナージを行い, 術後も0.6%povidoneiodine生理食塩水溶液による持続洗浄を行って治癒し得た1例を報告する.症例は58歳女性, 魚骨が喉に刺さり, 高熱と激しい咽頭痛を主訴に来院した.急性扁桃腺炎の診断で抗生剤を投与したが, 急性縦隔洞炎から左膿胸を併発した.ドレナージにより左胸腔内膿汁を排液した後, 右開胸により縦隔内を郭清し, 複管式ドレーンを3本 (縦隔に2本, 右胸腔に1本) 留置して, 術後22日間にわたり縦隔, 胸腔の持続洗浄を行った.縦隔洞炎は極めて重篤な疾患であり, 早期に診断すると共に, 保存的治療にとどめず, 開胸ドレナージを行って汚染した縦隔を洗浄すべきと考える.
  • 五味渕 誠, 田中 茂夫, 山内 仁紫, 真崎 義隆, 林 晃一, 大久保 直子, 庄司 佑
    1993 年 7 巻 2 号 p. 199-204
    発行日: 1993/03/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    症例は72歳, 男性.左上葉に腺癌と扁平上皮癌, 右上葉に扁平上皮癌を呈する肺原発同時三重癌症例で低肺機能を示していた.術前呼吸機能は VC2.1l (63%), FEV 1.0 0.7l (40%), RV 4.6l (74%), VO2 max 408ml/min, VO2/VE 最大値20ml/l であった.左上葉切除後PSIVで運動時呼吸苦が改善せず, PSの改善を待って術後約12ヵ月に右肺に対して小範囲の放射線照射を行った.照射開始後, 早期より呼吸苦が増強し40Gy照射後呼吸不全のために死亡した.肺原発重複癌の報告は増加しているが症例は比較的高齢者であることが多く, ことに低肺機能例では切除限界の決定が難しい.本例はその切除限界を示唆する症例と考えられた.
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