2006年12月に投稿した和文論文「原子力発電施設の課題と考察(以下「課題と考察」と略)が,このほど,日本原子力学会賞論文賞という大変名誉ある賞を頂いたことに感謝いたします。
受賞に対し皆様から寄せられた言葉の中に,「数式を用いない論文賞は初めてではないか」というご指摘があったところ,確かに技術を法の枠組みから見る論文に対しては,原子力学会では論文賞は初めてであり,論文賞以外の賞でも受賞の例がない。原子力は,潜在的な危険性を内包する技術であり,法の枠組みなくしては社会で活用され得ない。我が国の原子力法規制は,技術に関して法の骨格に係る改正は約半世紀行われていないが,今後,種々の側面から原子力法制に関する論文が投稿されることにより,法制面での考察が深まり,在るべき法制の実現へ動き出すことを期待する。
論文「課題と考察」は,規制や訴訟の実務を通じて得た経験から,原子力法制について課題を提示し考察を加えた。本稿では,最初に同論文の紹介を行った後に,2007年3月に発足した東京大学の「原子力法制研究会」の「技術と法の構造分科会」の議論を踏まえ,原子力発電所を念頭に原子力の法規制の在るべき姿についての最新の検討について紹介する。
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