日本原子力学会誌ATOMOΣ
Online ISSN : 2433-7285
Print ISSN : 1882-2606
64 巻, 10 号
選択された号の論文の22件中1~22を表示しています
巻頭言
時論
Perspective
特集
  • 1.世界の民間核融合業界で今何が起きているのか
    武田 秀太郎, キーリー 竜太 アレックス, 馬奈木 俊介
    2022 年 64 巻 10 号 p. 553-556
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/10
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     近年注目される民間核融合業界であるが,一体誰が核融合実現を目指しているのだろうか?ベールに包まれる民間核融合業界を最新の統計データを用いて紹介する。世界には自社で核融合炉実現を目指す企業が25社存在し,資金調達額は5,000億円を超える。そのうち17社(68%)が過去10年間に設立され,また約3,000億円が2021年単年で投資されている事実は,核融合におけるスタートアップの勢いが増していることを指し示している。また核融合企業は発電(24社)から宇宙推進(11社),水素製造(7社)まで多様な市場をターゲットとし,その半数以上(17社)が核融合発電は2030年代に実用化されると考えている。これらの統計は,民間核融合企業が短期的かつ意欲的なマイルストーンを設定して技術開発と実証を繰り返すことで,環境意識の高い投資家への訴求に成功していることを示唆する。

  • 2.京都フュージョニアリング株式会社による核融合産業化
    小西 哲之
    2022 年 64 巻 10 号 p. 557-560
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/10
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     核融合研究開発は巨額の投資を要する基礎的科学研究として,世界的に長らく公費により実施されてきたが,近年民間努力による実用化研究が脚光を浴びている。ここでは,核融合工学の今後の展開においてスタートアップ企業が担う役割とその方法論について報告する。具体的には,京都大学発ベンチャーとして2019年10月に設立された京都フュージョニアリング(KF)社の事例をもとに,以後順調に進展している組織,資金,研究開発活動を説明し,世界の核融合開発の推進に対するユニークな貢献とともに,豊富な原子力研究の基盤を持つわが国の次世代の重要な産業分野としての意義を論ずる。

  • 3.高繰り返しレーザ核融合実証に向けた先端レーザ研究
    玉置 善紀
    2022 年 64 巻 10 号 p. 561-565
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/10
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     浜松ホトニクスでは,レーザ核融合反応の連続的な発生に資するレーザおよび周辺技術の開発,更にそれらの技術を産業用途に展開していく応用開発を行っている。近年,kW級にもなる半導体レーザ(LD)の高出力化に代表されるように周辺技術の発展は目覚ましく,従来の単発動作のフラッシュランプ励起レーザにも及ぶ1 kJ級のレーザ出力の繰り返し動作のLD励起固体レーザの実現見通しが得られるに至っている。このレーザ技術を活用することで,単発照射での核融合研究では困難であった大量のデータ取得からの統計的手法によるレーザ核融合研究が可能となる。本報告では,LD励起として世界最高出力となるセラミクスレーザの開発や応用開発についても報告する。

  • 4.レーザー核融合炉開発を加速するEX-Fusion社の取り組み
    松尾 一輝, 森 芳孝, 増田 晃一
    2022 年 64 巻 10 号 p. 566-568
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/10
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     化石燃料に依存しない,究極のエネルギーを実現するために日本のレーザー核融合研究は始まった。脱炭素社会を実現するという世界的な動きの中で,社会の発展と持続可能性を同時に実現するレーザー核融合商用炉の重要性は,今後さらに高まっていくと考えられる。当社は,日本を拠点とするレーザー核融合エネルギーのスタートアップとしての地位を確立することで,民間資本を集め,高い開発リスクを受け入れながら,実用化に必要な技術開発を加速していく。さらに,レーザー核融合商用炉実現を目指す過程で得られる最先端の光制御技術・知見等を活用し,エネルギー分野にとどまらず,さまざまな産業分野の技術開発に貢献していきたいと考えている。

  • 1.新材料開発とマテリアルズ・インフォマティクス
    黒﨑 健
    2022 年 64 巻 10 号 p. 569-571
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/10
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     近年注目を集めているマテリアルズ・インフォマティクス(Materials Informatics: MI)をごく簡単に概説するとともに,われわれのグループが進めているMIに関する研究事例を二つ紹介する。一つは,高熱伝導率ウラン化合物の網羅的探索,もう一つは,X線回折パターンからの弾性定数の高精度予測である。どちらも現在進行中の研究であるため,具体的な結果を示すというよりも,研究の背景や手法・進め方を中心に概説する。最後に,原子力分野におけるMIやDX(デジタルトランスフォーメーション)利用の現状と課題について,筆者の考えを記す。

  • 2.ARKADIA―次世代原子力プラント設計のイノベーションに向けて 原子炉構造設計最適化プロセスの実装
    森 健郎, 岡島 智史, 菊地 紀宏, 田中 正暁, 宮崎 真之
    2022 年 64 巻 10 号 p. 572-575
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/10
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     日本原子力研究開発機構(以下,原子力機構)では,民間で実施する多様な原子炉システムの概念検討等の支援を目的に,既往知見を最大限活用した設計最適化や安全評価を実現する「AI支援型革新炉ライフサイクル最適化手法(ARKADIA)」の整備を進めている。本報では,ARKADIAにおける設計最適化支援機能の一つとして実装を進めている,原子炉構造分野での最適化プロセスの整備状況について概説する。原子炉構造設計最適化では,最適化プロセスの確立に向けた具体化検討として,ナトリウム冷却高速炉の構造設計において重要な熱過渡荷重および地震荷重に着目した目的関数に対し,原子炉容器の板厚を設計変数とした最適化の例題を設定した。現実的な計算コストで設計最適化を実現するため,目的関数のパラメータとして設定した熱過渡荷重に対する破損確率の簡略化した評価手法と応力評価手法を用いた最適化プロセスの構築を進めている。

  • 3.超音波探傷画像のAIによる診断技術
    高橋 栞太
    2022 年 64 巻 10 号 p. 576-580
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/10
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     超音波探傷試験(UT)は,内部欠陥の検出に有効であり,インフラや発電所の点検など産業界で広く利用されている。UTデータから欠陥を評価する作業は,検査員の技量に大きく依存する。本研究では,AIの手法である畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いてフェーズドアレイ超音波探傷(PAUT)の画像から“欠陥あり”・“欠陥なし”の2クラスに分類するシステムについて紹介する。画像を小領域に切り出し,切り出した画像ごとに2クラスの分類を行い,1枚でも“欠陥あり”と分類された画像があれば,切り出す前の元画像も“欠陥あり”とする方法により,元画像の欠陥検出率(欠陥を含む画像に対して“欠陥あり”と分類する確率)は99.3%となった。

解説シリーズ 技術継承私塾
  • 構造健全性確保の取り組みの概要(その1)
    曽根田 直樹
    2022 年 64 巻 10 号 p. 581-585
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/10
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     カーボンニュートラルと電力の安定供給の両立が重要な時期を迎えるなか,安全性確保の大前提のもと,この両者に貢献できる原子力発電の利用が不可欠である。原子炉圧力容器は,原子燃料と冷却材を内包する最重要機器の1つであり,また基本的に取り替えの対象とはならない機器であるため,運転中の経年劣化を考慮に入れた構造健全性の確保が必要となる。特に,中性子の照射により靭性が低下する「中性子照射脆化」という材料劣化事象に対しては,その状況を的確に把握し,運転管理に反映することが求められる。本連載では4回にわたって中性子照射脆化にかかる原子炉圧力容器の構造健全性について解説する。本稿では,構造健全性確保のための取り組みの概要を紹介する。

新刊紹介
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視点〈社会〉を心理学から読み解く
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理事会だより
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