韓国は2005年11月に,中・低レベル放射性廃棄物処分施設の建設を受け入れるかどうかを問う住民投票を行い,朝鮮半島南東部にある慶州市を建設地に決めた。投票は,施設の誘致申請を行っていた4つの自治体で実施。慶州市では賛成率が89.5%と,4ヶ所の中では最も高い賛成率となった。政府は今回の候補地の選定に当たって,特別支援金の交付や韓国水力・原子力発電会社の本社移転などの新たな地域振興策を表明。応募してきた自治体のうち,住民投票で賛成率の最も高い地域を選定するとしていた。なお慶州市の議会や市民団体は,施設誘致によって市の飛躍をめざすことができるとして,施設誘致のために,市民向けの広報や教育活動を熱心に行ってきた。特に市長は市民に対し,この問題に関する説明会や懇談会を多数開催。誘致に伴う経済的効果や反対派の主張に対する反論などを根気よく提供し続けた。本稿では,同市が施設誘致に成功するまでの経緯を,イ・ボンウ氏に紹介していただいた。
化石燃料,原子力,再生可能エネルギーなど,いずれの1次エネルギーも資源量,供給量が有限なため,エネルギー需要の増大が必至の今世紀においては,これら入手可能なエネルギーを環境を保全しつつ効率的に使用していくことが必要である。そのための方法として,原子力を化石燃料と共に使用して,電気,水素,合成燃料などのエネルギー・キャリアへ効率よく転換していく協働的プロセスが有効と考える。本稿では,原子力が関わる協働的エネルギー転換プロセスを展望し,これらプロセスの資源節約,CO2排出削減などの効果について解説する。
原子炉水化学関連の研究専門委員会は1982年に「水化学」研究専門委員会として発足して以来,6期24年にわたって,国内の原子炉水化学に携わる技術者,研究者の集団の中核技術組織として活動を続けてきた。この間,水化学技術の発展,普及に努め,『原子炉水化学ハンドブック』の出版,水化学関連知見の委員会報告書としての出版のほか,水化学関連の国際会議の企画運営にあたってきた。現在の「水化学標準」研究専門委員会では,水化学に係わる民間規準の作成を目指し,「BWR水化学管理手引書」,「PWR一次系水化学管理手引書」,「PWR水化学分析標準法」を委員会報告としてまとめるとともに,今後,学会標準化などを目指している。本稿では,過去4年間の活動を振り返り,水化学の原子力プラントの安全性,信頼性への寄与を中心とした最新の主要成果をまとめるとともに,今後の水化学のあり方,求められるブレークスルーについて述べる。
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