日本原子力学会誌ATOMOΣ
Online ISSN : 2433-7285
Print ISSN : 1882-2606
61 巻, 7 号
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巻頭言
時論
特集
  • 荻野 晴之
    2019 年 61 巻 7 号 p. 518-521
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/02
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     ある物質の放射能濃度が極めて低く,一般的な再利用・再使用による線量が自然界の放射線レベルと比較して十分小さい場合には,人の健康に対するリスクが無視できると判断できる。この判断により,当該物質を放射性物質として扱う必要がないとして,放射線防護に係る規制の枠組みから外すという考え方を「クリアランス」という。クリアランスに用いる線量については,「自然界の放射線との関係」と「リスクとの関係」の両面から国際的な議論を経て,「年に10μSvのオーダーあるいはそれ以下」という判断規準がもたらされている。本稿では,国際放射線防護委員会(ICRP)の刊行物を中心に,クリアランスにおける線量規準の考え方をレビューする。

  • 石井 公也
    2019 年 61 巻 7 号 p. 522-524
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/02
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     わが国では,2005年にクリアランス制度を導入し,これまでに測定・評価方法は6件認可され,現在2件が審査中である。これまでに約5,000トンのクリアランス物が測定結果の確認を終えており,その一部についてテーブル,ベンチ,ブロック等への再利用を行い,事業者内での再利用実績を蓄積している。さらに,低レベル放射性廃棄物収納容器の内容器への適用に向けて,2015〜2017年度経済産業省の「管理型処分技術調査等事業」として試験研究が行われ,将来の再利用範囲拡大に向けた実績が蓄積された。

     一方,廃止措置実施中および準備中の実用発電用原子炉施設は13基となり,今後,それらの廃止措置作業が本格化していくため,クリアランス物が多量に発生してする。その中でクリアランス物の搬出先が確保されない場合には,発電所敷地内に蓄積されることになり,そういった状況は,廃止措置を円滑に進める上で支障をきたしかねない。クリアランス物の利用先拡大に当たっては,それぞれの段階でのクリアランス物の利用拡大が喫緊の課題となっている。

  • 橋本 周
    2019 年 61 巻 7 号 p. 525-528
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/02
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     管理区域で使用した物品について,法令に基づく管理基準への適合を確認する表面汚染測定の後に一般区域へ搬出することができる。この管理基準は1960年代から事実上同じ数値が使われている。この手順は,規制対象について一定の条件を満足することを確認したうえで管理対象から外す手法として運用されており,クリアランスの考え方にきわめて近いと考えられる。

     (一社)日本保健物理学会放射線防護標準化委員会では,「計画被ばく状況における汚染した物の搬出のためのガイドライン」を2016年に制定し,管理区域からの物の搬出に関する放射線防護上の考え方を整理した。そこでは,現行の物品搬出管理基準については,クリアランス規準の考え方と比較しても,見劣りのしない放射線防護レベルの管理基準であることが示された。

  • 服部 隆利
    2019 年 61 巻 7 号 p. 529-530
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/02
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     IAEA(国際原子力機関)は,IAEA GSR Part3(BSS:国際基本安全基準)に新しい概念として取込まれた「緊急時,現存および計画の3つの被ばく状況別の放射線防護」に対応して,日本のクリアランスレベルの引用元である安全指針RS-G-1.7「除外,規制免除およびクリアランスの概念の適用」の改訂を計画し,規制免除についてはDS499,クリアランスについてはDS500として,それぞれIAEAのRASSC(放射線安全基準委員会)およびWASSC(廃棄物安全基準委員会)の主管の下でドラフト作成作業を開始した。本稿では,RS-G-1.7のポイントと2018年2月中旬および6月初旬の2回にわたって開催されたDS500の作成のための専門家会合において議論となった論点について紹介する。

  • 島田 太郎, 三輪 一爾, 武田 聖司
    2019 年 61 巻 7 号 p. 531-534
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/02
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     福島第一原子力発電所(以下,1Fという)敷地内に保管されている表面線量率5μSv/h未満の汚染がれき類を資源化して敷地内に限定して再利用することが検討されている。1F敷地内のように放射線管理が実施されている現存被ばく状況において,汚染した資機材等の限定的な再利用の考え方などが示された例はない。そこで,適切な安全規制のために,1F敷地内での線量管理下の現存被ばく状況における再利用評価の考え方,1F敷地内での運用されている作業者および周辺公衆の安全確保策に応じためやす濃度算出の方法論を構築するとともに,1F敷地内での道路材およびコンクリート構造材に関して用途別の資源化物のめやす濃度を試算して,とりまとめた。本報ではこの評価の方法について解説するとともに,1F敷地内の限定的な再利用の評価の一例について紹介する。

解説
  • 再生可能エネルギー大量導入時の基幹系統への影響
    北内 義弘
    2019 年 61 巻 7 号 p. 535-539
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/02
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     電力系統の安定運用のためには,系統セキュリティの維持が重要である。本稿では,まず交流送電と発電機および系統セキュリティを維持するために必要な三つの要素(周波数,電圧,系統安定度)について概説し,大容量発電機の系統セキュリティへの貢献について述べる。さらに大容量電源脱落時の周波数低下および再生可能エネルギー発電大量導入時の電力系統の系統安定度に与える影響について,電力系統シミュレータを用いた試験結果について紹介する。

Column
解説シリーズ
  • 第5回 核融合エネルギーの実用化に向けた研究開発の進展(その1)
    竹永 秀信, 布谷 嘉彦, 中本 美緒, 平塚 淳一, 池田 亮介, 林 巧, 河村 繕範
    2019 年 61 巻 7 号 p. 543-548
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/02
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     量研における核融合エネルギーの実用化に向けた研究開発の進展について,ITER計画および幅広いアプローチ活動を中心にシリーズ第5回および第6回にて解説する。第5回では,発電実証を行う原型炉の研究開発戦略について述べた後,大型国際研究協力プロジェクトであるITER計画について,量研が製作を担当する超伝導コイル,中性粒子入射加熱装置および高周波加熱装置の開発状況とともに,ITERを用いて試験を行うテストブランケットモジュール試験計画を紹介する。

連載講座
報告
  • その2 原子力安全のための組織文化と倫理
    倫理委員会
    2019 年 61 巻 7 号 p. 554-557
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/02
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     日本原子力学会倫理委員会(以下,「倫理委員会」)では,東京電力福島第一原子力発電所事故を契機として,年会・大会での企画セッションや倫理研究会において,「災害に備えるために必要となる原子力関係者の倫理」と題して「組織文化」や「技術者・研究者倫理」に関わる議論を深めている。これらの場においては,会員や原子力関係者だけでなく,他学会や他産業等の方々の参加も得て,意見交換や交流を行っている。本稿では,近年のこれら活動の概要について紹介する。

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