原子力に限らず,安全目標の議論は理解され難く社会に定着しない。一方で,日々の安全確保活動は適切に行うべき,リスク管理が大切であり,定量的なリスク評価が必要であるという認識と共通理解は次第に醸成されつつある。安全目標は,“How safe is safe enough?”の問いに対する回答と言った観念的な意味だけでなく,リスクや日々の安全確保活動と直結していることを理解することが大切である。また,福島第一事故の教訓を踏まえれば,安全目標には生命や健康を守るということに加え,社会的リスクへの深慮が必要となる。第4回では,わが国の原子力施設が社会との前向きな関係の中で利用されていくために安全目標の国内外での議論を踏まえた上で,どうあるべきかを解説する。そして安全目標の階層構造の概念を用いてリスクとの関係,リスク情報を活用した安全確保活動への展開について考察する。