日本原子力学会誌ATOMOΣ
Online ISSN : 2433-7285
Print ISSN : 1882-2606
62 巻, 9 号
選択された号の論文の21件中1~21を表示しています
新会長あいさつ
巻頭言
時論
特集
  • 福島県の水稲栽培と農業用水を中心に
    申 文浩
    2020 年 62 巻 9 号 p. 486-489
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/10
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     東北地方太平洋沖地震に伴う東京電力福島第一原子力発電所の事故から,復旧や除染作業が進み,帰還困難区域を除く避難指示の解除とともに営農が再開されつつある。本稿では,農用地における農地除染,吸収抑制対策,放射性セシウムの動態解明など,震災後からこれまでの放射能汚染対策とその成果を紹介するとともに,震災復興,営農再開のために継続的に必要な取り組み,課題について報告する。

  • 食の安全を確保するために
    小山 良太
    2020 年 62 巻 9 号 p. 490-493
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/10
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     東日本大震災,東京電力福島第一原子力発電所事故から9年が経過した。福島県では福島県産米等に対し,「入口」の生産段階で安全性を担保し,流通経路にのる「出口」段階でさらに全量全袋検査を行い,安全と安心を担保するという2段階の仕組みとなっているが,その取り組みが一部に周知されておらず,事故直後のイメージのままの消費者が現在でも存在している。本稿では福島県における9年間の放射能汚染対策,流通風評対策について現状と課題を示す。

  • 復興政策の課題
    橘 清司
    2020 年 62 巻 9 号 p. 494-498
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/10
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     震災から9年余りが経った今なお,福島の復興・再生は約4万人が県内外で避難生活を継続する等まだ道半ばである。避難指示解除の時期の違いで復興の進度にも明確な差が生じており,震災10年以降,進度に応じて生じる新たな課題への的確な対応が必要である。イノベ構想では,国際教育研究拠点の具体化を始め,これまで整備したさまざまな拠点施設を有機的に連携させ,経済効果を県内全域で実感できるように引き上げていく必要がある。

解説
  • 分裂する原子核の変化する形を追って
    石塚 知香子, 千葉 敏
    2020 年 62 巻 9 号 p. 499-503
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/10
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     ここ十有余年,核分裂現象の理論研究は急速に進展し,十年前には期待できなかった核データ評価への応用も視野に入りつつある。重い原子核が中性子を捕獲すると励起エネルギーを得てアメーバのように形状変化し,ある時は細長くのびて自分自身のクーロン反発力の助けを借りて分裂に至る。そのとき原子核の形がたどる変化は極めて多様で,その変形経路の違いが核分裂生成核の収率の広がりや形の違いを生む。その結果,核分裂中性子の数や即発ガンマ線のエネルギーも決まってくる。本稿では筆者らの最新の研究結果を踏まえつつ,原子力の核心にある核分裂という過程について,原子核の“形”をキーワードにして解説する。

解説シリーズ
  • 第5回 高温ガス炉システムの実用化をめざして
    峯尾 英章, 西原 哲夫, 大橋 弘史, 後藤 実, 佐藤 博之, 竹上 弘彰
    2020 年 62 巻 9 号 p. 504-508
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/10
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     高温ガス炉は,ヘリウムガス冷却,黒鉛減速の熱中性子炉で,優れた固有の安全性を有しており,発電のみならず,水素製造などの多様な熱利用に用いることができる。このため,わが国のみならず,海外においても温室効果ガス排出量削減に有効な技術として期待されている。本稿では,ガスタービン発電や水素製造などの熱利用施設と高温ガス炉で構成される高温ガス炉システムの実用化に向け,日本原子力研究開発機構(以下,原子力機構)が取り組んでいる技術開発の最前線を紹介する。

Column
講演
サイエンスよみもの
連載講座
  • 第4回 安全目標の現状と今後の課題
    山口 彰, 成宮 祥介
    2020 年 62 巻 9 号 p. 522-526
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/10
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     原子力に限らず,安全目標の議論は理解され難く社会に定着しない。一方で,日々の安全確保活動は適切に行うべき,リスク管理が大切であり,定量的なリスク評価が必要であるという認識と共通理解は次第に醸成されつつある。安全目標は,“How safe is safe enough?”の問いに対する回答と言った観念的な意味だけでなく,リスクや日々の安全確保活動と直結していることを理解することが大切である。また,福島第一事故の教訓を踏まえれば,安全目標には生命や健康を守るということに加え,社会的リスクへの深慮が必要となる。第4回では,わが国の原子力施設が社会との前向きな関係の中で利用されていくために安全目標の国内外での議論を踏まえた上で,どうあるべきかを解説する。そして安全目標の階層構造の概念を用いてリスクとの関係,リスク情報を活用した安全確保活動への展開について考察する。

報告
  • 松井 亮太
    2020 年 62 巻 9 号 p. 527-531
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/10
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     事故や不祥事を起こした組織は社会から強く批判されるが,批判には逆機能があることも知られている。失敗した個人を批判しない免責の仕組みは,すでに航空業界や原子力業界などで取り入れられているものの,事故原因の複雑化に伴い,個人の免責だけでは不十分となる可能性がある。そこで本報では,個人だけでなく組織を免責するアプローチの必要性や留意事項などについて議論した。

  • IAEAの国内ネットワーク構築プロジェクト支援
    山下 清信, 鳥羽 晃夫, 中園 雅巳
    2020 年 62 巻 9 号 p. 532-534
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/10
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     IAEAは,パイロットプロジェクトとして,加盟国における原子力人材育成・知識管理 (HRKD) 国内ネットワ-クの構築を支援している。当該支援のもと,トルコおよびマレーシアはHRKD国内ネットワークを構築した。両国は,同ネットワークを活用し初等中等教育,高等教育および社会人の原子力人材育成をすすめている。日本の原子力人材育成ネットワークは,同活動を以前からIAEAに提案し,日本の経験を積極的に提供してきた。IAEAは,これらパイロット国のネットワーク構築経験を提供しIAEA加盟国の原子力人材育成の持続的発展を強化しようとしている。

理事会だより
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